【ネタ】 戦記風伝説のプリンセスバトル (伝説のオウガバトル)
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19 雪原 その二
ガルビア半島攻略戦は、貿易都市グレエングスベリと自由都市エルテルスンドの間にある川に沿ってその火蓋は切られた。
私の本隊があえて私を先頭に見せ付けるようにグレエングスベリに入城。
『姫様がグレエングスベリに入った』という噂はコリ達ニンジャに広めさせている。
その結果、入れ食いに近い帝国軍集結ぶりにこっちが苦笑するぐらい。
「なんとしても姫を捕まえろ!
殺してもかまわん!恩賞は思いのままぞ!!!」
川向こうからこちらまで聞こえる煽りに城壁の上から見下ろす私もため息をつくしかない。
「帝国軍の兵士に問おう!
我が身柄に賞金がかかっているというが、それはハイランドの姫君たるラウニィー殿の事ではないか?
だとしたら、違うぞ。
我が名はエリーというのだから」
「やかましい!
戦場にそんなドレス姿で出向いて軍を指揮する姫が二人もいてたまるか!!!」
うわ。
帝国軍のやじに言い返せない。
というか、どうして味方も頷いてやがるのよ。
そんな微笑ましい一コマの後、戦いが始まった。
私の本隊とオデット・スザンナ・エリナ・デュラン隊からなる2500がグレエングスベリに篭城し、帝国軍数千がそれを落としにかかるという戦いは、双方の誤算が即座に発覚する。
「あのドラゴン邪魔!」
「橋に居座られて排除できん!」
「ドラゴンテイマーにドラゴンを連れて来させろ!
ドラゴンにはドラゴンを当たらせる!!」
凍土と化している大地を流れる川の中に飛び込む馬鹿はそうはいない。
たとえ渡れても戦闘なんてできる訳も無く橋の確保が大事になるのだが、でんとぽちが居座っているものだから動こうにも動けない。
で、こちら側の誤算なのだが……
「バルタンがまたやってきた!
アーチャー隊はどこにいるのよ!!」
「ワイアームとグリフォンが敵兵を上陸させてる!」
「ニンジャが街の中に入った!
排除して!!」
「ぽちにヒールかけるわよ!
クレリック隊の援護をして!!」
唯一の対空ユニットであるヴェルディナ隊をカオスゲート確保に置いたのが大失敗。
その結果制空権は帝国軍が握り、上空から翻弄される羽目に。
しかも、ボスがバルタンのアーレスに変わったものだから、ニンジャやホークマンなどの運用に長けているので背後の混乱を積極的に仕掛けてくる。
まだ、帝国軍の連中が烏合の衆でこちらが都市に篭城しているからなんとかなっているが、なめたらいけないと冷や汗を流しながらひっそりと反省。
「ぽちを下げて!
横から上陸されたら橋の確保は無理よ!
街中のニンジャの排除に全力を注いで!」
私の懸命の指揮でも状況は悪化する。
まぁ、元の兵数に差があるのだからある意味当然か。
「橋向こうにストーンゴーレムとフィボルグの姿を数体確認!!」
「プラチナドラゴン二体確認!
コールドブレスを吐いて兵士を凍らせています!」
その冷気がこっちに届いているから良く分かる。
手を叩いてドレスについた氷を落とす。
だが、橋を確保した帝国軍がグレエングスベリに攻め込んだ割には勢いが落ちている。
理由は簡単。
帝国軍のクレリック・プリースト層のサボタージュである。
ロシュフォル教会を敵に回すというデメリットはここでも容赦なくボディーブローのように効いているのだった。
戦っている最中にこちら側に逃亡したクレリックの情報だと、脅されて従軍したらしく回復はニンジャのマーシーレインが中心になっているとか。
烏合の衆のデメリットがここで炸裂する。
制空権を取っておりグリフォン等の飛行ユニットもあるのだから、負傷兵や疲労兵はエルテルスンドにまで下げてしまえばよかったのだ。
だが、所詮悪党の集合体でしかないからアーレスは彼らを使い捨ての駒にしか見ていない。
こっちが、都市内で戦い負傷者をクレリックやプリーストで治癒し、いざとなったら私がリザレクションまで使って兵達を支え続けたのに対して、帝国軍はその屍の山を郊外に晒し続けている。
消耗している帝国軍は私という誘蛾灯に誘われているのに気づかず、いや、気づいてもそれを食い破れると思って更に屍を増やしてゆく。
だから、ほら、帝国軍最後の希望が閉じる。
「カールスタートより敵伏兵!
数はおよそ1000!!
こっちに向かってきます!!!」
「数はこっちが多いんだ!
