普通だった少年の憑依&転移転生物語
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ゼロ魔編
027 宝探し(笑)
SIDE 平賀 才人
アルビオンから戻って、マチルダさんとこれからの展望に話し合ってから数日後。俺は周りから向けられる〝好奇〟や〝嫉妬〟の視線に、やや辟易としていた。
(シュヴァリエがそんなに妬ましいのか?)
そうだろうな、とは思う。〝シュヴァリエ〟は爵位から見れば低いし、1代限りの爵位なれど、紛う事なき〝貴族〟なのだ。兄──また例は少ないが姉が、家督を継ぐ事が決まっていて、学院卒業後の開展が定まっていない貴族子弟からしたら、俺の様な存在は面白くないのだろう。そして更に、〝それ〟がそれなりに功績を立てないとなれない、〝シュヴァリエ〟と云うのも拍車を掛けているのだろう。
……因みに、〝好奇〟の目は──キャーキャー騒がれるのはギーシュほど好きでは無いので、それもまた俺の気分を暗鬱とさせる理由の一角を担っている。……騒がれるのは嫌いでは無いが、些か度が過ぎているとは思っている。
「どうかしましたか、サイト?」
時は昼食どき。晴れて〝貴族〟となってマントを纏った俺は、アルヴィーズ食堂──では無く以前と同じく手伝いをしつつ、厨房にてメイド達と昼食を摂っていた。
……因みに、ユーノもメイド達と一緒に昼食を摂って居る。〝好奇〟の視線を向けるのはメイド達も一緒で、ユーノはそんなメイド達に牽制を掛けているようにも見えない事も無い。更には、貴族になった際、コック長のマルトーさんと軽い諍いが有ったのも今では良い思い出だ。
閑話休題。
最近色々な事が有ったので、中年サラリーマン宜しく辟易しながら黄昏ていると、ユーノが心配してくれる。
「……最近、色んな事が有ったからなぁ……」
「……そうですね」
俺の事を真に理解してくれるユーノとの、のんびりとした会話は既に俺の清涼剤となりつつ有った。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE OTHER
才人が貴族になった時、ついで(?)にトリステイン魔法学院に、転入生として入学することになった。……ということは、才人には才人の部屋が与えられ、わざわざルイズと一緒の部屋に寝泊まりする必要が無くなった訳だ。
7回。……それは、才人がルイズに情欲のあまり手を出そうとしてしまった回数で、漸くぐっすり眠れる様になった。隣に寝そべる美少女…色々と役得では有ったが、モーションを掛けて来るのに我慢をしなければならない。……そんな生殺しの状況に、とりあえずは終止符が打たれた。
「……よし、現実逃避終了」
「どうかしたの?」
「何でも無いよ。ルイズ」
才人は最近多くなってきた心地好い現実逃避から目を覚まして、どうしようもない現実へとスポットライトを当てる。
「……で、宝探しだっけ?」
「そうよ? 人数を集めて一攫千金を狙うのよ!」
我関せずと云った感じのタバサを連れ立つキュルケは、大仰に手を広げながら最早固定メンバーとなりつつある才人、ルイズ、ユーノ、ギーシュ、モンモランシーの視線を集め、懐から古ぼけた羊皮紙を取り出し、ハツラツとした口調で才人達5人へと演説する。
SIDE END
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SIDE 平賀 才人
キュルケの提案に、まんまと乗った──乗せられた俺達5人は最後の項目の、≪竜の羽衣≫とやらが有るタルブ村に来ていた。……キュルケの持っていたボロキレの様な──古めかしい宝の地図では〝アタリ〟なぞ有る筈も無く、〝ハズレ〟ばかりを引かされて、元々信じて居ない俺とルイズ…元から〝ハズレ〟なのを知っているだろうユーノ、そして興味ナシのタバサ以外のメンバー──要はギーシュ、モンモランシー、キュルケのモチベーションは駄々下がりになっていた。
余談として、道中に出会ったオーク等の野獣は戦闘組──俺、ギーシュ、タバサの無双によって殲滅してやった。……ギーシュの逞しさにモンモランシーが頬を赤らめていたのはギーシュのみが気付いていない公然の秘密で、そんなモンモランシーを見てキュルケがニヤニヤとした顔でモンモランシーをおちょくっていた。
閑話休題。
「って、シエスタ?」
「ユーノ様にサイトさん? それに皆様も」
何故かタルブ村にシエスタが居た。シエスタにどうしてここ──タルブ村に居るのかを訊いてみれば、どうやらタルブ村はシエスタの故郷らしく、今回はたまたま休暇を取っていて帰郷していたとの事。
「≪竜の羽衣≫ですか? 確かにこのタルブ村に在りますよ」
