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機神呼嵐デモンベイン

作者:ハイド
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第二部『The OMEN ~魔神降臨!大導師、マスターテリオン登場だゾ!~』
  第7話「ライバルとの初戦闘は、大体が負けイベント」

 
前書き
今回は、神之介VSマスターテリオン(1戦目)でございます。
圧倒的なプレッシャーを放つマスターテリオンに神之介は勝てるのか!?
それではどうぞ~。 

 
Side 神之介
「マスタァァァァァァァァァァァァァァァァァァテリオォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!」
「待て!神之介、熱くなりすぎだ!!!」
 雄たけびを上げ、オラはマスターテリオンに拳を振り上げ走る。アルの制止の声が聞こえるが、そんなのは知った事ではない。今、オラがやる事は一つ。このクソやろうをぶっ飛ばす!それだけだ。
「ふむ、闘争本能を制御できていないな。それではまるで猪と同じだ」
 マスターテリオンの言う事を無視し、オラは奴の顔面に再び拳をぶち当て・・・ようとしたが一瞬で姿が消え、拳は空を切る。
「ンなっ!!?」
「魔術とは感情を理性で制御し、昂ぶる魂を魔力と融合させ、精錬、精製するものなのだ」
 背後から聞こえる声に、振り向けばそこにはマスターテリオンが、手を伸ばし、オラの鳩尾に当てる。
「こういう風にな」
「ガッハァァァァァァァァァァァァッ!!?」
 瞬間にオラの体に衝撃が走り、今度はオラが吹っ飛ばされる羽目になった。血を口から撒き散らしながら近くにあった木に叩きつけられる。
「神之介ッ!大丈夫か!!!」
「・・・ああ、何とか大丈夫だゾ」
 口から血をぬぐいながら起き上がり、オラはアルに答える。視線の先には退屈そうに金髪の髪をいじっているマスターテリオンが・・・。それを見ているとふつふつと怒りがこみ上げる。
「・・・調子に・・・乗るなァ!!!」
「あ!待て!また返り討ちにあうのがオチだ!!!」
 再び、オラはアルの制止を振り切りマスターテリオンに駆け出す。
「同じ事を・・・」
 そんなオラを見てマスターテリオンは造作もなく手をかざす。光弾を撃つ気のようだ。・・・だが、そうはさせない!!!ウェストのミサイルを掴んだ時等に手に魔力をこめるように足に魔力を込め、一気に飛び出す。
「!?」
 予想外の行動だったらしく、驚きの表情を見せるマスターテリオン。オラが狙うは、その股間!そこに思いっきり頭突きをかますッ!!!
-ゴスッ!
 命中、そして沈黙・・・。
「ぐ・・・ぐあああああああああああ!余の・・・余のおいなりさんがァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
「よっし、効果覿面」
「汝、えげつない事するのう・・・」
 股間を押さえ、悶絶するマスターテリオン。アルに突っ込まれたが、気にしないし気にする余裕もない。こいつが怯んだ今こそ、反撃のチャンスだから。
「魔術なんざ使わせるつもりはねぇ・・・!このまま一気に決めさせてもらうゾ!!!」
「グリリバッ!?」
 そういって、まだ悶絶しているマスターテリオンを掴み、教会の壁にぶち当てる。マギウスで強化されてる為か勢いあまって、マスターテリオンの上半身が壁を突き破ったが・・・今はそんな事を考えている暇はない。
「さっきはよくもライカさんを傷つけやがったなァァァァァァァァァァァァァァ・・・これはライカさんの分じゃァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
「アッー!」
 そして、身動きが取れないところをカンチョーで追撃!このままじゃあ終わらない、2撃!3撃!4撃!カンチョーの連続攻撃をお見舞いする。マスターテリオンのけたたましい悲鳴が木霊した。
「これほどダメージ与えてりゃ流石に弱ってるだろ・・・んじゃトドメをっと」
 そうやって虫の息状態のマスターテリオンを抱え、パイルドライバーの体勢へ。
「トドメだァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
 そして飛翔。そのままパイルドライバーでトドメを指してやる!!・・・がしかし。
フッ・・・。
「なっ!?何処へ消え・・・」
 掴んでいたはずのマスターテリオンがまるで霧のように消えた。何処に消えた!?そう思い、見回す。・・・だがそれがいけなかった。
ゴン!
「たらァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!?」
「し、神之介ェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!?」
 バランスを崩し、思いっきり全身を地面に打ち付けてしまった。しかも運の悪い事に、股間の所に石がありそこに思いっきり象さんが直撃してしまう・・・。不幸だ。激痛が全身を駆け巡り意識が飛びそうになる。特に股間の所為で。
「ふはははは、貴公が今まで戦っていたのは余の幻影だ」
 声のした方に振り向くと上空にマスターテリオンが浮かんでいた。先ほどまで与えたダメージが嘘のようにピンピンしている。
「貴公は、余の手の内で踊らされていただけに過ぎぬ。中々出来るようだが・・・、まだまだのようだな。話にならぬ」
「そう言っておるが、汝ケツから血が垂れておるぞ?」
 雄弁に語るマスターテリオンにアルがそういう。よく見ると、マスターテリオンの後ろから何かポタポタと垂れているような・・・。よく見りゃ血だ。
「違うぞ、アル・アジフよ。これはアレだ。トマトジュースだ。先ほどのカンチョーでケツを負傷した訳ではない。まぁ、彼の力は分かったから次は例の新しい鬼械神を呼びたまえ。余は生身で十分だ」
 こいつ・・・小学生でもつきそうにない嘘をついた上に強引に話を進めやがった。・・・ってか、生身で巨大ロボットと殴り合いって何処の東○不敗だ?
「神之介、呼ぶぞ!」
「はぁ!?何言ってんだお前!!!」
 アルの意外な言葉にオラは戸惑いを隠せない。だが、アルの表情は真剣そのものだ。
「これほどの絶望的な戦力差だ。このままでは汝は殺されるぞ!・・・それに、汝がここで死ねば・・・あの女や童達も殺されてしまう」
 焦燥の混じったアルの言葉に、オラはライカさんやがきんちょ達を思い浮かべる。・・・仕方ねぇ・・・デモンベインを呼ぶっきゃねぇか。・・・ここでふと疑問が。
「呼ぶっつったってどうすりゃいいんだ?あれ、格納庫の中にあるんじゃないの?」
「その点に関しては大丈夫だ。昨日使用した時システムは掌握しておいたからの。座標を特定させれば『召喚』の理屈を応用して呼び出せる」
「成る程・・・。またアレに乗る事なんて思ってなかったが・・・仕方ねぇな」
 アルと会話を交わし、オラは立ち上がる。そして、オラの頭に再び何かが入ってきた。・・・これはっ?
「召喚の口上だ。それを唱えればデモンベインを召喚できる!行くぞ!神之介!!!」
「ぶ、ラジャー!・・・憎悪の空より来たりて・・・」
 天に右手を掲げオラは召喚の句を唱える。
「正しき怒りを胸に・・・我等は魔を断つ剣を執る!」
 右手が輝くと同時に天空に巨大な魔方陣が現れた。『0』から『1』へと魔方陣からデモンベインが現れようとしている。
「汝!無垢なる刃・・・デモンベインッ!!!」
 唱え終えた次の瞬間、デモンベインが現れオラは光の粒子となって、デモンベインへと吸い込まれた。



「準備・・・完了っと」
 目を開ければ昨日と同じくデモンベインを操縦する為の空間にオラは立っていた。さっきは、ぶっ倒すといきまいていたが・・・いざ、やるとなると少し気が引ける。・・・何てったって、あの破壊ロボを屠った力を魔術師とはいえ生身の人間に向けるのだから。
「神之介、分かっていると思うが手加減をしようと思うなよ。奴はそういう次元ではない」
 前方のシートにいるアルは振り返りもせずそう言う。分かってはいるんだが・・・やっぱりなぁ・・・。
「ふっ、呼んだか。それでいい、楽しめそうだ」
 一方のマスターテリオンは、すぐ近くのビルの一番上に立っていた。涼しげに構えもせず悠々と立っている。・・・まだケツから血が垂れているが・・・。巨大ロボで生身の人間をドつくのはやっぱり、気が引けるゾ。だが!
「色々迷ったけど・・・、呼んじまったモンは仕方ないな。行くぞ!マスターテリオン!!!」
 もうデモンベインを呼んだのでやるしかない・・・。オラは吠え、デモンベインを走らせる。・・・そして拳を振り上げ、マスターテリオンにぶち当てた!だがッ!
