風と雲の継承者
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04 追放―たびのはじまり―
前書き
皆のトラウマ回。
イセリアの森
森に入った途端、ノイシュは怖がって逃げてしまった。
先に進まないと家には帰れない。
俺達は先に進むが、ジー二アスが途中帰り道とは別の方向へ歩き出す。
どうしても神託があった事を伝えたい人がいるのだとか。
俺とロイドはついていくとそこには巨大な施設があった。
そこにいた老婆にジー二アスは駆け寄る。
「マーブルさん」
「ジー二アス!そちらはお友達?」
「ああ、ロイドだよ」
「風……」
「よろしくね」
老婆、マーブルは微笑む。
ジー二アスは早速神託があった事を伝えた。
神託の話が終わるとロイドは何かに気付く。
マーブルの手に埋め込まれたもの、エクスフィアは直接肌に触れると毒だと言う。
なので要の紋と言うのをつけて毒が来ないようにするのだとか。
マーブルが言うにはここに連れてこられた時に埋め込まれたそうだ。
ジー二アスは何とかならないのとロイドに言って、要の紋はロイドの父親が作れるらしいから頼んでみる事になった。
話が終わると同時に声が聞こえた。
ディザイアンが来るから逃げろとマーブルは言う。
ロイドは渋る。
俺はロイドの肩に手を置き、止める。そうしなければいけない気がした。
ジー二アスもこのままここにいたら村にもマーブルさんにも迷惑をかけると説得し、近くの茂みに隠れる。
するとディザイアンとかいう連中がマーブルを連れて行ってしまった。
どうするか話して、高台に上ってマーブルの様子を見ようという事になった。
高台に上る際、ロイドはひょいひょい飛んでいくけどさすがにジー二アスは無理なので俺が抱えて飛んだ。
高台の上から覗くとマーブルが鞭で攻撃されてた。
ディザイアンというやつらはあんな事してるのか?
何か嫌のものがこみ上げてくる。
ロイド達と話して、俺とジー二アスが魔法で攻撃。ロイドが囮という事になった。
俺とジー二アスはファイアーボールを打ち、ロイドは顔を見せないように、かつ目立ちながら逃げる。
俺とジー二アスは魔法を撃ち終えた後高台からおりた所でジー二アスはこけてしまった。
「……!」
すぐさまジー二アスに駆け寄るも、相手に気付かれてしまった。
ロイドが敵と戦い始めた。
俺はジー二アスを抱えて安全な場所に運ぶ。
ロイドは大丈夫って信じている。
その後、崖下で会い、ジー二アスはロイドに謝った。
顔を見られたやつは倒したから大丈夫とロイドは言うが嫌な予感がする。
本当に大丈夫だったのだろうか……?
