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Fate/EXTRA〜もう一人のアーサー王〜

作者:Nelfe
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運命は優しく…残酷だ

 
前書き

さて、夏休みが今日で終わりますが皆さんどうお過ごしですか?
こちらは毎日毎日学校という地獄にいました。
夏休みなんてなかった…。 

 

翌日。俺はゆっくりと目を開けた。一番最初に見たのは俺の部屋の天井。起きたばかりのせいで若干ボヤけて見えるが目を何回か擦り、視界を元通りにする。

体を起こし、はぁ…と溜め息を吐く。

(やっと眠れた…)

昨晩はなかなか寝付けず大変だった。昨晩、いつも寝る場所が違うせいなのかそれともセイバーが裸で部屋を出歩くからなのか…。分からないがとにかく寝るのに苦労したことは間違いない。

今でも眠気の波がどうしようもなく押し寄せてきて少しでも気を抜くと眠りに落ちてしまいそうになる。俺はベッドから降り、眠気を落とすべく洗面所へと向かう。

いつもの朝の流れで蛇口を捻り、水を出す。両手で器を作り、水を貯めて顔にかける。それを三回ぐらい繰り返すが眠気は一向に落ちない。なんとなく俺は鏡を見た。案の定、眠たそうな顔をしている俺の顔が自分を見つめ返していた。

「眠っ…」

そんな事を言いながら側に置いてあったタオルに手をかける。ゴシゴシと顔の水滴をタオルで吸わせる。これで眠気も一緒にとるために少し強めで擦るが一向にその効果は発揮されない。

「お、目を覚ましたようだなマスター」

セイバーの声が聞こえてきた。どうやら彼女も起きたらしい。案外起きるの早いんだなと思いながらタオルから顔を離し、声が聞こえてきた方向へと顔を向ける。

「ッ!!?」

うっかりしていた、と自らの行いを後悔した。部屋の設置上、風呂と洗面所は共同。一応、風呂場には仕切りの為のカーテンがあるがそんなもの気休めにしかならない。カーテンを開けてしまえば丸見え必須。

つまり何が言いたいかというと、

ーーセイバーが風呂上りの状態で俺の傍に現れた。

「なんだァ?まるで人を化け物のように見る反応は」

やや不機嫌に言うセイバー。確かにこちらの反応としても申し訳なかった。しかし、こちらからも反論させてもらおう。朝シャン上がりの女の子が素っ裸で傍に立たつなんて誰が予想する!いやできない!俺には想像できない!そんな事を想像出来るのは相当の変態だ!だから今度ばかりは言わせてもらう。いい加減恥ずかしがれ!と。




「すみませんでした」



俺の体は俺の思考を裏切った。腰は直角に曲がり、頭も精一杯下げていた。ああ、俺って本当バカだ。なぜ素直に言えない。いつか言わなくちゃいけない事だろ。自分のチキンさにホトホト呆れる。

「まぁ良い」

セイバーは少し不満気に言いながらいつもの自分の私服を身に纏う。着替え終わるまで俺はずっと壁と睨めっこしてセイバーをなるべく見ないようにしていた。

「一つ……言っても良いかマスター」


「ん?なに?」

着替えをしながらセイバーは俺に話しかけた。しかしセイバーの声には少し戸惑ったような感じが窺えた。彼女の性格から考えて、そんな躊躇するような子ではないと思うが…。


「せ、セイバーのクラスで現界した。……名は明かせぬが……マスターの為に尽力を尽くす覚悟はある。その……」

「……?」

セイバーが何かをした動作が伝わってきた。少し戸惑いながら後ろを振り向くとそこには右手が差し出されていた。握手を求めているのか?とセイバーの行為に疑問を持った。彼女は俺の事を信用していなかった気がするが、これは一体どういう心境の変化で?

