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少年少女の戦極時代Ⅱ

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禁断の果実編
  第105話 “ビートライダーズ” ②



 舞と光実のデュオパートに入ったところで、光実の動きが――崩れた。

 当然だ。光実はダンスを離れて久しい。頭が付いて行っても、覚えている通りの動きができない体になっていた。

 光実が足を縺れさせて尻餅を突いた。

「ミッチ! ごめん、大丈夫?」
「は、い。ごめん、なさい。僕はだいじょう、ぶ」

 ――ごめんなさい。
 ――僕は大丈夫。

「ミッチ?」
「僕は、大丈夫――だって、僕の代わりに兄さんが、犠牲に、なってくれたから」

 フラッシュバックする。マスクを着けられて倒れた貴虎。光実を助けるためにボロボロになっていた貴虎。悪寒が全身を巡った。

「あ、ああ、ああああ!」
「ミッチ、ミッチ!?」

 敷いたレールを進ませようとする貴虎が疎ましかった。ビートライダーズを「クズ」と言った貴虎に怒った。人類選別にいつまでも悩む貴虎をふがいなく感じた。碧沙を人質に取られて傀儡とされた貴虎に幻滅した。

「光兄さん、おちついて…! 光兄さん!」

 疎ましくて、苛ついて、いっそいなければいいとさえ考えた兄。

 けれども、今のままでは本当にいなくなってしまう。生命エネルギーを吸い上げられて、光実のようにただの燃料として弱っていき、衰弱死してしまう。

「兄さん…! 貴虎兄さん! 僕が、僕が……あ、あ、ああー!!」

 光実は頭を抱えて泣いた。恥も外聞もなく涙を流した。

「わかってる! 光兄さんがのぞんでやったんじゃないって、わたし、わかってるから!」

 ヘキサが背中から光実を抱き締め、必死で光実を宥める言葉を言い続ける。だがなお光実は叫び続ける。まるでヘキサの声が――外界の音が欠片も届かないように。

 その時、別のぬくもりが、正面から光実を抱き包んだ。




 泣く光実を見下ろし、舞は呆然としていた。

(こんなふうになっちゃったの? あのミッチが、貴虎さんのことで)

 舞は思い切って自分も光実を胸に抱き込んだ。

 ぴたり。光実の声が、動きが、止んだ。

「ま、いさ、ん」
「よかった。あたしのことは分かってくれるんだね」

 袖が引かれる。光実が舞に縋っている。

「あったかい……」
「うん」
「僕だけこんなあったかいとこにいて。兄さんはもっと辛いとこにいるのに」
「でも、ミッチも辛いでしょ?」

 ずる。肩に置かれていた光実の額が滑り落ち、ちょうど鎖骨の下で止まった。

「ごめ、なさっ……ごめんなさい、兄さん…! 兄さ…ぼく、僕の、せいで…っ、うあ、あああ…!」

 舞は光実の頭を抱え込んだ。光実が泣き止むまで、ずっと。 
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