防がせればいいだろうが!!」
「ですが、グレエングスベリ攻城の為に兵のほとんどが橋を渡って……」
橋の手前には、貿易都市カールスタードに向かう道がある。
その為、防衛としてカゲイエ・ミツイエ隊の1000を置いていたのだった。
こちらの根拠地であるキルケネスを直撃するには、カールスタードの哨戒線が邪魔になるので、キルケネスに兵を置かなくてすむというメリットもある。
まぁ、言いたくない裏事情だが、カゲイエ・ミツイエ隊が裏切った時に備えて本拠を守らせたくなかったというのもあったり。
ヴェルディナ隊がカオスゲート確保という理由で一番後ろにいるのはそんな隠れた理由もあったりする。
まぁ、スザンナ隊で良かったんじゃねとは私も今思ったのだが。
カゲイエ・ミツイエ隊は傭兵団をやっていただけあって勝利の臭いに敏感だ。
こっちがニンジャを動かして情報を与えていたというのもあるけど、この背後奇襲は彼らの独断(という名の誘導)によって行われたのである。
「見て!
ホークマン達が逃げてゆく!」
私の近くに居たハガルのオデット声で空を見上げると、我先にと空中ユニットが逃げ出してゆく。
つまり、賞金稼ぎのアーレスは帝国軍総大将ではなく、最後まで賞金稼ぎでしかなかったという訳だ。
これで、帝国軍の心は折れた。
降伏までにある程度の虐殺が行われたが、それも忠誠心の低いビーストマスターやニンジャ達が寝返る為の同士討ちであり、この合戦でこの地の帝国軍は壊滅し、我が軍の兵は倍に増える結果となった。
で、ここからが厄介だった。
一気に二千近い降伏兵を手に入れたのはいいが、基本信用のできない連中である。
悪さをされるとたまらないので、彼らの処分を決める事に。
Lユニットはこちらの配下に入ってもらう事を了承。
あいつら、基本力づくだから、ぽちが居座った橋を落とせなかった時点で上下関係は決まっていたという事だ。
ゴーレムについては、魔術師達の操り人形だからこちらも問題はない。
さて、次に一番厄介な人間の処遇なんだが、ニンジャはコリに預ける事にする。
また、バーサーカー連中もデュランに丸投げ。
傭兵や悪党連中もカゲイエ・ミツイエに任せる事にした。
このあたりの業界のルールはできるだけ尊重するのがトラブル回避の元である。
で、残りを調べてみると旧ホーライ王国残党がかなりの数いた。
「我らとて食わねばならぬ。
この地が雪原に覆われて、多くの者が飢え死か凍死してしまった。
それでも生きなけばと思い、彼の甘言に乗ってしまった」
ホーライ残党の代表者として尋問に立ったジュルクと名乗るゴエティックは白髪混じりの髪をかきながら力なく笑う。
ホーライ王国が滅んで25年。
宮廷魔術師を目指していた青年は、先達に先立たれて気づけばこんな場所に立っている。
魔術師の育成というのは、どうしても学問である為に国内が安定しないとできない。
その結果、神聖ゼテギネア帝国の治世下では恐ろしいぐらい魔術師が激減したのである。
才能のある者はネクロマンサーやリッチとなって不死を得てその力を振るうので、新しい芽が不要となったしまった。
そして、それでも魔術の門を叩くのならば、魔導師ラシュディ門下の暗黒道に身を堕とすしかない。
彼がたどり着いたゴエティックというクラスは人の身での限界点でもあるのだった。
「この首で皆が助かるのならば、差し出そう。
ならば、どうか残りの将兵の命は助けてやってくれないか?」
こちらとて好きに首を切っている訳ではない。
こういう人間は仲間にすべきだ。
「いいでしょう。
あなたの嘆願に従って、皆を助命します。
その代わり、何かあったらあなたが裁きなさい。
それと、今後の忠誠を見るためにも、私の従軍に従ってもらうわよ」
「仰せのままに」
こんな訳で彼らを助命し、再編が終わったのが四日後。
その間に城塞都市スンツバルと自治都市ボセーデンにスザンナ隊を派遣して開放している。
「はい。
これおみやげ」
「なにこれ?」
戻ってきたスザンナからハープを受け取る。
試しにかき鳴らしてみるとなかなかいい音が出る。
「自治都市ボセーデンで市民から頂いた。
『反乱軍のみなさんに期待するほかありません。
どうぞ、われわれをお救いくださいませ。
たいした援助もできませんが、どうぞお受け取りください。
王道を歩み、真の王者としてわれわれ民を導いてくださいね』だって。
期待されてるじゃん」
スザンナの軽口に私はただハープを眺める。
この『レミングのハープ』は、CFが30~69の間という事を意味している。
カストロ峡谷でラウニィーを助けたから65以上だとは思うが、まだ70には届いていないか。
「大変です!
ああ、なんて事!!」
あわてて部屋に入ってきたエリナが悲鳴をあげる。
それに私とスザンナが何事と警戒すると出てきたのは一匹の猫。
「この部屋めがけて猫が!猫が!!」
レミングのハープ。
ネズミの町レミングに伝えられる伝説のハープで、ネコを呼び出すためこの町では禁断のハープと言われるそうだ。
後書き
見事に長くなったので前の話と合わせてタイトルを変更。
オリキャラメモ
ジュルク ゴエティック
旧ホーライ王国残党の取りまとめ役を名乗る中年。
宮廷魔術師を目指していた青年は王国滅亡後も学び続けてこの場所に立つがそれが人の限界でもある。
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