図書館ではじまって
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第一章
第一章
図書館ではじまって
図書館に来たのは嫌々だった。
脇田嶺浩は茶色がかった黒髪の持ち主だ。アーモンド形の二重の目で眉は少し薄い一文字が少し斜め上になっている。
厚めの唇は引き締まりやや横に広い。細めの頬で花の形もいい。背は一七五程で空手をやっているだけありかなり引き締まっている。
その彼が何故この図書館にいるかというとだ。宿題の為だ。
大学の講義のレポートを今から書かないといけないのだ。それで資料を探しに来ているのである。
見渡す限り本棚が並んでいて席もある。中は暖房が効いていて快適だ。しかし彼の顔は今一つ晴れず憮然としたものであった。そしてこう呟いた。
「仕方ないな」
いきなり不平不満からだった。
「学校の宿題だしな」
また不平不満の言葉だった。
「しかし哲学か」
講義はそれなのだった。
「それでショーペハウアーか。誰だよそれ」
いぶかしむ顔でまた言うのだった。彼は哲学には疎い。彼は法学部にいる。何故哲学の講義を取ったかは理由があった。
「簡単に単位が取れるけれどな」
それでもだというのだ。そしてだった。
とりあえず探した。だが全然わからない。そのショーペンハウアーという人間の作品が何処にあるのか全くわからなかったのだ。
暫く探したが見つからずだ。彼はここで考えを変えた。
「そうだな、ここはな」
カウンターに行くことにした。するとそこにはだ。
涼しげな目でだ。一見するとボブの女の人がいた。
髪は一見すると確かにボブだ。だが後ろの一条の髪がかなり長い。それが腰のところまである。涼しげな大きい目に小さな唇を持ち鼻は高い。そして膝までの黒いタイトスカートに同じ色のベストとネクタイ、白いブラウスという格好だ。ストッキングも黒である。
胸がかなり大きくウエストは細い。恐ろしいまでの見事なスタイルだ。
その女の人にだ。彼は尋ねた。
「あの」
「何か」
クールで落ち着いた大人の女の声だった。
「何か用か」
「ショーペンハウアーの本は」
その探している本をそのまま尋ねたのだった。
「何処なんでしょうか」
「ショーペンハウアーか」
「はい、ありますよね」
「ないと言えば嘘になる」
その女の人はこう答えた。
「それはだ」
「あるんですか」
「ある。それを借りたいのだな」
「はい、借ります」
また話す嶺浩だった。
「ですからそれは」
「わかった。それではだ」
その女の人が立ち上がった。背は意外と低かった。一六〇程だ。その抜群のスタイルからは少し違ってだ。そんなに高くはなかった。
その彼女がだ。話すのだった。
「こちらだ」
「こっちですか」
「ショーペンハウアーは哲学者だ」
その女の人が話す。
「ドイツの有名な哲学者だ」
「ドイツのですか」
「そうだ、厭世哲学といってな」
「厭世哲学?」
「要するにこの世を疎ましいという考えだ」
その哲学の本棚に彼を案内しながら話す彼女だった。
「まああまり明るい考えではないな」
「この世が疎ましいって考えるんならそうですね」
「そうだ。ひょっとして君は」
前を歩いていた彼女がだ。嶺浩の方を振り向いてきたのだ。
「この世が嫌いなのか」
「いえ、別に」
それは否定する彼だった。
「俺、別にそこまで暗くないですから」
「しかしショーペンハウアーを読むとなるとだ」
蛍光灯で照らされた白い天井と木の黄色い床の間の世界で話す。
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