DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第7章:過去から未来への歴史
第19話:長かった一瞬の冒険
(グランバニア)
ティミーSIDE
3人娘用のケーキの周りに集まってた父さん達が突然もやに包まれたと思ったら、次の瞬間ボロボロの格好になり姿を現した。
しかも誰だか判らない少年が1人追加され……
「と、父さん……一体何が!?」
「お、ティミーじゃん! 久しぶりー(笑) 別れた時と全然変わってないな、お前。服装まで一緒じゃん」
何を言ってるんだ、この男は?
「お父さん、お兄ちゃん達が変わりないのは当たり前でしょ! 私達だけがタイムスリップしてたんだから……お兄ちゃん達からすれば私達の大冒険は一瞬の事なのよ」
タイムスリップ!? 大冒険!? 本当に何があったんだ?
「あぁそうか……めんどくせーな、みんなに説明しなきゃならないのか!」
「そうですよ父さん。あの一瞬に何があったんですか? そちらの少年は誰なんですか?」
多分プサンさんがまた絡んでるのだろう……一瞬でマリー達が更に大人っぽくなったが、時間的にどれくらいの期間冒険してたんだろうか?
「彼はアローだ。アロー、コイツが僕の息子のティミーだ。仲良くな」
……だけ!?
「それだけですか!? 他には何もないんですか? 彼がどんな人物なのか、何故我が家に来たのか……と言うか、父さん達は何をしてきたのかの説明は無いのですか!?」
「ん、そんな説明は無い! 僕の息子なら察しろ! そして面倒な説明は、その物陰に隠れてるヒゲメガネに聞け!」
え……ヒゲメガネさん!? 何で居るの?
「あ、いや~……居るのバレてましたかぁ? 流石リュカですね、わっはっはっはっ(汗)」
「お世辞はいい! そんな事より例のブツは持ってきたんだろうな。娘の誕生日パーティーの続きをしながら、プレゼント代わりに説明しろ馬鹿! 酒の肴に拝聴してやる」
父さんはプサンさんの姿を確認すると、顎で食卓へ招き寄せ自分の隣の席を指し示す。
プサンさん的には父さんより離れた席を希望したいのだろうか、少しだけ顔を引き攣らせて素直に従った。おかしいな……相手は神なのに、父さんの方が偉く見える。
「あの……これ……ワインです」
酒を嗜まない父さんにワインをオズオズと差し出すプサンさん。
例のタイムスリップ中に何かあったのだろう。
「……3本もあったけ? 僕は安ワインを1本だけ手渡したはずだけど……ワインって長い間保存すると増えるの? それともお前……我慢できずに飲んじゃったから、代わりに良いワインを買っておいたんだよとか言うの?」
「違いますよ。いくらリュカとの約束でも、私は破ったりしません」
「“リュカとの約束でも”とは酷い言い方だなオイ!」
プサンさんの眼鏡にベットリ指紋を付けながら、僕等にも席に着く様ジェスチャーで指示を出す父さん。
「あの後、ワインを保管するにあたって私も色々調べたんです。最も適切な環境・温度・場所……」
「なるほど……その結果、安ワインじゃ何百年という月日に耐えられない! そう結論付けたんだな? そんでサッサと飲んじまったんだな!?」
「違います! 確かに安ワインでは長期間の保存に向かないと分かりましたが、約束は約束ですから、お預かりしたワインを適切な場所に保管しておいたんです」
「ふ~ん……何処にだ? 適切な何処に保管してたんだ?」
父さんの目が獲物を見つけた猛禽の様になった。プサンさん……可愛そうに。
「アナタ解ってて聞いてるでしょ」
「いいえ解りません。神様の考える事なんて、下賤な一般人には解りようがありません(嬉)」
どうやら父さんの目当てはこれだった。
「……ゴールドオーブの部屋です! あそこなら温度・湿度共に年間を通して一定で、あの部屋を知っている者も少ない。だから長い年月ワインを保管するのに最適だと思ったんです!」
ゴールドオーブの部屋? それって確か……
「床に穴空いて無くしちゃったのか?」
「……………」
プサンさんは父さんの問いかけに、ただ黙って頷いた。申し訳なさを顔一面に出して。
「で、代わりに良いワインでも買っておいたってワケ? かー使えねー神だなオイ!」
「そ、そんな事言って……あの時教えてくれても良かったじゃないですか! 私だってまさか天空城が墜落するとは夢にも思わなかったんですよ! 知ってたのなら、その事を考慮に入れてワインを託せば……はっ! ま、まさか……知ってた上でワザとワインを!?」
「おや気付きましたか、やっと……」
なんて男だ。神様を苛める為に、時空を超えて面倒な仕掛けを施すなんて。
どんだけ性格悪いんだ?
