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万華鏡

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最終話 芝生の上でその七

「けれど部活はね」
「出来る限り出るわ」
「寮にいてね」
「そうするから」
「そうなんですね」
「ええ、寮は春休みも空いてるから」
「御飯も出るしね、お風呂もあるからね」
 このこともあってというのだ。
「寮にいるわ、春休みも」
「夏休みも冬休みもだったけれどね」
「そうですか、じゃあ春休みも」
「ええ、宜しくね」
「一緒に楽しくやっていこうね」
 先輩達は琴乃に明るい声で言った、そのうえで今は別れた。何時しか他の部員達もそれぞれ家や寮に帰って。 
 琴乃達は五人になっていた、それを見てだった。
 美優がだ、メンバーにこう言った。
「それでだけれどな」
「何処かいい場所よね」
 彩夏も応える。
「そこに今から行こうかっていうのね」
「ああ、何処に行く?」
 それでどうするかというのだ。
「それでさ」
「そう言われてもね」
 首を傾げさせて言う彩夏だった。
「ちょっとね」
「思い浮かばないか」
「ええ、私はね」
「私もね」
景子も彩夏と似た感じの返事だった。
「そう言われても」
「景子ちゃんも思い浮かばないか」
「終業式の後だったら」
 その時はというと。
「一年の打ち上げで飲みに行くとかね」
「誰かの家でだよな」
「ええ、そう思うけれど」
「今は、か」
「最後のライブだからね」
 こうした意味ではというのだ。
「打ち上げかっていうとね」
「ちょっと微妙だからな」
「それでね」
 景子もだった。
「何処かっていうと」
「思い浮かばないか」
「終業式の後だったらカラオケもいいけれど」
 里香も言う、今は飴を舐めてはいない。
「私もね」
「そうなんだな、里香ちゃんも」
「これと言って思い浮かばないわ、御免なさい」
「いや、謝ることはないよ」
 美優はそれはいいとした。
「別にそんな話じゃないしさ」
「そうなのね」
「これから何処に行こうかってだけだから」
「そうよね、とはいってもね」
 琴乃も言う。
「何処に行くかっていうと」
「あたしもわからないんだよな」
 美優自身もだった、まだ。
「何処に行こうかね、本当に」
「そうよね、まあとりあえずは」
 琴乃は美優に応えながら考えた、そしてだった。
 前を見た、空は青く春のものだった。雲はあまりなく風もない。それに景色もよく太陽の光が暖かく居心地がよかった。
 そして目の前にある芝生も冬の白から緑に戻っていた、生気が戻っていた。
 その青と緑を見てだ、琴乃はこう言った。 
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