| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

平成仮面ライダー戦記

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 次ページ > 目次
 

プロローグ

かつて、今の世界とは別の平行世界で、仮面ライダーディケイド率いる仮面ライダー軍と…世界征服を夢想し怪人軍団を送り込んでいた首領・シャドームーン率いる大ショッカーが、世界の存亡をかけて激突した『ライダー大戦』が起こっていた。
一進一退の攻防が続き、戦いは徐々に泥沼化の様相を呈していき互いに戦力が大量に消耗していく中…リーダーのディケイドは、最終手段としてレジェンドライダーを異世界から召喚し、大ショッカーに向かって進軍する作戦を開始、ディケイド自ら先頭に立ち軍の指揮を執り進軍していったのである。
その結果、大ショッカーは首領・シャドームーンを失い壊滅、仮面ライダー軍の勝利でライダー大戦は幕を降ろした。
それから十数年…世界中の人々はライダー大戦の記憶を忘れまいとライダーシステムを独自に開発・発展させていき、やがて民間企業でも採用され広がりを見せていった。

ここは、そんなとある平行世界の地球。
この世界では仮面ライダーの開発や変身アイテムの製造が盛んであり、あらゆる場面でライダーが活躍する…ある意味個性的な世界である。
当然ながら軍事目的はもちろん、災害救助から犯人逮捕まで幅広く活躍しており、もはや生活の一部として欠かせない『職業』にまで進化していたのだ。
さて、そんな世界の日本にある小規模な研究施設。
大ショッカーを崇拝し、その理想を実現するため世界征服を企み地球を我が物にせんとする組織…財団Xが研究目的で建てたこの施設で、ある日の午前0時…異変が起こった。
ドゥンッ、ドカアァァァァァン!!
ウゥゥゥゥゥーッ!!
突如として施設の一角から大爆発が巻き起こり、一人の白衣を着けた若い科学者が脱走した。
「何だ、何があった!?」
「大変です、科学者が施設の壁を破壊して脱走しました!」
「何だと!!…おい、大至急警備員を呼んで取り押さえろ、この事が組織のトップに知れたら何と言われるかわからんぞ!!」
けたたましく鳴り響くサイレンの音と共に警備員達がガヤガヤと動き出し、サーチライトが漆黒の夜空を照らす。
逃げ出した科学者は、やや細いマスクに肩まであるブロンドの髪を持ち、さらに細身ながらも筋力のついた体型をしているため、モデルとしてなら食べていけそうな感じを受ける。
そんな彼は小脇にやや小型の銀色に輝くアタッシュケースを抱えて全力で走っており、狭い通路をゼエゼエと息も荒く走り出すものの…。
「いたぞー!」
「追え、逃がすなぁ!」
「ちいっ!!」
やっと広い通路に出たところで屋上のサーチライトに捉えられ、科学者は全速力で警備員をまこうとしたが、ようやく出入り口を見つけダッシュをかけて走り出したその時。
「ここが出口か…ん?」
「止まれ止まれ止まれぇっ!!」
警備員達の乗るジープが彼を追い抜いて行く手をはばみ、数人の警備員がジープから降りマシンガンを構える。
「そこを動くな!動くと撃つぞ!」
「…くっ!」
「いたぞ、待てえぇぇぇぇぇっ!」
後方からもさらに警備員達が集まりサンドイッチ状態になりながらも、若い科学者は冷静に状況を読み脱出の機会をうかがう。
「貴様、ここから逃げられると思うな。我ら財団Xに忠誠を誓った者は、死ぬまで研究を続けなければならぬのだ。大人しく施設に戻れ!」
「ほぅ…。」
警備員のリーダーが科学者に言葉を投げかけるが、科学者は軽くニヤリと笑うや懐から赤と銀で彩られたバックルを取り出し腰に装着した。そのバックルにはL字型に形作られた細長いスロットルが付いており、その左横には何やら小型チップが入りそうなスロットルが接続されている。
彼が手にしているドライバー…ロストドライバー改を見て、警備員達の間にも緊張が走る。
飽くまで我々と戦う気か…警備員達は額から汗を流し、マシンガンを構えつつ科学者の出方をうかがい、科学者はさらにポケットからUSBメモリに似たアイテム『ガイアメモリ』を取り出し、下にあるスイッチを押しガイアウィスパーを鳴らす。
ちなみに、ガイアメモリは深緑色のボディカラーに白抜きのAが描かれており、字自体も何の飾り気のないシンプルな物だ。
『アーガス!』
「ならば…強行突破あるのみ!!」
そして科学者がガイアメモリをバックルの細長いスロットルに入れると、おもむろにスロットルを右に倒しバックルを起動させた。
「…変身!」
『アーガス!!』
するとどうだろう、科学者の体から突風か巻き起こるや緑色の粒子が次々と科学者の身を包み込み、あたかも竜巻の様に荒ぶっているではないか。
警備員達は吹き飛ばされまいと何とかこらえ、やがて突風が収まり再び彼の方を見ると…科学者は屈強な戦士へと姿を変え、警備員の目前に現れていた。
深緑を基調としたカラーリングに金のガントレットとメカニカルかつ軽量な同色の
胸部装甲に鷲をモチーフとしたヘルメット。さらに両足に軽めの装甲が施された赤のブーツ、そして首に巻かれた白いマフラー。
戦士の名は…仮面ライダーアーガス。
財団Xが極秘裏に開発した、拠点制圧用プロトタイプライダーである。
「さぁ、道を開けてもらおうか!私に倒される前に、な。」
「くっ、しゃらくさい!全員かかれ、絶対に奴を逃がすな!」
警備員達も懐から骨格を象った不気味なガイアメモリを取り出すと、首にあるコネクターに挿入し怪人に変身した。怪人は、黒のスーツ姿に人間の肋骨をモチーフとしたマスクを着けており、不気味な事この上ない姿をしている。
これこそ、財団Xが己の野望を達成させるために生み出した欲望の怪人…ドーパントと呼ばれる者であり、警備員が変身したのはマスカレイド・ドーパント(以下、マスカレイドD)という下級の戦士である。
「なるほどな、それが財団Xの答えって訳か。ならば、もう容赦なくお前達をブチのめしても文句は言えないな。いくぞ!!」
アーガスはまず前方のマスカレイドDの大群に向けて走り出すや、彼らに向けて軽くジャンプし空中からパンチを繰り出してマスカレイドDの1体を殴り飛ばし、着地と同時にミドルキックで近くのマスカレイドDを蹴りつけ軽く吹き飛ばした。
残ったマスカレイドDもマシンガンを乱射して応戦するが、小刻みに右へ左へと交わされてしまいアーガスの動体視力と運動神経の良さを見せつけられた。
「ちいっ、マシンガンを全てかわし切るとは…!」
「くそっ、我々をなめるな!」
「かかれ、かかれ!何としてでも奴を取り押さえるんだ!!」
さらにナイフを手に襲いかかるマスカレイドD数人に対し、右足を軸に回転し左足かかとからのショートジャンプスピンキックをマスカレイドDに決める。
オーラをまとったキックは鮮やかに命中し、マスカレイドDを大地に叩きつけ強引に道を開けさせた。
「はあっ!!」
「「「ぐおあぁぁぁぁ!!」」」
マスカレイドDは元の警備員に戻り、ガイアメモリが首から空中に排出されクルクルと回転しながら宙を舞い、パリーンと砕け散って破片がばらまかれた。
メモリブレイク…それはドーパントが戦いに破れた時に起こる、敗北の証。
「さて、これ以上無駄な戦いはしたくない。早く道を開けるんだ!さもなくば、彼らと同じ運命をたどる事になるぞ。」
「くっ…!」
アーガスは背後にいる残ったマスカレイドDに忠告し、マスカレイドDの一団は一体どうしたらいいのか迷っていた。
もしここでアーガスを逃がしてしまえば、彼らとて明日はない。処刑されるか、職を失い路頭に迷うか…二つに一つしかないからだ。
となれば、やはり答えはこれしか残されていないだろう。
「何を言うか、我らは財団Xの一員だ。そう簡単に道を開けると思っていたのか!?」
「やはりな…簡単に見逃してはくれないと思っていたが、そこまで徹底して私の邪魔をするのなら、それ相応の覚悟はできているだろうな?」
「当然だ、いくぞ!!」
「「「おおぉぉぉぉぉーっ!!」」」
腹を括ったマスカレイドD達の一団がアーガスに殺到し、アーガスもやれやれ…といった感じで右腰に取りつけてあった小さなメモリチップの一つを取り外し、ドライバーの右横にある専用スロットにセットした。
このチップはミッションメモリと呼ばれており、アーガスの戦闘補助はもちろんの事、各種メモリを変えれば状況に応じた能力を使う事もできる便利なツールである。
『キック・イグニッション!!』
「さぁ、パーティーは終わりだ!!」
さて、今しがたドライバーにセットしたミッションメモリにはブーツが描かれてあり、アーガスは深く腰を落としフゥーと息を吐くと、目の前にいるマスカレイドDの一団に目をやり空中高くジャンプした。
そしてアーガスは、空中で右足を前に出し言わゆるライダーキックの体制を取り、炎をまとったキックをマスカレイドDの一団目がけて放った。
これこそ、アーガス最大の必殺技…キックメモリを使って放たれるライダーキック『スカイスクレイパー』だ!
「これで…どうだ!!」
「「「うぅおおぉぉぉぉぉっ!!」」」
スカイスクレイパーはマスカレイドD全てをなぎ払い、マスカレイドDも空中に吹き飛ばされ次々とメモリブレイクを起こし、元の警備員に戻りながら地面に落下してゆく。
大地に着地し大きく息をして出入り口を見つめたアーガスは、足元にあるアタッシュケースを拾うと出入り口から悠々と出ていった。