「踏み込みが足りんな」
「ま・・・マジかよ・・・」
 マスターテリオンはそれをいとも簡単に片腕一つで受け止めていた。パッとデモンベインの拳から手を放し、拳を握りながら続ける。
「腰の入った突きはこうやってやるものだ」
 そういって飛び上がり、デモンベインに迫ると、握った拳を叩きつける。
「ぬおおおおおおおおっ!!!?」
「くうっ!?」
 咄嗟にガードをするも、デモンベインは大きく後退してしまう。先ほどまでいた場所から現在いる足元まで長く伸びた二本の巨大な線がマスターテリオンの拳の威力を物語っていた。
「ぐ・・・腕がビリビリしやがる・・・。なんてパワーだよアイツは・・・」
「神之介!ぼさっとするな!」
 フィードバックにより痺れる腕を見ながら、呟くオラにアルの声が。咄嗟にマスターテリオンに視線を向けるが。奴は一瞬で姿を消していた。・・・居ない!?何処へ・・・?
「ここだ」
「ぐああああああああああっ!!?」
 目の前に現れると同時に顎とコクピットに鋭い衝撃!・・・どうやらアッパーをされたようだ。巨大、そして超重量であるはずのデモンベインが、空高く吹っ飛ばされる。アイツ・・・どんだけ、凄い腕力してんだ!?気がつけば、アーカムシティを一望できる高さまで・・・。
 そして、今度は逆に重力に引かれて落ちていく。
「落ちるぞッ!対衝撃防御ッ!!!」
 アルが叫ぶと共に防御陣がデモンベインを包む。次の瞬間、ズゥンと大きな音を立て、デモンベインが落ちる。その衝撃波、ビルを木の葉のように吹き飛ばし、土煙が辺りを覆う。
「う・・・あ・・・」
「神之介!脳震盪を起こしてる場合じゃないぞ!!早く立ち上がるのだ!!!」
 衝撃の所為で軽めではあるが脳震盪を起こしてしまう。アルはそう言っているが、そう速く脳震盪から回復できるわけでもない・・・。そうこうしている隙に、マスターテリオンが土煙から現れ、光る弓のようなものをこちらに向け、矢を放った。一本だったそれは、やがて分裂し無数の流星となってデモンベインに降り注ぐ。・・・何とか回避しねぇと!
「ぬ・・・ああああああああああっ!!!!」
 気合で脳震盪から回復し、立ち上がりざまにそれを回避する。だが、何発か被弾しコクピットを揺らす。
「だから、手加減するなと言ったろうに!このうつけが!!!」
「手加減なんざしちゃいねーよ!何だよあれ!東○不敗や衝撃のアル○ルトが可愛く見えるよ!!!つーかこういうロボット相手に生身で挑むって展開は今○作品でやれよ!!!!」
 アルの怒鳴り声に叫び返すオラ。本当、こう言うのは悪い冗談であってほしいゾ・・・。
「つーか、何か使える武器はねーのか!?このままじゃジリ貧だぜ!?」
「今使えるのはコレだけだ!」
「バルカンか。・・・まぁ、これならいけるか・・・?」
 デモンベインの頭部にお約束のようにバルカンが装備されていた。オラはすぐさまバルカンを掃射する。
「余を相手に玩具で遊ぶか?」
「牽制って言ってもらいてぇな!本命はこっちだ!!!」
 マスターテリオンがバルカンで気を取られている隙に、拳を叩きつける。ガッ!?と短い悲鳴をあげ、マスターテリオンは吹っ飛ばされビルへと突っ込んだ。
「やったか!?」
「それフラグだうつけ!」
 それを見て、思わずフラグを立ててしまったオラ。そして、案の定・・・。
「く・・・くはははははは!面白い!面白いぞ!野原神之介!アル・アジフ!!!」
 マスターテリオン健在でしたよちくせう。何故か、黄金に輝く十字架を握っている。コレは武器なのだろうか・・・。
「余も、少し・・・本気を出そうッ!!!」
 そう言って、十字架を横一文字に薙ぐ。オラは咄嗟にデモンベインをかがませ、回避した。その刹那、背後の高層ビル群が両断され、地面に落ちる。
「あっぶねぇ・・・回避しといて正解だったゾ・・・」
「ぼさってしてる場合ではない!次が来るぞッ!!!」
 アルの声と共に再び悪寒。モニターには蹴りを放とうとしているマスターテリオンが。回避できそうに無いので、パンチで蹴りを相殺する。・・・重い。
「どうした!野原神之介!アル・アジフ!貴公等の力はその程度か!」
「ああ!この程度だよ!悪かったなど畜生!!!!」
 マスターテリオンの声に苛立ちの声を上げながら、牽制にバルカンを撃つ。回避に専念している所を、パンチで潰す!と思っていたのだが・・・。
「余に同じ戦法が通じるとでも思ったか?」
「なっ!?ガハッ!!?」
「きゃあああああああっ!!?」
 見破られていたようで弾幕をモノともせず突撃。そして、顔面にストレートを放つ。吹っ飛ぶデモンベイン。何とか、体勢を立て直そうとするが唐突に凄まじい重圧が襲い掛かってきた。
「う・・・動けねぇ・・・こ、これは・・・」
「拙い・・・重力結界か?このままでは・・・」
 徐々に強くなっていく重圧にデモンベインもろとも潰れてしまいそうだゾ。そんなオラ達を、マスターテリオンははぁ・・・とため息をつきながら呟いた。
「少し本気を出しただけでコレか。・・・つまらぬ、実に期待外れだ。先ほどの怒りに任せた一撃の方が・・・。む?待てよ・・・?」
 そういいながら、顎に手を当てて思案。・・・そして、
「ならば、こうしてみるか」
 デモンベインから背を向け、あらぬ方向に手をかざした。・・・何をする気だ?その手の先にある建物を見て、硬直。
「まさか・・・テメェ・・・」
 その建物はライカさんがいる教会だった。マスターテリオンのやろうとしている事を悟り、叫ぶ!