それから解散になったものの、なんだか胸騒ぎがする。
住んでる洞窟の前
『主……どこに行ってたのですか……』
「……」
俺の事主って呼ぶときシヴァは大抵の場合怒ってる。
『主にもプライバシーがあります。だから私達は普段幻獣界にいます。ですが何も言わずにどこかに行くのはやめてください!』
幻獣界、ずっと前、俺の生まれる前に召喚獣達が作り出した空間、小さな世界。
召喚獣達は普段そこで住んでいる。
今日はおそらく幻獣界から遊びに来たムンバ達は俺がいなくなってる事に気付いて騒ぎになったと思われる。
俺から呼ばない限り、召喚獣達は俺の位置がわからないから……
話してなかった事に関しては、うっかり忘れていた。
『心配したのですよ……貴方がいなくなった事に気付いたもの達は大泣きしてしまい、今だに泣き続けています』
心配させてしまったようだ。
シヴァは青い光球の状態なのに少し泣いてるような雰囲気だ。
「悪かった……」
『幻獣界に来て皆に謝ってください。皆待っています』
「わかった」
シヴァは幻獣界の門を開ける。
召喚獣達に泣きつかれたり、殺気を当てられたり、とにかく大変だった。
結局終わった頃には完全に日が沈み、真夜中になっていた。
洞窟に戻ると手紙が置いてあった。
コレットからのようだ。
幻獣界に行ってる間に来てたらしい。
読んで見ると、明日の出発の時間が書かれてあった。
村に見送りに行こう。
次の日
昨日から胸騒ぎがするがコレットの見送りに行く。
召喚獣達に森の外に出る事を伝え、村に向かった。
だが村に着くとロイドの姿が見えなかった。
そしてコレット達は出発した。
「ロイドの奴何やってるんだ!」
ジー二アスが怒り始め、俺はジー二アスとロイドの所へ向かった。
ロイドの家に行き、ロイドにコレットはもう行ってしまったとジー二アスが伝える。
どうやらコレットはロイドに嘘の時間を教えたらしい。
急いで村に戻ると、コレットのおばあさんがロイドを呼んでるとの事でコレットの家に行くと、ロイド宛の手紙が残されていた。
まるで遺書のような内容だとロイドが言う。
コレットの義理の父がその事で隠してた事を話し始めようとした時、悲鳴が聞こえた。
俺達は急いで外に出ると、ディザイアンが村を燃やしていた。
また、マーブルが攻撃されてた時みたいに何かがこみ上げてくる。
気付いたときには剣を抜いて敵を斬り裂いてた。
ロイド達も許さねぇ!と叫び攻撃する。
家を燃やしていた奴らを倒して村の入り口に向かうと村長達がディザイアンに囲まれていた。
ロイド・アーヴィング!出て来い!と他の兵士よりやや上の立場らしい杖を持った人物が叫んでいる。
俺達は村長達とそいつの間に出る。
「また、村を襲いに来たのか!いいかげんにしろ!」
「何を言ってるんだ?」
ロイドが叫ぶと相手はそんな返答してくる。
「たわ言だ、放っておけ」
そこで腕にごつい金属をつけたボスらしき男が出てきた。
「聞け、劣悪種ども。我が名はフォシテス。ディザイアンが五聖刃の一人。優良種たるハーフエルフとして愚劣な人間共を培養するファームの主」
なんだこいつは、嫌な感じしかしない。
「……ハーフエルフ」
ジー二アスが少し驚いている。
「ロイドよ!貴様は人でありながら不可侵契約を破る罪を犯した。よって貴様とこの村に制裁を加える!」
「契約違反はそっちも同じだろ!神子の命を狙ったくせに!」
ジー二アスが反論する。
「我々が、神子を?ふはははは!なるほど。奴らが神子を狙っているのか!」
最初に叫んでた杖の人物が笑い始める。
「奴ら?コレットを襲った連中とお前達は違うって言うのか?」
「劣悪種に語る事は何もない。それよりも貴様だ、ロイド。貴様が培養体F192に接触し我らの同志を消滅させた事はすでに照会済みなのだからな」
ロイドが聞くが敵は話すつもりはないようだ。
それに敵には昨日の事がばれていたようだ。嫌な予感や胸騒ぎはこれだったのだろうか?
「なんという事だ!牧場には関わるなとあれほど念を押したのに!」
村長がロイドに怒鳴り散らす。
「……ごめん」
ロイドがうつむき村長に謝る。
すると相手はお構いなしに叫ぶ。
「貴様の罪に相応しい相手を用意した!」
敵の後ろから緑色の化け物が出てきた。
それを見た瞬間、どくんと鼓動がした。
なんだ?あの化け物、見てると苦しくなる。
「さあ、引き裂かれるがいい!」
敵は化け物に命令する。
化け物はロイドに向かって腕を振る。ロイドは何とか防御する。
「ロイド、ボクも協力する!」
ジー二アスが剣玉を持ち戦闘態勢になる。
「……」
俺も剣を抜き、一歩前に出る。
戦闘は始まった。
俺は敵の横に行き斬りつける。
『……て……』
なにか、聞こえた?