「ほら! 私の言った通りに在ったじゃないの!」
あまりにキュルケの持っていた地図の宝が〝ハズレ〟ているので、その地図の持ち主であるキュルケを〝ブリーシンガメル(笑)〟等と詰り過ぎたので、漸く〝アタリ〟を引けたキュルケはここぞとばかりにいきり立つ。
「どうどう」
「私は馬かっ!?」
「人間だろ? 一体何を言ってるんだ? 頭大丈夫か? バレッタさん──腕の良い水メイジでも紹介しようか?」
「きぃ~~~!! 貴方、貴族になってからキャラクター変わり過ぎよ!」
「平民が貴族をおちょくったら首斬りモンだからな。……まぁ、確かに少し弄り過ぎたよ。ゴメン」
ここで頭の悪い貴族子弟なら〝親の〟爵位を持ち出すが…そこら辺、キュルケはよく教育された貴族なのだろう。
閑話休題。
「シエスタ、≪竜の羽衣≫が在る場所へと案内してくれませんか?」
「はいっ、ユーノ様」
キュルケ弄りはここまでにしておき、タルブ村に詳しい案内人に──シエスタに≪竜の羽衣≫への案内を頼む事になった。……シエスタ曰く、≪竜の羽衣≫はシエスタの祖父の遺品でタルブ村からしたら、宝物扱いしている物らしい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
タルブ村に着いたのが割かし遅い時間帯だったので、タルブ村の村長の家に泊まらせて貰った俺達はシエスタと仲が良さ気にしていたのもあって、それなりに歓待を受けた。
そして、明くる日。
(鳥居に寺院っぽい建物…?)
シエスタの案内で鳥居っぽいオブジェをくぐり、どこからどう見ても祠にしか見えない建物の前に辿り着いた。そこで俺は、気になっていたこと──ハルケギニアでは有り得る筈の無い意匠の原因をシエスタに訊ねる。
「シエスタ、1ついいか?」
「はい、何ですか?」
「さっきくぐったオブジェと、この建物を造ったのは誰か判る?」
「あ、それでしたら私の曾祖父ちゃんです。もう亡くなってますけど、ササキ・タケオと云う名前でして──」
(ビンゴか)
どうやらタルブ村には俺と同じ境遇の人物が居たらしい。……俺は自分の意思でハルケギニアに入ったが──
―お願いします。私を──私を犯してもいいですから、どうか私を殺して下さい―
―ありがとう―
「サイト、酷い顔ですよ?」
ハルケギニアに入った直後に〝色々〟有った事を思い出してブルーな気分に浸っているとユーノが俺の事に気付いて心配してくれる。
「〝大丈夫だ〟…って言っても、信じちゃくれないか」
周り、各々を見渡すと全員──シエスタと〝こう云う事〟に興味が無さそうなタバサを含めた全員が首を縦に振っていた。
「まぁ、言わないがな」
俺の空気を読まない言葉に全員ズッコケた。当たり前の様に、四方八方からブーイングが飛んで来る。……が、よもやブルーになっていた理由を言う訳にはいかないので、スルーさせて貰う事にした。
(あれ? ……空気を読んで空気を読まない言葉…これ如何に)
「サイトの昔の話、興味有ったのに……」
「語れる時が来たら語ろう。……どっちにしろ、良い話じゃないしな。……それより、今は≪竜の羽衣≫の話だっただろう?」
「そういえば、そうだったわね。シエスタ、お願いね」
「判りました、ミス・ヴァリエール。只今、扉を開けますね」
シエスタはそう言うと、〝固定化〟の魔法が掛かっているのか、シエスタの話では60年近くが経過しているだろうに、未だに頑丈そうな扉を開ける。
「これは……」
扉が開けられ、寺院の中に陽光が射し込む。光が有れば中に在る物も顕になる。……俺は〝それ〟を小学生の頃に社会科見学として行った博物館で──それも、写真でしか見たことが無い。
シエスタから聞いた話では≪竜の羽衣≫は、〝それ〟を纏った者に空を飛べる能力授けるそうだ。……その説明に俺は合点がいった。
「〝零戦〟だと……!?」
尤も、この〝零戦〟は燃料切れか何かでもう飛ばせそうにないらしい。……が、ササキ・タケオ氏は大金を叩いてメイジに〝固定化〟の魔法を掛けて貰ってまで未だ当時の状態を維持してあるらしいので、燃料さえ積めばまだ飛べる様だ。
「〝ゼロセン〟? サイトはこれを知っているのかい?」
(あ、しくった)
いつの間にやら漏れていた呟きを聞かれていた様で、ギーシュが筆頭として──訳知りで在ろうユーノ以外は首を傾げながら俺に説明を求める様な視線を投げ掛けてくる。
……しくった自分に呪詛を吐きながら、言い訳の為に頭を回すのだった。
SIDE END
後書き
明日もう一話投稿します。
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