戦国異伝
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第百七十五話 信長着陣その七
「わしも戦おう」
「槍を手に取られて」
「そうされますか」
「ははは、面白いのう」
元親は笑って親貞と親泰に言った。
「これだけの戦が出来るとはな」
「武田との戦に続いて」
「上杉ともですな」
「そうじゃ、殿と共にいるとな」
そうした相手と戦が出来ることがというのだ。
「嬉しいわ」
「だからですか」
「この戦もですな」
「楽しく、そして」
「殿にお仕えしていることが」
「武士の冥利に尽きるわ」
まさに、というのだ。
「天下を休んじる政も出来るしな」
「政もですな」
「それも出来るからこそ」
「よい、ではここは凌ぎじゃ」
そうしてだというのだ。
「殿を待つぞ」
「その殿はですな」
「間もなくですな」
「必ず来られる、すぐにじゃ」
元親はここで後ろを見た、見れば。
鳥達の動きが騒がしい、それを見て言うのだった。
「もうすぐじゃぞ」
「おお、鳥がですな」
「動き回っていますな」
親貞と親泰もその鳥達の動きを見た、見ればだ。
それを見てだ、彼等もわかったのだった。
「ではですな」
「間もなくですな」
「あと少しだけ辛抱すればな」
さすれば、というのだ。
「殿が来られてな」
「我等は助かる」
「そうなりますか」
「だから踏ん張るのじゃ」
「はい、わかり申した」
「それでは」
二人も応えた、そしてだった。
長宗我部家の者達も今は必死に上杉の軍勢と戦った。そうしてそのまさに奔流の如き攻撃を何とか凌いでだった。
遂にだった、川の向こう岸から。
喚声が上がった、地響きの様なそれが。
そしてだった、そこからこの声があがったのだった。
「信長公ご到着!」
「殿が来られたぞ!」
「おお、見よ!」
その向こう岸を見てだ、福島が叫んだ。
「援軍じゃ!」
「おお、多いな!」
「十万はおるぞ!」
福島に続いてだ、浅野と池田光政も声をあげた。
「そしてあの馬印!」
「間違いない!」
「殿じゃ!」
「殿が来られたぞ!」
織田家の誰もがだ、その大軍と信長の馬印を見て言った。
「やはり殿は来てくれたわ!」
「我等を助けに来てくれたぞ!」
「これで我等は助かった!」
「殿と一緒に戦えるぞ!」
「戦はこれからじゃ!」
「皆の者、待たせた!」
その向こう岸にだ、馬に乗ってだった。
一騎の男が出て来た。その青いマントを思わせる裏地が赤の陣羽織にだった。
甲冑を思わせる全身を包んだ男が出て来た、その者こそがだった。
信長だ、信長は彼等の前に出て来てそして彼から見て向こう岸の者達に対して言ったのだった。
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