美しき異形達
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第二十一話 菖蒲の友人その七
「幸せに育って生きてきてるわね」
「本当にね」
「孤児ってそれだけで辛いと思うけれど」
菫もだ、よく言われている常識から話す。
「私達の場合は」
「そうですね、本当に」
桜もだった、微笑んで言う。
「幸せに過ごさせてもらっています」
「確かに孤児っていうだけで」
菖蒲は再び言った。
「辛い状況にあるけれど」
「その辛い筈の状況でもな」
「ええ、私達の場合は幸せな状況にあるわね」
薊に再び言ったのだった。
「暖かい家庭の中にいて」
「だよな。しかもな」
「こうして皆がいて」
「開陽姉妹もいるしな」
薊は二人のことにも言及した。
「あの娘達もな」
「二人で住んでいて」
「幸せに過ごしてるみたいだよ」
「そうね、クラスにお友達もいて」
「恵まれてるよ。恵まれ過ぎてて」
薊はこれまで笑顔だった、だが。
その笑顔をだ、ここで締まった顔にさせてそしてこんなことを言った。
「失いたくないな」
「ええ、それはね」
「何があっても」
「そのことは心から思うわ」
本当に、というのだ。
「幸せだからこそ」
「この幸せ失いたくないな」
「何があってもね」
そう思っているというのだ。
「そう思うわ」
「だよな、要するにあたし達の場合はな」
「生き残ることね」
「怪人連中と戦ってな」
「そういうことね。だから」
「怪人の出処を突き止めてな」
そのうえでだった、このことについては。
「そこを潰さないとな」
「怪人達を倒すだけでは」
「ああ、基がそのままだからな」
「何にもならないわ」
「まずは巣から」
薊は怪人を虫に例えて言った。
「それをどうにかしてからか」
「そういうことになるわね」
「だよな、そこは」
ここで薊は一同を見回した、しかし今は智和がいない。薊は彼がいないことについて菖蒲に対して問うた。
「先輩は生徒会か」
「ええ、そうよ」
「生徒会長も大変だな」
「それに化学部の部長でもあられるから」
「化学部ってどんな活動してるんだよ」
「色々な実験や研究をする部よ」
それが化学部だというのだ。
「理系のね」
「授業の化学みたいなのをか」
「そう、やる部活なのよ」
「じゃあマグネシウムとかを出して」
具体的な例をだ、薊は話に出した。
「水に入れたりとかか」
「石鹸を作ったりしてね」
「じゃあオリーブオイルとかで」
また具体的な例を出す薊だった。
「石鹸作ってか」
「使ったりしてね」
「それも中々面白そうだな」
「そうね。先輩らしい部活ね」
「だよな、先輩理系だしな」
文系の方も出来るが智和の本領は理系だ、そちらで学年一の優等生になっているのだ。
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