「止めろォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」
 オラの制止も聞かず、マスターテリオンは光弾を発射!光弾は教会に炸裂するか・・・と思いきや、その手前の道路に炸裂した。
「ははは・・・あははははははははははは!どうした?驚いたか野原神之介!あはははははははははははははは!!!」
「て・・・テメェ・・・!」
 くるりと、オラの方に顔を向け嗤う。マスターテリオンは嗤う。無邪気に傲慢に、狂気に満ちた笑いを上げる。・・・コイツは人間じゃあない。人間と認めるわけにはいかない・・・。
「次は・・・本当に当ててやろうか?」
「ッ!!!」
 その一言でオラの中で何かが切れた。昨日の戦いでレムリア・インパクトを使用した様に、意識が急速に拡大し、世界へと広がる。
 そしてオラはそのままデモンベインを押さえつける重力結界を読み取る。そして、そのつなぎ目に魔力を流し込み・・・壊した。これで動けるッ!
「マァァァァァァァァァァァァァァァァァァァスタァァァァァァァァァァァァァァァァァテリオォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!」
 咆哮!そして、デモンベインを起き上がらせマスターテリオンの元へ疾走。
「なっ!?奴の術を解呪(ディスペル)しただと!?」
 アルが驚きの声を上げるが、聞いている暇は無い。全力の一撃でアイツを、マスターテリオンをぶっ飛ばす!!!
「この糞野郎がッ!テメェのそのすかしたツラァ、出来の悪い漫画のキャラみてぇにペラペラにしてやるゾぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
 渾身の魔力を込めた拳をマスターテリオンに振るう。マスターテリオンは、ただ黙って拳を見つめている。そして・・・、
ド ワ オ ッ !!!
 魔力の爆発が、夕暮れの世界を白く焼いた。
「今度こそ・・・やったか!?」
「だから、それフラグって言ってんだろーが!汝は馬鹿か!?」
 光が止んだ後、デモンベインの拳は受け止められていた。マスターテリオンがとめたのか?と思いきや、違う。血のように赤い刃金。デモンベインと同じ刃金の巨人によって受け止められていた。
「・・・何だ・・・!?このロボットは・・・!?」
「ふはははははは!見事だ、野原神之介!」
 マスターテリオンの哄笑が響く。奴は、巨人のもう一つの手の上にいた。
「いやはや、悪かったな。貴公を期待はずれと呼んで。訂正しよう、よくぞ余にこの鬼械神『リベル・レギス』を出させた」
「リベル・・・レギス・・・?」
 これが、マスターテリオンが駆る鬼械神・・・。プレッシャーがひしひしと伝わってくる。
「無事ですか?マスター」
 アルやマスターテリオンではない第三者の声、ふと気づけばマスターテリオンの傍に一人の少女が立っていた。
 古墨を運んだような艶めく美しい黒髪。黒曜石のような瞳。そして、深い闇色をした豪奢なドレス。肌は黒に反比例して白い。この少女は何者だ・・・?
