普通だった少年の憑依&転移転生物語
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ゼロ魔編
039 〝赤〟と〝白〟って普通は目出度いはず… その2
前書き
4連続投稿です。
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SIDE 平賀 才人
ドライグが因縁の闘いの第二幕を下ろして、早い事十数秒。戦線(?)は膠着の様相を見せていた。俺の戦法は基本的に〝後の先〟を取るやり方なので、相手にも待たれると少しやり辛くなる。ヴァーリも俺がテクニックタイプだと悟ったのか、〝待ち〟の体勢に入った。
(仕方ないか)
俺はドライグと云う強大なドラゴンを宿してはいるが、種族としては人間に属している。〝魔〟には属していないので、魔力をそのまま攻性エネルギーとして使う事は出来ない。俺が呪文や魔術を使用する際に使っているのは〝魔法力〟や〝精神力〟と云われるエネルギーだ。
その〝魔法力〟を〝魔力〟に転化する事も出来なくは無いが、その場合はどうしても無駄が出るので、今の場合に使うのはそれなりに下策と云えるだろう。
(……ならば、ドライグのオーラを借りるまでだ)
左の掌からドライグのオーラをほんの少しだけ出し、それを5つに分裂させてそれらを球状に加工する。……勿論これだけでは威力は足りなく、牽制にもならないのを承知している。
『Boost!』
『Boost!』
ヴァーリが倍加をむざむざと待っていたのは、ひとえに俺が目線や動作で牽制していただけで、本来ならヴァーリが魔力弾等で牽制してきたはずだ。
「こんなモンか。……往け“ドラゴン・シューター”」
倍加したオーラ弾を放つ。高々2回の倍加では牽制程度なので、“ドラゴン・シューター”には布石になって貰った。
「くっ!」
ヴァーリは魔力弾による弾幕を展開し、“ドラゴン・シューター”を相殺した。……ただ、ヴァーリが展開した魔力弾の数が多すぎて土埃が舞う。当然俺はこの機会を逃がさずに、にデルフリンガーで斬り込む。
「そりゃ、悪手だったな」
「っ!?」
仙術で気配を薄くして、“剃”でヴァーリの懐に入り込む。デルフリンガーを右薙ぎ気味に振るうがいつもの、〝独特〟な感触は少ししかなかった。……ヴァーリの──文字通り、超人的な反射神経で避けられた様だ。
左脇を抑えているヴァーリを見るあたり、完璧に避けられた訳では無さそうだが。……それは、ヴァーリを確実に〝斬る〟つもりで剣を振るった俺からしたら、慰み程度にしかならない。
「くっ…! ……ははっ、ははははははははははは!!」
「っ!?」
ヴァーリは直ぐさま魔力による治癒で傷を治すと、〝イイ笑顔〟で笑いだした。ヴァーリの予想のど真ん中を突き抜けたリアクションにびっくりしてしまう。
「……はは…ふぅ。いやはや、どうやら俺達は井の中の蛙だったようだぞ。アルビオン」
<だな。〝鎧〟を纏っていないとは云え、ああ易々とヴァーリを剣で捉える事が出来る者が居るとは思わなかったぞ。……ドライグよどうやら今代は恵まれたらしいな。……いや、ところどころにどこかで見た剣筋が見える──気もする>
<それは当たり前だろう。なぜなら、相棒は歴代所有者達の経験値を〝喰らった〟のだからな>
ドライグはアルビオンへの挑発する。恐らくだが、ドライグは精一杯のドヤ顔をしているだろうと窺える。
(ドライグェ…。いや、より正確には経験値を〝奪った〟だけなんだが)
「……どうやら君は俺より先に行っているらしいな」
「アー、ソウデスネ」
ドライグの言葉を聞いて、より一層笑みを深めるヴァーリ。勝手に情報を流すドライグと戦闘狂のケを見せるヴァーリに、俺はカタコトになる。
「ところで平賀 才人、君は〝至って〟いるかい?」
「……一応は〝至って〟いる」
「じゃあ次は〝禁手〟比べといこうじゃないか。……〝禁手化(バランス・ブレイク)〟」
『Vanishing Dragon Balance Breaker!!』
「オーケー。……〝禁手化(バランス・ブレイク)〟」
『Welsh Dragon Balance Breaker!!』
ヴァーリが白銀の鎧──“白龍皇の鎧(ディバイン・ディバイディング・スケイルメイル)”を、俺が紅の外套──“赤龍帝の道化の外套(ブーステッド・ギア・クラウンコート)”を自らの身に纏う。
「もしや──いや、別段驚く事でも無いか。……亜種の〝禁手(バランス・ブレイカー)〟とはね。君は俺を楽しませるビックリ箱か何かかい?」
「出来る事を──手札を増やして来ただけだよ…っと!」
――ガギィイ!
