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整備士の騒がしい日々

作者:ヒノカマ
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おい、マジでなんの話だ、こら!

 
前書き
こちらでは初投稿になります。よろしくお願いします。 

 
 ガヤガヤと騒がしい雑踏の中を歩く。右を見ても人、左を見ても人、前も後ろも同様。周りは夜とは思えないほど明るくその明るさの為、星は見えていない。
 ふと、足が止まった。
 ある電化製品店で陳列されているテレビ。そこにバラエティーやCMなど様々な番組を映していた。その中の一つに目が行く。

『始まりました。朝まで煮テレビ』

 それはとある討論番組のようだ。司会は誰もが見た事のある有名人。その周りには世界的にも有名な先生方が席を並べていた。そして番組内のモニターにある男性の顔写真が映し出される。

『今日の話題は織斑一夏くんについてです』

 何処にでも居そうな男子学生。見た目14、5歳といったところだろう。その彼が討論番組の対象になっている。普通なら政治などを題材にするものではと思うが、彼が行ったことは世界に衝撃を与えた。

『私は良くわからないんだけどね...これってやっぱり大変な事なの?』
『そりゃ世界で初めてですから男性がISを動かせるなんて』

 IS、正式名称【インフィニット・ストラトス】
 宇宙空間での活動を想定して作られたマルチフォーム・スーツ。
 しかし、製作者の意図とは別に宇宙進出は一向に進まず、結果このスペックを持て余した機械は兵器へと変わり、それは各国の思惑からスポーツにと落ち着いた所謂、飛行パワードスーツである。
 だが、このISは誰にでも使えるモノではない。

『ISは女性にしか使えないモノなんですよ』

 なぜかISは男性にはまったく反応せず、女性にしか反応しない。どうしてそのようになっているか誰もが知りたい事ではあるが開発者である篠ノ之 束が行方不明な為、誰もその理由を知らないでいた。
 いや、例え見つかったとしても彼女は答えを提示しないだろう。篠ノ之束とはそういう女性である。

『でも彼は動かした、と』

 そこに女性にしか動かせないモノを動かせる男が現れた。それに世界が注目せずに誰が注目すると言うのだろうか。テレビでは彼の今後について色々論議されている。
 それをボーっと眺めていると胸元にしまってあった携帯が震えた。ゆっくりした動作で携帯を取り出し画面を見ると、こちらから連絡をしても一切応じない相手からの電話。

「もしもし。あぁ、ちょうど見てるよ」

 男がISを動かした。この情報はすぐに知ることが出来た。ただし、それが誰なのかはしばらくの間、情報が規制されていた。そしてそれが誰なのかが公開されたのはまさに今日。だから各番組は待ちに待ったと言わんばかりにこの件の特集を放送している。

「バカだねぇって、それだけ世界が驚いてんだろ」

 ちなみにこの情報規制は日本だけでなく、世界中も同じ状態になっていた。チャンネルを回せも回せも全部IS関連の番組。違うことをやれば視聴率を根こそぎ持っていけるはずだ。

「それよりそろそろ、説明を願いたいんだがな」

 実の所、電話をしているこの男-白波 烈震-は今までとある事情で各国を旅していたのだが、つい三日前程に日本に戻るようにと命令され、今日の午前の便で日本に帰ってきた。その時の様子だが――

「はぁ? どういうことだよ?まてって、日本に帰れってまだデータは揃って、いやいやいや、不十分だっての! おい、こら、聞いてって切りやがった」

 ――と一方的。再度かけ直すもこちらからの電話は一切出ない。あちらからは容赦なくかかってくると言うのに理不尽である。

「行けばわかるって、おい。なに? 手続きは終わってる? おい、マジでなんの話だ、こら!」

 そしてまたしても矢継ぎ早に言葉を聞かされる。こうなるともう相手は止まらない。そして、こっちが質問をする前に

「頑張れじゃねぇ! だから待てって、あの野郎、また切りやがった!!」

 結局、帰ってこさせられた理由はわからずに電話は終わってしまった。ダメもとでかけ直すが、出る気配どころか。

「この電話は使われておりませんじゃねぇ!! つい数秒前にかかってきただろうが」

 携帯に向かって吠えても意味がないのはわかっているのだが、吠えずにはいられない。

「たく、あの野郎。次会ったら拳骨で頭グリグリしてやる」

 ここ数年会った覚えがない相手だが、あの顔は忘れる事はないだろう。例え顔が変わっているとしても、声の雰囲気はまったく変わっていない。あの独特な雰囲気は変えようと思っても簡単には変えれない。

「それにしても、よりにもよってIS学園かよ」

 視線をテレビへと向ける。始まったばっかりの討論番組の話題はIS学園へと移っていた。 
 IS学園というのは、
 ISの操縦者育成を目的とした教育機関であり、その運営及び資金調達には原則として日本国が行う義務を負う。ただし、当機関で得られた技術などは協定参加国の共有財産として公開する義務があり、また黙秘、隠匿を行う権利は日本国にはない。また当機関内におけるいかなる問題にも日本国は公正に介入し。協定参加国全体が理解できる解決をする事を義務づける。また入学に際しては協定参加国の国籍を持つ者には無条件に門戸を開き、また日本国での生活を保証する事。ーIS運用協定「IS操縦者育成機関について」の項より抜粋。
 という学園である。
 そのIS学園が明日からの職場となる手続きがされた様だ。本人の知らないところで。

「たく、めんどくせぇな」

 髪をガリガリとかき乱す。すでに決まってしまった事。もう自分自身の力では取り消すことは出来ない。
 討論番組はまだ続く。それを横目にまた雑踏の中へと紛れる様に歩きだした。
 その顔は言葉とは違い、楽しそうに笑っていた。   
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