我が剣は愛する者の為に
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自分の刀、修行開始。
華琳と出会ってから再び旅は再開された。
といってもそれほど劇的な何かがあったのかというと、そうでもなかった。
というか、1年ちょっとで三英雄に出会う事が異常だった。
世界をある程度回り終わり、近くの街で俺と師匠は歩いていた。
これから本格的な修行を始まるのだが、その前に師匠が言った。
「お前の武器を探そう。」
実は旅の最中、様々な街に赴いたのだが俺の求める武器が見当たらなかった。
求める武器は日本刀、つまり刀だ。
この時代の日本でも本格的な刀は出ていなかったはずだ。
何より、この国では刀のような形と強度はほとんど使われないはずだ。
前にも話したがこの国ではパワーで押し切る事が多い。
刀も扱い次第では全然渡り合えるのだが、それはかなり使いこなせるという条件がある。
一般兵が刀を使うと鍔迫り合いで押し負けてしまうだろう。
俺は前の世界での知識や経験などがあり、それに今は修行中の身だ。
これから達人レベルまで鍛えればいい。
そこまでの領域に行けるのかどうか不安だが。
麻奈は俺の身体には呂布を超える武の才能が秘められていると言っていたが、それはあくまで開花すればの話。
絶対の保証はないので当てにはできない。
という事でこの街は師匠曰く武器を一番取り扱っている店が多い街らしい。
周りを見渡すと、様々な武器が並んでいる店がずらりと並んでいる。
行き交う人々に様々な武器を宣伝している。
俺は一軒一軒の武器屋を見ていると師匠が声をかけてきた。
「どうだ?
お前の求める物はあるか?」
「ありませんね。」
今のところは成果なし。
5軒目となる武器屋を出て師匠が言う。
「お前の求める武器の形状などは知っているが、あんな形をした武器私は見た事ない。」
この世界ではまだ出回っていない武器だから、知らないのも無理はない。
転生する前、麻奈は俺が心から武器を求めれば手に入るようにしておくと言っていた。
多分、今まさに欲しているのだが。
やはり、神様でも限界があったか?
そう思いながら歩いていると前の広場に結構な人だかりができていた。
「何でしょうか?」
「行ってみるか。」
二人で人をかき分けながら、先頭まで移動する。
前には簡単に作られた木製の壇上の上に一人の商人が立っていた。
そして、その商人に注目している俺達に高らかに言う。
「さぁ、よってらっしゃい見てらっしゃい!
世にも珍しい武器を取り扱っているよ!!」
そう言って取り出したのは先端が滑らかに曲がっている剣だ。
確かゲームで見た事がある剣だ。
確かククリナイフと呼ばれている剣というよりナイフに近い物だろう。
俺以外の人が世にも珍しい武器を見てほう~、と物珍しいような目で見る。
確かに珍しい。
てか、この時代にはなかった筈だ。
ククリは、ネパールのグルカ族をはじめとする諸種族、およびインドで使用されている短刀だ。
この国にあること自体おかしいのだが、三英雄などが女性になっているこの世界だ。
ククリが置いてあっても何だが納得してしまう。
競りが始まり、結構な値で落札された。
オークション的な感じで売買しているのだろう。
もしかしたら俺が欲しい刀が出るかもと思った時だった。
「最後はこれ!!
世にも珍しい形をした剣だよ!」
と、本当に俺の欲している刀が出てきた。
それを見て俺は驚きの表情を浮かべる。
「縁。」
「はい、あれです。
あれが俺の求めている刀です。」
横に立っている師匠に言う。
柄や鞘は純白の白。
柄頭は竜の顔をデザインとして彫られていた。
刀身だけでも170センチはあるだろうか。
長刀の部類に入る剣だ。
是が非でも欲しいのだが、さっきのように競りをされると非常に困る。
何故なら今はそれほど金に余裕はない。
生活をする分には問題ないが、競りをできるかどうかと言われれば無理だろう。
どうしたものか、と考えた時だった。
「この剣はお金は入りません!