「……一瞬で地面を何度も蹴って、爆発的なスピードで移動しているな? ……そうか、これはさっきの移動術か?」
“剃”でヴァーリの懐に入り込み、デルフリンガーを振るおうとするが、ヴァーリには隙も何も無かったし強化もしてなかったので普通に防がれる。ついでとばかりに“剃”の高速移動の原理すらも見抜かれる。
(天才めぇ…)
俺? 俺はただの〝特典〟だ。アザゼルにして〝天才〟と言わせしめたヴァーリと一緒にしてはいけない。……俺はヴァーリと違って、俺は〝特典〟と、その応用に過ぎない。
閑話休題。
(〝こっち〟が本命だ!)
とは云っても、ただ何も無しに斬り込む訳は無く、勿論の事意味はある。……先程“ドラゴン・シューター”を囮にした様に、今度は俺自身が囮になった。
「ドライグ! 〝帯〟で奴を捕らえろ!」
<応よっ!>
“赤龍帝の道化の外套(ブーステッド・ギア・クラウンコート)”の能力。……ドライグの意思のみで〝伸縮自在〟、〝操作自由〟の──さながら、【D.Gray―man】の“神ノ道化(クラウン・クラウン)”の様な能力で、ヴァーリを留めている内にその〝帯〟にてヴァーリをがんじ絡めにするようにドライグへと頼む。
「っ!? そうは行かない!」
「それはこっちのセリフだ! 100万V…“放電”!」
「ぐっ! ががががががぁぁぁぁぁぁっ!?」
迫り来る〝帯〟に気付いたヴァーリは離れようとするが、俺はヴァーリに100万Vの電流を流し動きを止める。100万ボルトの電流に耐えられのは流石の一言だが、動きを止めてしまったヴァーリに〝帯〟が巻き付いていく。「取り敢えず一発喰らっておけ」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
16回──今の俺に出来る最大数に力を倍加させる。
「っ!? それは痛そうだ。なので御免被る! アルビオン!」
<了解したっ!>
『Half Dimension!!』
倍加した力──主に氣をデルフリンガーに纏わせ〝武装色〟で強化し、いざヴァーリをぶった斬ろうと云う時、ヴァーリは絡み付いている〝帯〟の〝太さ〟を半分にして、持ち前の魔力にモノをいわせて〝帯〟を引きちぎる。晴れて自由になったヴァーリは俺から距離を取る。
「……しくったか…」
〝次は当てる〟とかは、何となくフラグになりそうなので言わないでおく。
「……アルビオン、平賀 才人に勝つには〝覇龍(ジャガーノート・ドライブ)〟しかないと思わないか?」
<……今のヴァーリのコンディションでは3分も保たないぞ? ……それでいいなら構わないが>
「構わないよ。どうしても奴の──平賀 才人の〝本当の本気〟を引き出したくなった」
「おいおい、〝覇龍(ジャガーノート・ドライブ)〟って、ここら一帯を更地にするつもりかよ」
「……そう言うだろうと思っていたよ。それについてはここら一体の人間は追い払っているから問題ないよ」
「さいですか」
(後でウェールズに弁償しないとな)
ヴァーリの用意周到さに息を巻きたくなるが、今は気にしない事にした。
「ドライグ、〝覇龍(ジャガーノート・ドライブ)〟を使ってくるなら、こっちも〝覇龍(ジャガーノート・ドライブ)〟を使うしかない」
<……そうだな。そうするしかないだろうな。〝魔〟か〝雷〟…どちらを使う?>
「ほう? 〝覇龍(ジャガーノート・ドライブ)〟すらも使えるか?」
「まぁな。……とは云ってもどうにも弄くり回し過ぎて形態は2つも有るんだが」
それは“アギトの証”によって事実上無尽蔵の〝魔法力(MP)〟にモノをいわせた〝魔〟と〝雷の力〟を代償とした〝雷〟の2パターンがある。……試そうとも思わないが、両方合わせるとドライグ曰く反発こそしないものの消し飛ぶらしい。色々と。
「それが先程ウェルシュ・ドラゴンが言っていた、〝魔〟と〝雷〟やらの事かい? 君がもしどちらを使うか迷っているなら、俺が何となく気になった〝雷〟の方にしてくれ」
「いいのか?」
「ああ」
……ヴァーリは運が良いのか──若しくは悪いのか、完璧に調整が終わっていない〝雷〟の方を自ら選ぶ。思わずヴァーリへと聞き返すが構わないらしい。
「さぁいくよ? ……我、目覚めるは──」
<消し飛ぶよっ!><消し飛ぶねっ!>
「覇の理に全てを奪われし、二天龍なり」
<夢が終わるっ!><幻が始まるっ!>
「無限を妬み、夢幻を想う」
<全部だっ!><そう、全てを捧げろっ!>
「我、白き龍の覇道を極め」
「「「「「「「「「「汝を無垢の極限へと誘おうッ!」」」」」」」」」」
『Juggernaut Drive!!!!!!』
詠唱と共に姿をかえたヴァーリ。最早ヴァーリの姿は人の〝それ〟にカタチを留めていなく、敢えて形容するなら小型なドラゴンだった。
SIDE END
後書き
明日もう一話投稿します。
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