そのまま戦闘を続けていると……
『とめ……て……』
『わ……た……』
聞こえる。声が……!
『わた……し……と……めて』
「……!」
これは、この声は!
気付いた時、ロイドがトドメをさそうとしていた。
「……ダメだ、ロイド!」
初めて叫んだ。
止めたかった、だが止まらない、ロイドの剣は貫いてしまった。
それは倒れる。
「フォシテス様!やはりあの小僧、エクスフィアを装備しています!」
「……やはり我々が探していたエンジェルス計画のものかっ!それを寄こせ!」
敵が何か言っている。
「嫌だ!これはお前らに殺された母さんの形見だ!」
「何を言うか!お前の母は……」
そういいかけた時だった。
倒れていたそれは起き上がり敵を捕まえる。
“逃げな……さい……ジー二アス、ロイド、風……”
緑色の異形になってしまった彼女の声が響き渡る。
「な、何、今の声……。ま……まさかマーブルさん……?」
ジー二アスが震えた声で言う。
「……そんな馬鹿な!」
ロイドが愕然とした顔をする。
「事実だ……」
あれは間違いなくマーブルだ。
「風!」
ロイドの表情は絶望したものに変わってゆく。
“ウ……ウゥ……グウゥ……離れて……早く……っ!”
彼女の苦しそうな声。
“ジー二アス……。新しい孫ができたみたいで嬉しかったわ。さようなら……”
そう言って、彼女、マーブルは自爆した。
彼女に埋め込まれていたエクスフィアが転がってジー二アスの所に来る。
ジー二アスはがくっと力が抜けたように膝が折れてしゃがみこみエクスフィアを拾う。
「……ロイドよ。その左腕のエクスフィアがある限りお前は我々に狙われる……覚えて置け!」
しぶとく生き残っていた敵はそう言った後、逃げていく。
ジー二アスは両手でエクスフィアを持って泣きながら叫ぶ。
「マ、マーブルさん……!マーブルさんっ!!うわぁぁぁぁぁ!」
俺は呆然とジー二アスの声を聞きながらマーブルが自爆した場所に歩いていく。
そして自爆した場所に立ち止まる。
「……もし」
勝手に口が動く。
小さく呟くような声が出る。
「……あの子等が危機に陥った時」
頭が真っ白で何も考えられない。
「……助けられる力があるなら」
自分が何を話しているか分からない。
「……お前は助けるか?」
少しした後に答えは返ってくる。
『ええ、私にあの子達を助ける力があるのなら……どうか、私の――を使ってください』
声の主は自分がそう答えたら何が起きるか分かっているようだ。
俺は手のひらを上に向けて出す。
黒い光が集まってくる。きらきらと輝く暖かな黒の光は手の上であるものになる。
「……お前の想い確かに受け取った」
形を成したそれを握る。
それは、想いと同じように優しい暖かさを残していた。
俺は我に返り村の門に寄りかかる。
そしてジー二アスがようやく落ち着くと、村の人達はロイドを責めた。
ロイドはそれで許されるとは思ってないけど謝る。
村長はロイドにお前がいる限り村に平和はないと言う。
そこでジー二アスがロイドの前に出て庇う。
ロイドは悪くないと、マーブルさんを助けようとしただけだと。
村長は牧場に関わる事じたい禁忌だと言う。
それでは牧場の人間は死んだっていいの?と聞くと村人はどうせ牧場の人間なんてあそこで朽ち果てる運命じゃないのと叫ぶ。
よけいな事をしなければ死ぬのはそいつだけですんだと村長は言う。
また、なにかがこみ上げてくる。
するとジー二アスが苦しそうに呟く。
「……人間なんて、汚い」
なぜかその言葉は、重く聞こえた。
言葉を重いと思ったのは初めてだ。
こみ上げてくるものと共鳴してるかのように重く響く。
その後、ロイドとジー二アスは村を追放され、村人達の罵声をあびた。