「おっと、紹介がまだだったな。彼女は我が魔導書『ナコト写本』・・・エセルドレータと余は呼んでおるがな」
 こいつも魔導書なのか・・・。見たところアルと同じタイプの魔導書のようだ。
「マスター、そろそろお帰りの時間です」
「ふむ、もうその時間か?いやはや、時が経つのは早いものだな」
 マスターテリオンとナコト写本の精霊・・・エセルドレータが短く会話を交わす。そして、マスターテリオンはオラの方を見て続ける。
「さて、時間なので帰らせてもらうとしよう」
「なっ!?」
 帰る?その言葉に、オラは頭に血が上って思わず叫んでしまう。
「ここまでやっといて帰るだと!?ふざけんじゃねぇ待ちやがれ!!!」
「弱いまま貴公を倒してもつまらぬからな。待ってもいいが、リベル・レギスならデモンベインなど屠るのは赤子の手を捻るより簡単だ。それでも良いのか?」
 言葉と共に、マスターテリオンのオーラが突風のようにオラを威圧する。ビリビリと肌を刺すようなプレッシャーに、オラは只黙ってみているしかなかった。
「次に会う時は、余を失望させてくれるなよ。・・・さらだばー」
「それを言うならさらばだです。マスター」
 短い漫才をした後、マスターテリオンとエセルドレータは、リベル・レギスと共に去っていった。



「・・・」
「・・・」
 マスターテリオンが去った後、オラとアルはデモンベインのコクピットの中で、呆然としていた。肉体が色々と悲鳴を上げているが、そんなのは些細な問題だ。
 ・・・勝てなかった。オラはマスターテリオンに歯が立たなかった。・・・いや、元からそんなラインに立っていなかったんだ。アイツは、オラの前に現れて圧倒的な力を見せ付けて帰って行っただけだ。
「・・・ッ」
 悔しさで涙が溢れてくる。オラはその涙をぬぐわず、アルに問いかける。
「なぁ、アル・・・」
「何だ?我が主よ・・・」
 瞼を閉じれば、あのマスターテリオンの笑みが脳裏によみがえる。あの邪悪さにオラは震える声をつむぐ。
「何だよ・・・アレ・・・?あんなのアリなのかよ・・・?」
「これが、我等の限界だ。妾は魔導書として不完全であり・・・汝は、敵と戦うには余りにも未熟だ」
「・・・それでも、オラなのか?・・・ふざけんな、何でオラなんだよ。オラ以外にも居るだろうが!オラなんかよりも優秀な魔術師が!!!」
 涙を流しながらオラはアルに言う。声を荒げて。
-逃げるのか!?
 頭に響くのは昔のオラの声。・・・オラは逃げ道が欲しいんだろうか?
「それでも、汝なのだ!妾と魔力の波長が合い、邪悪に染まらぬ者・・・他を探している時間も余裕も無い」
 アルが断言する。
-助けを求める人に見てみぬフリをして逃げるのか!?
「・・・だけど、オラはこのザマだ。ぶちギレて突っ込んで・・・あっさりとやられて。・・・そんなオラでもいいってのか?」
 自嘲気味にアルに言う。・・・オラは逃げ道が欲しいんだろうか?・・・それとも・・・、
「ならば、強くなれ!野原神之介!マスターテリオンを放っておけば、今日の様な事が必ずどこかで起こる。いや、今もどこかで泣いている者もいるだろう。誰かが苦痛に涙を流す。誰かが悲痛に血を流す。誰かが邪悪に命を流す。邪悪を知り、それと戦う力を得、それでも汝は見て見ぬフリをするのか?」
-逃げるなんて、許さないゾ!!!
 こういう風に、逃げ道を潰して欲しかったんだろうか。
「そう・・・だよな」
 そう、オラは見てしまったんだ。あの邪悪を。だからこそ、見てみぬフリは出来ない。だからこそ、自分の全てを賭して、マスターテリオンを、ブラックロッジを倒さなきゃならない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
 涙を振り払うようにオラは全力で叫んだ。その咆哮と共に、何かが砕け散ったような気がした。・・・長い間自分を縛っていた鎖のようなモノが。
「強くなる事だ、神之介。誰よりも」
「・・・ああ、そうだよな。・・・なってやるゾ、マスター・オブ・ネクロノミコンに!」
 アルの言葉に、オラは強く頷く。
 ・・・ブラックロッジ、マスターテリオン。絶対にテメェらをゆるさねぇ。そして認めねぇ!あんな邪悪を、あの存在を!
「二度と嗤えねぇようにしてやる・・・マスターテリオン!!!」


第2部 END

第3部『TAKE ME HIGHER ~機神咆哮ッ!ブラックロッジに反撃の狼煙だゾ!~』に続く。 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
原作でもそうだったように、やはりマスターテリオンの圧勝でした(少々ボコられる描写はあったけれど・・・)
まぁ、そんな訳で次回の部は神之介の修行話。そしてこの部からクレしんキャラが続々追加されてくる予定ですので乞うご期待。
それでは~(0w0)ノシ 
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