だが、彼は気がついていなかった。
研究所の屋上で今の戦いを見ていた三人の黒い影がいた事に。
一人は触角を生やしたバッタ風の怪人、もう一人はフードを被った魔法使い風の女性、さらにもう一人はライオンの頭をしたスーツ姿の獣人風の男である。
『アーガス…まだ未完成だとばかり思っていたが、もう完成していたのか。』
『いや、まだ完成した訳ではない。あれでもパワー不足で未完成のままだ。』
『あれでまだ未完成なのですか!?それにしても、すごい戦闘力ですね。』
『確かに、な。しかし、あの男がアーガスを少しずつ強化して開発を進めれば、やつは我々にとって驚異になりかねない…。何としてでもやつを倒さなくては。』
獣人風の男がアーガスの完成に驚き、バッタ風の怪人が冷静に意見を述べ、魔法使い風の女性はアーガスの戦闘力に驚きの声をもらす。
しかし、バッタ風の怪人はアーガスの強さに何かを感じ、拳を握りしめ彼を倒す決意を固めたと同時に、次に現れた時のアーガスの強さにも胸を踊らせていた。
(我々財団Xに刃向かう者は死あるのみ…だがしかし、貴様はまだまだ強くなる。今後が楽しみだ。)
バッタ風の怪人は右腕に内蔵されていたアームブレードを引き出し、満月の空に天高く突き上げアーガスの逃げた方向に向かって叫ぶ。
『アーガス…貴様の首を取るのは、この私だ!!』 



男の名はシャイアン・ブルーローズ。
後にライダー達の力となる、財団Xに立ち向かいし科学者である。


 
< 前ページ 次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