地味でもいい
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第四章
第四章
「御願いします」
「衝撃の展開」
「っていうか」
「今あたし達起きてるわよね」
こう話す三人組だった。自分達が今見聞きしていることを信じられなかった。
「ちゃんと」
「もう何ていうか」
「夢みたい」
「じゃあそのままずっと寝てろよ」
三人には実に容赦のない涼平であった。
「もうな。その方が静かになるしな」
「まあデートするのね、あんた達」
「今日の放課後」
「それは間違いないのよね」
「私も信じられないけれど」
それに応えて話す冬美だった。
「本当みたい」
「じゃあ楽しみにしておいて」
明るい言葉を冬美にまたかける。
「放課後ね」
「うん。それじゃあ」
そんな二人を三人組は唖然とした顔で見ている。自分達の見ているものをまだ信じられる目を丸くさせ呆然となっているのであった。
「何ていうかね」
「この展開は」
「ちょっとないわね」
また口々に話していくのだった。
「それでどうなるかわからないけれど」
「今の時点でもうびっくりだし」
「これはもう」
唖然となったままであった。そのうえで言い合う、しかしであった。
時間は止まらない。どうしてもである。放課後になった。そうしてであった。
涼平は冬美と下駄箱で待ち合わせた。そのうえで学校を出る。それで向かったのは。
「何処に行くの?」
「ああ、百貨店ね」
そこに行くというのである。
「八条百貨店な」
「そこに行くの」
「そうだよ。別にいいよね」
「ええ、別に」
少し戸惑いながら答えた冬美だった。
「それじゃあ」
「まあ中で楽しくやろうよ」
明るい声で返す涼平だった。
「それでいいよね」
「楽しくなの」
「デートってそうだろ?楽しくやるものじゃない」
「私デートしたことないから」
今の冬美の返答はかなり要領を得ないものだった。
「だからちょっと」
「わからないっていうのかい?」
「御免なさい」
気恥ずかしい顔で小さく頷いた言葉だった。
「だからちょっと」
「それならそれでいいじゃない」
「いいの」
「そうだよ。知らないのなら知ればいいし」
それだけだというのだった。
「だからさ。これからさ」
「デートするの」
彼に対して問うたのだった。
「これから」
「そうだよ。さあ行こう」
冬美を引っ張るようにしての言葉だった。こうして二人はその八条百貨店に入った。まずは一階であった。
一階は女性用の化粧品売り場だった。まずはそこに入るのだった。
「ねえ」
「どうしたの?」
「何か買うのかな」
微笑んで冬美に声をかけてきた涼平だった。
「それで」
「何かって?」
「百貨店はものを買う場所じゃない」
「それはそうだけれど」
「じゃあ何か買ったら?」
こう冬美に勧めるのだった。
「何ならプレゼントしようか」
「いいわ、別に」
それはいいという冬美だった。この辺りは謙虚な彼女らしかった。
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