複雑な気持ちがする。感情がぐちゃぐちゃに混ざり合ったみたいな感じだ。
村人が去った後、コレットのおばあさんが償いの気持ちがあるのなら、神子を助けてくれと言った。
世界再生すれば村の人の気持ちも変わるだろうと……
ロイドはなくなった人達のためにも必ずコレットを守り抜くと誓ったようだ。
ジー二アスは自分のせいでこうなってしまったのだからボクもついてくと言った。
そしてマーブルの形見であるエクスフィアはジー二アスが装備する事になり、二人はこちらに歩いてくる。
「ごめんな、風。こんな事に巻き込んじまって」
「ボクからもごめん」
「……」
「怒ってるか?」
無言の俺にロイドは苦しそうな顔をする。
俺は首を振る。そして……
「俺もついてく」
「え?」
「旅についてく」
「風!」
ジー二アスが嬉しそうな声をだす。
「お、お前まで来ることないんだぞ!?」
「心配だ」
「いいのかよ、本当に……」
召喚獣達の事を言っているのだろう。
大丈夫だ、多分。
「ああ」
「そっか、ありがとな!風!」
「……」
ロイドが笑顔になった。
それ見たら複雑な気持ちとこみ上げてたものが消えうせた。
なんだったのだろう?と思うが消えたのなら、もう気にしない。
ノイシュが村の入り口に来ていた。
コレットの義理の父親とおばあさんに見送られ、俺達は村からでた。
少し進むとノイシュがロイドの落とした荷物を加えてきて、父親の手紙が入っていた事に気付いたロイドが手紙を読んでる間に俺は召喚獣達と連絡を取ることにした。
「来い、ベイビーシヴァ」
呼ぶと目の前に水色に光の球が出てくる。
そしてそれは実体化してイヴになる。
イヴはいつでも実体化できるようにしてくれと頼まれて作った首飾りを渡している。
召喚獣が実体化しようと思っても単体では無理だ。
俺が実体化したいんだろうなと気付いた時にマナをあげてる。
気付けない時もあるが、その時は召喚獣のほうから頼んでくる。
イヴはよく実体化したがる。
あんたにいちいち言うのがめんどくさいのよ!と言って自分の意思で実体化できるようになるアイテムが欲しいと言い始めた。
クーシーなどに協力してもらい、特殊な蒼いクリスタル型のペンダントに俺のマナを込めてイヴにあげた。
イヴはそのペンダントのマナを使って実体化するようになった。
そして今もそのペンダントの力で実体化して。
『どうしたのよ。呼び出すなんて珍しいわね』
「俺、旅する」
『は?』
「ロイド達と」
イヴは固まってしまう。
何か変な事言っただろうか?
『い、一体何があったのよ!森の外に出て旅がしたいだなんて!』
「色々」
『詳しく話しなさい!』
「シヴァ達に旅する事伝えてくれ」
『あんたねぇ!』
俺は伝える事は伝えたのでロイド達の所に戻る。
後ろからイヴの叫び声が聞こえるけど大丈夫だろう。皆に伝えてくれるはず。
旅の準備は終わった。
そういえば初めてだな旅は……
そう思いながら、旅は始まる。
予言
予言します。
優しき老婆の死、村を追い出され旅をする事になる子供達。
村を出てすぐに見つけた不思議な動物。
彼らは動物を助け、神子の少女を追ってさばくの街へ。
そこで敵と見つかってしまう。
捕まってしまった先は敵の施設。
辛い始まりを迎えた彼らの行く先には――
手配書……―みことのさいかい―
次回もアンリミデットな導きを――
後書き
今回の話は色々と考えたのですが、こうなりました。
もっといい方法があったのでは?とも思いますが、思いついた時に修正してきます。
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