フェアリーテイルの終わり方
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幕間二 氷炭、相愛す
2幕
前書き
ある男 と 凍て乙女 の 真実
まず向かったのはキジル海瀑。セルシウスにとっては涼しくて心地よい場所らしく、リラックスしていた。
セルシウスによると、滝の上から下を見下ろした男女は深い絆で結ばれるという伝説から、当時は伝説にあやかろうとする男女で溢れ返っていたそうだ。しかもセルシウス自身も、共に来た男に誘われたというから仰天した。
『ここでアイツと話をしたのはついこの間のように思えるが……500年、か……』
次にイル・ファンに向かった。セルシウスによると、昔は都ではなく一面草原の土地で、流れ星がよく見えたという。
流れ星への願い事、他にも願いが叶うおまじないを、セルシウスは例の男に教えてもらったという。セルシウスに教わって、ジュードとフェイも一緒にやってみたりした。
『……アイツは何を願ったのか。ふふ、今さらだな……』
そして最後に、彼らはガンダラ要塞に到着した。
要塞の全貌を見渡し、セルシウスは小さくため息をついた。
『こんな無粋な建物が建ってしまったか……だが、この地のマナに覚えがある。ここで間違いない』
「ここにはどんな思い出が?」
『私はここであいつと出会った。私が初めて出会った人間だ。――ハオという名に覚えはないか?』
「ハオって……まさかハオ博士!? 初めて大精霊の召喚を成功させて、精霊術の基本理論を確立した伝説の精霊学者!?」
凍て乙女はさらにハオという男について明け透けに語る。熱心に口説かれた、あちこち(デートに?)連れ回された、一時は同棲していた、ただのスケベ――「ハオ博士」のイメージを著しく崩されたが、同時にジュードは大きな希望を得た。
「ハオ博士とセルシウスが同棲……うん! 歴史的大発見だよ! 僕とミラが目指してるものを、500年前にも目指した人がいたなんて――」
つい声に熱がこもるジュード。しかしそんなジュードを、セルシウスは冷たい目で顧みていた。
『お前は人間と精霊の共存を目指しているようだが』
セルシウスがガンダラ要塞へと歩き出す。ジュードがするように、胸に手の平を当てながら、回顧するように。
『その娘は精霊に限りなく近い霊力野を持ったせいで、人間どもから迫害されたそうだな。人間同士ですらその有様だ。それでも貴様は今ここでその娘に、人と精霊が共存できると説けるのか?』
共存できるか、と問われればジュードは即座に肯定する気でいた。しかし、精霊から虐待を受けたフェイに対して精霊と仲良くしようと訴えるのは――ジュードはついフェイを見てしまう。
どんなに綺麗な理想でも、痛めつけられた彼女に説くのでは、ただ彼女の古傷を抉るだけ。
「ジュード」
はっとする。フェイがジュードの両手を取って笑っていた。
「わたしはイイ。だから教えて。ジュードの胸の中。ジュードのココロ。フェイを傷つける言葉でもイイ。でないとこの先、源霊匣に反対する人たちにもアッサリ負けちゃうよ。だから言って? あなたの言葉で、精霊が大嫌いなわたしの心をへし折って?」
理想は奇麗なだけでは成し遂げられない。ジュード・マティスはこの日、それを痛いほど知った。
「――人と精霊は共存できる。してみせる。そのために最善を尽くすって、僕とミラは誓ったんだ」
フェイは泣き出しそうな顔で、なお笑って、ジュードから手を離した。
『それがお前たちの答えか。――ならばその覚悟が本物か試させてもらう!』
セルシウスが腕を振り上げると、空間を裂いてアクアドラゴンが召喚された。
ジュードはグローブを両手に装着して構えた。
フェイもまた、まるでミュゼのように地面から浮き、手に緋色の陣を携えた。
「フェイ。これは僕とセルシウスの問題だ。無理しなくていいんだよ」
「ムリしてない。セルシウス、お前『たち』って言った。きっとこれは、フェイにもモンダイだから」
「――ごめん。巻き込んで」
フェイは首を横に振った。
ジュードは改めて構え、フェイともどもセルシウスとアクアドラゴンに挑みかかった。
後書き
更新が遅れて申し訳ないです。もう一つの連載のほうにかかりきりでした。すみません。
思い出巡りはサクッと飛ばして、いきなり決戦です。
人と精霊の共存。精霊から虐待されたフェイには、ジュードの理想はどう映ったのでしょうか?
答えは本文の中に、でございます。
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