「セイバー、これは?」

「すすす、少しだけ!少しだけお前を信用してやる!だから……自己紹介だッ!!」

よっぽど恥ずかしいのか、それとも照れてるのか俺から視線を逸らして握手を求めるセイバー。その頬は仄かに赤い。

正直、嬉しいという気持ちもあるが驚きの方が大きかった。セイバーは俺の事を阿呆だのと言って罵っていた気がするのだがそれは気のせいだろうか…。

「どうして急に?」

「……!!」

一番の疑問を投げつけた。その時、セイバーの目が一瞬見開かれ、顔が急に赤く火照り始めた。その顔には動揺の色が窺える。少しの沈黙の後、セイバーはゆっくりと口を開き始めた。


「い、今まで言おうとしてたのだが……うまく言う機会がなくてだな…その…今になってしまった…」

そこでセイバーは口籠ってしまった。何というか、セイバーには悪いが小さい女の子と話をしてるみたいな感じだった。なかなか素直になれなくて、そのせいで自分が言いたい事が最後まで言えないまま。

彼女の性格はそういうものだと思う。だけど、少しでもセイバーの事が知れて良かった。これからの戦闘ではお互いの信頼が重要な鍵となる。些細な事でも良いからもっとセイバーの事を知っておきたい。


俺はセイバーの差し出す手を握り、答える。

「よろしくなセイバー。情けないマスターだけど足を引っ張らないよう頑張るよ」

すると、その返事が嬉しかったのかセイバーはパーと笑みを浮かべるが左右に顔を振る。そして、いつものしっかりとした表情をしてセイバーは言う。


「確かに情けないマスターだ。し…仕方ない、オレが守ってやる!」

若干セイバーの言葉にぎこちなさがあったが、こうして、俺達には少しだけだが確かな信頼が生まれた。


ピピッ

軽快な音が部屋に鳴り響いた。どうやら端末機に連絡が着たようだ。複雑な心境だった。これから殺すか殺されるかの重要な発表だと言うのに妙に落ち着いている。ポケットから端末機を取り出し、確認する。画面にはこう書かれていた。

『二階の掲示板にて一回戦の相手を発表する』

二階の掲示板…と言うことはすぐそこで発表されるということか。

端末機をポケットに突っ込み、深呼吸をする。この先どんな事が起きても対応できるようにしなくてはと気持ちを入れ替える。

扉を開け、掲示板へと向かう。



目的地に着くと、掲示板には俺の名前と相手の名前が書かれていた。

『間桐 慎二(まとう しんじ)』

間桐 慎二。一体どんな性格なんだ。慎重なのか、いい加減なのか。又操っているサーヴァントのクラスは?そして真名は?情報が少なすぎる。相手がそう簡単に現れるとも限らないし、第一一体誰が間桐 慎二なのかも分からない。

どうするか考えていた時だった。

「もしかして君、僕の対戦者?」

後ろから聞き覚えのない声を掛けられた。そして、その『対戦者?』というワードを使うということは、まさか…。そんな思考をしながら振り向いた。

そこには海藻類を思わせるような青い髪をした男が立っていた。俺と歳は変わらない位か。服装は俺と同じ制服に改造を加えたもの。チャラいなぁ…というのが印象だった。もしかして、この男が俺の対戦相手か…。

「ということは君も俺の対戦相手?」

「バカだね君!ここにいるならそう考えるしかないだろ。もしかして天然君?ああ、これなら一回戦は余裕かな?」

この間桐 慎二という人物はこういう性格らしい。若干カチンとくる所はあるが、この性格なら躊躇せず戦える。

「ま、精々僕を楽しませるぐらいの努力はしてよ」

そう言って、慎二はその場から離れて行った。

『ああ言う人間に限っては口だけというのが多い。気にする事はないぞマスター』

慎二が階段を降りていくとセイバーが俺に声をかけた。セイバーの優しさに口元が綻ぶ。

『しかし、あの小僧の言っている事は気に食わないなァ。次に会った時が楽しみだ』

霊体化しててセイバーの表情は分からないが、決して良いものではないのがすぐに分かった。マスターである俺ですらセイバーから放たれる負のオーラが伝わってくる。

「と、とりあえず飯でも食うか!腹が減っては戦はできぬって言うしな!」

早く話題を変えなくてはマズイことになると察した俺はセイバーに食堂で何か食べようという案を出した。

『む、飯か?腹は減ってないが、確かに朝飯を摂っておいたことに越した事はないな』

「そうだ!だから、朝はガッツリ食べて今日一日を乗り越えようぜ!」

『了解だマスター。ではそうと決まれば、すぐに食堂へと行かなくてはな!』

いつものセイバーに戻り、明るい口調になった。少しだが安心した。あまり不機嫌でいられると俺からも絡みづらいし、雰囲気が悪くなる。フォローに回るのも大変だからあまりこういうことは起こって欲しくない。