思わず引いてしまい父さんを見詰めていると、隣に座った母さんが僕等にこれまでの事を説明してくれた。
結局、父さんもプサンさんも説明してくれないという、身勝手な人種なんだ。
ティミーSIDE END
(グランバニア)
リュリュSIDE
流石神様です。考える事がイっちゃてますよね。
過去の問題を解決させる為に未来の偉人を勝手に召喚するんですから……
でも凄いのはお父さんですよね。
だってそんな身勝手な神様の信頼を一身に受けてるんですから!
絶大なる信頼ってやつですよ、これは。
だけど私のお父さんはそんな簡単な人じゃないのでぃす!
勝手に利用する様な悪い神にはお仕置き敢行しちゃうのです。
それがコレ! 『安ワイン数百年後持ってこいやコラ!』計画です。
何百年も熟成できない安ワインじゃ、ちゃんと言いつけを守ってワインを持ってきても飲めた代物じゃないです。
そうしたら『テメー神だろ。どんな物でも適切な状況にしろ! 使えねーな』と言って罵倒します。
しかし今回はお父さんの思い描いた通り、天空城落下に巻き込まれ託したワインは紛失。
全知全能の神様にはあるまじき失態です。
私のお父さんは神様より凄いのです!!
「言ってくれれば良いじゃないですか! 『天空城は墜落するから、そこに保管するな』って事前に言ってくれれば……」
「お……神様が責任転嫁ですか? 確かお前『未来なんて知らなくて良いのです……あるがままを受け入れるのも大切』って言ってたよな。僕、部屋から出て行く途中だったけど、聞いてたんだぞ」
「ホント意地が悪い男だな」
「何とでも言うがいい。だがお互い様だぞ……お前だって僕等の未来を知ってて何も教えてくれなかったんだからな! 自然的に巻き起こる未来の出来事なら『本人の為』と嘯いて知らせないのも理解するが、お前が巻き込んだ事柄を知らせないのは納得出来ん! だから同じ事を仕返ししてやった」
「そうだそうだ、私の大切なお父さんを勝手に利用するな! 今度からは私も一緒に連れてけー!」
「リュ、リュリュ……それ違う。今度とかもうないから! もう二度と巻き込まれるのはゴメンだから!」
あら残念。折角お父さんとラブラブ冒険旅行が出来ると思ったのに……
「と、兎も角……託されてワインの代わりに高級ワインを3本も持ってきたんだから良いじゃないですか。高かったんですよ」
「愚か者。僕は酒を好まない! 高級だろうが騙されないぞ。3倍に増えても騙されないぞ! お前は二度と僕には逆らえないんだ。それを理解しろ」
元々お父さんに逆らえてないと思うけど……まぁ良いわ。
それよりも……折角ヒゲメガネさんが持ってきてくれた高級ワインなのに、誰も手を付けようとしない。勿体ないわねぇ……
ソッとワインに手を伸ばすマリーちゃんの姿が目に入ったが、直ぐにウルフ君が手を掴み制止する。
そうよね、12歳の子供にはまだ早いわよね。
このまま放っておいても、お子様達に悪い影響があるし、大人な私が少しでも処理するべきかしら?
お父さんもティミー君もお酒は嫌いみたいだし、孝行娘な私としては処分してあげるべきよね!
うん。飲んじゃいましょう!
お酒飲むのは初めてだけど、みんなの為に私が飲んじゃってあげましょう!
リュリュSIDE END
(グランバニア)
ウルフSIDE
口喧嘩を続けるリュカさんとヒゲメガネを余所に、マリーがワインに手を伸ばしたから、慌てて腕を掴んで止めた。
冗談ではないのだよ。
やっと落ち着けるというのに、マリーの酒乱無双が発動しては俺の平安は永遠に訪れない。
「ちょっとだけだから。あんな良いワインを誰も飲まないのは勿体ないから……」と、可愛く俺に懇願するが、俺の決意は揺らがない。
コイツに酒を飲ませてはダメなのだ!
しかし事態は俺の与り知らぬ所で突き進む。
誰も手を出さないワインを怪訝に思ったのか、リュリュさんが徐に開栓し飲み出した。
しかも豪快なラッパ飲み……いい女が下品だなぁ。
いや違う! 彼女もマリーも、酒の嫌いなリュカさんの娘なのだ。
そんな女が豪快に酒を一気飲みすればどうなるか……
ヤバいっす! マリーの様な脱ぎ上戸なら俺も傍観するけど、凶悪な酒乱だったらどうしよう!?
俺は慌ててマリーとリューノの手を握り、自室へ逃げ出す準備をする。
脱ぎだしたら見学会。それ以外だったら……エスケープっす!
ウルフSIDE END
後書き
やっとグランバニアに戻ってきました。
ティミーを書くのも久しぶり。
あと2.3話で完結ですが、次話からアリーナ達のその後を語らせます。
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