あくまで主役は最初の奴でしたからね!
これは私がどれほど引っ張っても抜けない剣なのです!
そこで、この剣を抜けるかどうか挑戦したいという人はいませんか!!
挑戦するだけならお金は入りません!
抜けたのならその剣はそのお客さんの物です!!」
壇上の商人がそう言うと辺りがざわつく。
そして、すぐに挑戦者が現れる。
身長は190はあるであろう長身の男だ。
腕の太さも俺の倍以上はありそうだ。
腰にはその腕の太さに見合った巨大な剣がある。
商人の手から刀を受け取ると、力の限り引っ張る。
顔が真っ赤になるくらいになるまで引っ張っているが抜ける気配が全くしない。
抜けないと確信したのか、刀を商人に返し壇上から降りる。
それから何人の腕っぷしの強い男達が刀を抜こうとするが一向に抜けない。
中には女性もいたが結果は同じだ。
立候補する挑戦者が居なくなりつつあるところで師匠が俺に耳打ちをする。
「縁は挑戦しないのか?」
実はそろそろ手を挙げて挑戦してみようかなと思っていた。
麻奈がもしこの刀の事を言っているのなら、それは今がこの時なのだろう。
俺は手を挙げて壇上に登る。
彼方を受け取ると妙に手に馴染む感覚を感じた。
左手で柄を掴み、右手で鞘を掴む。
この時、俺は何となく思った。
(抜ける。)
対して力を入れる事無く、引っ張ると簡単に鞘から刀身が抜けた。
埃や指紋一つない刀身が太陽の光に反射して煌びやかに輝いている。
俺は一瞬、その輝きに目を奪われた。
「お見事!!
まさか本当に抜ける人が居るとはね!!
ささ、その剣はお客さんの物だよ!!」
その言葉を聞いてはっ、とする。
何故だか知らないが拍手が沸いていてので、軽く頭を下げながら刀を鞘に収めて壇上を下りる。
もう見せる商品がないのか、これにて終了!、という商人の言葉で人々は自然と解散していく。
「下から見ていたが良い剣だな。」
近づいてくる師匠はそう言った。
俺はもう一度鞘から剣を抜き、軽く振り回す。
今の俺の身長や力だと少し扱いにくいが、これも慣れれば問題ないだろう。
「縁の武器も手に入った。
これより、本格的に修行を開始する。」
その言葉を聞いて鞘に収めて、表情を引き締める。
そうだ。
これから本格的に俺を鍛える修行が始まる。
街を後にして俺達は近くの山に入って行く。
「修業はこの山でするのですか?」
馬を連れて前を歩いている師匠に言う。
師匠は振りかえる事無く、俺の質問に答える。
「今はこの山でするが、数日もすれば移動する。」
「それって今までと変わらないのでは・・・・」
「確かにそうだな。
だが、違う所を言うとすれば、こういった自然での修行が多くなり野宿も自然の中でするつもりだ。
私との打ち合いも朝昼晩と四六時中時間が許す限り打ち合う。
もちろん、木刀ではなくお前の刀でな。」
「うへ~~」
師匠の発言を聞いて今から始まる修行を想像した。
ボコボコにされて地面に転がっている俺の姿が容易に想像できた。
これは俺が強くなるまできついだろうな。
川の近くで拓けた場所に着く。
馬を近くで野放しにして、師匠は戟を持ち構える。
それを見た俺も手に入った刀を抜く。
「さて、今から始めるのは本格的な修行だ。
一切手加減はしない。
もちろん、刃の部分では攻撃しないがそれ以外の所は全部使うつもりだ。
お前も全力で挑んで来い。」
「はい、師匠!!」
そうして、俺は前に向かって踏み込む。
俺の修行が始まる。
大事な人守るための力を得るために。
後書き
今回が少年編の区切りですのでものすごく短くなりました。
次回から時系列が飛び飛びになったり、部分部分の修行の描写を書いていく予定です。
誤字脱字、意見や感想などを募集しています
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