FAIRY TAIL ある神使い達の伝説
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第一話***神と少年
X786 フィオーレ地方 ヒスラ山
陽が落ち、蒼かった空が茜色になった。
走り走ってーーーー足が棒の様になってもまだ走った少年は足を止め、山道をそれ、 "山" に入る。
数十メートル入ったところで足を止め、長い夜空色の髪を払い、着ていた薄い綿のシャツとズボンを限界まで引き寄せ、丸くなりーーーー
そして、呟いた。
「寒い……」
少年はカタカタと震え目尻から涙を流す。
それは寒いだろう、少年は見た目10歳にも満たない子供であり、また、今は冬、山中。
炎の魔法が使える魔導士でもないのである。
ちょうど昨日雨が降ったばかりで、火も起こせない。
少年自身、火を起こす技術はないのだが。
そのまま、丸くなって数時間ーーーー
少年は、死にかけていた。
もう、手足の感覚はなく、目もよく見えない。
(オレ……もう死ぬのかな……)
(悪くないかな……父さんも母さんも殺されたし……同じ場所に行って……)
(心残りは……あの奴隷商捕まえられなかった事かなぁ……)
(姉さんだって捕まったし……どうせ奴隷なんて長く生きれないし……)
(じゃあ、天国で父さん、母さん、姉さん、オレで平和に……暮らし……)
『何を言っておる、クウヤ・フォーグル!』
突然知らない男の声が響きーーーー名を呼ばれたのもあって、少年ーーーークウヤはビクッと震えた。
『何故そこでそういう妄想を繰り広げるのだ!
普通なら、ーーーー何で父さん、母さんは殺された?姉さんは捕まった?……決まっている、オレが無力だからだ……とか、力が欲しい……とか思うだろう!
なんだ!天国で父さん母さん姉さんと幸せに暮らす、とか!ふざけてるのか!』
長々とわけのわからない説教をされる。
クウヤは訳のわからないまま言い返した。
何故か、体は暖まり、生気が戻っている。
「い……いや、だって、死ぬし、何故か元気になったけど、あの時あのままなら、オレ、十中八九死んでたし……」
とりあえず反論する。
『その様な事、己がわざわざ知るか!
己はお前が村に居た時から狙っていたのだから勝手に死なぬで欲しいな……全く』
「いや、死なぬで欲しいと言われても……て、狙っていたとは?」
『フッ、お主ーーーー神は信じるか?』
疑問にわけのわからない疑問で返された。
「はあ……一応」
『実はな……』
「私も神だ」
ポン、と。
クウヤの目の前に蒼い髪の男性が出現した。
「ひ……!?」
クウヤは後ずさる。
目を見開き、先ほどまでとは別の意味でビクビク震えた。
「その様に怯えるな」
男性が言うと、クウヤは叫んだ。
「か……神、って、まさか、イタイ人!?」
男性は転ける。
「んなわけ、あるかーっ!」
「だって、神がオレなんかの前に現れるわけない……!神々しいオーラとかもないし、力も感じないし」
「あのなぁ、神は、沢山居る。神は、崇められる事により、力をつけるのだ。しかし、沢山いることにより、己のような<まいなー>な神は少しのモノにしか崇められず、力は失い、存在も危ない事となった……」
クウヤは、もしここで口を挟んだら怒鳴られるだろうな、と感じ、黙って聞く。
脳内では、(まいなーって!まいなーって!神様がーーーー!?)など考えている。
「そして、我々存在の危うき神は考えたのだ……自分と同じ力を持つ人間に憑き、その力をわけてもらおう、と」
「へーっ……っ!?まさか……」
「そのまさかだ!お前は気の魔法を使う!我は空神より、魔力融合は<ばっちぐう>!また、魔力容量は問題なし、しつかり融合出来る!術者の意思!する気満々だから大丈夫だ!
……そして、受け入れる者の意思!
……クウヤ、お主、 "力が欲しいか" 」
クウヤは<ばっちぐう>に突っ込むのも忘れ、その言葉にーーーーその単語に囚われた。
「力……!」
(力があれば……姉さんを救えるのかなぁ……姉さん、強いし……もしかしたら、良いご主人に買われるかもだし……上手く逃げるかもだし……また、会えるかも……それに……)
「まだ生きられるのに死んだら、父さんも母さんも怒るよな」
クウヤは微笑むと、真っ直ぐ前を向いた。
「……欲しいです……!」
「そうか、ならば、授けよう。
お主は神に使え、神を使うもの…… "神使い" となるのだ……!」
男性は消え、代わりに片方の蒼い珠のイヤリングが残った。
『我は空神スカイ……!
クウヤ、そのイヤリングを付けろ。それが我とお主を繋ぐ絆に、我をお主の内に封じ込める鍵になる。
残りの事はゆくゆく話す。
それでは、よろしくな』
「はい……よろしくお願いします」
クウヤの表情は生気と希望に満ち溢れ、左耳には蒼いイヤリングが付いていた。
数日後、ヒスラ山から一人の少年が下りてきた。
その少年の耳には蒼いイヤリングが付いていたーーーー
後書き
プロローグで走っていた少年=クウヤです。
ここまで読んでくださった方々に多大な感謝を込めて……
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