『行くぞマスター!』

そう言いながら、実体化し、階段付近へと走っていくセイバー。まるで小さな子供のようにはしゃいでいる。

「おう!」

俺もそんな子供っぽいセイバーに笑みを零しながら、食堂へと向かって行く。


三十分後。はぁ…と俺は溜め息を吐いた。なぜこんなにげんなりしているのかと言うと、原因は簡単。セイバーのせいだ。飯の時だった。騎士と言えど、人が食う量はそんなに多いもんじゃない。余程食うと言ったらよっぽど腹を空かせているのか、元々大食いの人ぐらいだろう。

しかし、セイバーはそれさえも凌駕していた。俺が何食べる?と訊けばセイバーはこれ全部とメニュー表全てを指で差して全部持ってこいだ。金銭的な都合で全部は無理だったが、相当の量は注文した。だがそれでセイバーは満足する訳でもなく挙句の果てにはお代わりを注文するという事態が発生した。

これにはさすがの俺も許容範囲外。もう止めて、破産する!と泣きつく俺だったがセイバーはそんな事関係ないと言わんばかりにこう言ったのだ。

『全然ガッツリではないではないか!もっと食うぞ!』

これには顔面蒼白の俺。アリーナでお金を稼いでからまた食わせてやると言ったところ、セイバーは簡単に了承した。

そして、現在に至る。

まさかセイバーに大食いキャラがあるとは思わなかった。次の飯の際には気を付けなくては…。これでは飯を食う度に破産するんじゃたまったもんじゃない。これからは節約だな。自身の中でそう決意した時だった。


「すみません、少しよろしいですか?」

すると後ろから声が聞こえてきた。立ち止まり、後ろを振り返ってみるとそこには金髪の男子生徒が立っていた。制服は俺が着ている物とは別でオレンジ色だ。見た目からして外人っぽいが、日本語は喋れるようだ。

「……」

そして、その男子生徒の後ろ。そこには見覚えのある顔が…。

「セイ…バー…?」

そこにはセイバーと瓜二つの容姿をした女の人がいた。しかし、すぐにその人は俺の知ってるセイバーとは違う。服装もそうだが、決定的になったのが雰囲気だ。俺の知ってるセイバーは男勝りで表情が豊かな性格の女の子だが、向こうに立っているセイバーは人形のように無表情で物静かな雰囲気だ。

「あの、なにーーー」

俺が男子生徒に声を掛けていた時だった。俺の後ろからスッと何か通り抜ける。一体何が通り抜けたかは分からなかったが、向こうのセイバーは剣を構える素振りを見せた。

その瞬間、


ドォォォォォォン!!!

突然突風が吹き荒れた。あまりにも凄まじい風に目を閉じる。一体何が起こってるんだ、と思いながら事態を把握できないでいた。突風は最初だけで少しずつ威力は収まっていく。その代わりにギリギリと金属同士が擦れ合う音が向こうから聞こえてきた。俺はゆっくりと瞼を開けると、衝撃の光景に目を疑った。

「セイバー!?」

鎧を纏ったセイバーが相手のセイバーと刃を交えていた。

彼女の性格から考えるに初めて会った相手を斬りにかかるような性格ではないはずなのだが…。俺はそう思いながら急いでセイバーを止めに行こうとする。

その時だった。

「ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

足が止まった。セイバーが人間とも思えない叫び声に怯んでしまったのだ。彼女は何て言ってる?声に集中し、もう一度彼女の叫び声を聞く。

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


ああ、そうか。彼女が言ってる言葉がなんとか理解できた。彼女はこう叫んでいたのだ。








「アァァァァァァァァァサァァァァァァァァァ!!!」




 
 

 
後書き

盛り上がってまいりました!と言いたい所ですが精神的にキツイので更新はまた今度ということで。
それでは! 
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