『自分:第1章』
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『初接客』
客は指名とフリーに分かれる。
最初やから売り込みの為にフリーは必ず付かされる。
爪切り...美香さんがくれた。
客の手を何気に触って爪が長いと切りなさいって。
自分の身を守る為に、客の衛生もコッチが気を付けるのは心がけてって。
あと、客が変わる度にトイレで口の消毒とリップ。
コレは他の客に対する気遣いやからって。
消毒や名刺とかも入るポーチくれた。
ポーチを持って行って接客する様にと。
保証給有る1ヶ月間のうちに、指名リピーターを捕まえとかな。
20代後半。
ホスト系。
チャライ系。
金髪ツンツン頭。
アクセジャラジャラ。
団体のうちの1人。
絶対関わりたくない。
なんかヤダ。
既に泣きそう。
こーゆうとこってハゲでデブで気色悪くて、とにかくモテんくて淋しいオッサンが来るってイメージしか無かった。
なんでこんな若い奴なん!
マジ勘弁して欲しい!
席つく前から泣きそう。
美香さんとすれ違った。
『おいでっ!』
手ぇ引っ張られた。
で、客と、店長に笑顔で言う。
『スミマセン、すぐ戻りますので、お待ち下さい』
美香さんと更衣室に入った。
『若い客苦手?年齢層高い方がマシ?コレ重要!店長に付け回し指示するし教えて。』
『若いってか、あーゆう系が嫌です。若くても真面目そうなんとか普通なら平気やと思います。オッチャンのがマシです...』
『わかった!私に余裕ある時は助ける!優チャン素直やし可愛いけん姉ちゃんが守ったる♪意外にも慣れてくるし楽しい客も居るから頑張って!』
『...ありがとうございます、頑張ります!』
『ほな、あの客は私付くけん、私の客ヘルプして♪良い客やし触らさんでOK♪店長には言うとくけん。』
美香さんの優しさに甘えた。
美香さんの客のヘルプに行った。
『お待たせして申し訳ないです。美香さんのヘルプで付かせていただきます、優です...』
名刺は一応ついた客全員に渡すのが決まり。
『真面目な子やね~♪適当で良いよ、座りな。名刺は渡すのが決まりよね、チャント貰っとくね!初めてかな?』
『はい、すみません...』
『あはは、カタイカタイ!リラックスして良いよ!あ、何飲む?』
忘れてた!
ドリンク...
あかん...
仕事ならん。
『えっと、じゃあ、カフェオレ良いですか?』
『お酒は?』
『18なんで...』
『そっか!普段は飲んでるやろ?何飲んでる?』
『ドライです♪』
『じゃあコッソリ飲もっ♪』
挙手で注文と灰皿交換を頼む。
ソファの背もたれが高い。
客の膝に乗っても他の客から見えんように?
個室に近い空間。
下手したらヤられてても解らん。
ボーイの見回りが無かったら危険...
店内見渡してたらボーイを呼んだ美香さんと目が合った。
頑張れって拳で合図されて頷いた。
美香さんがこんなに良い人やから、お客さんも良い人なんやろなぁ。
すごいなぁ美香さん...
お客さんがタバコくわえて『んっ!』って、タバコをゆらゆらさしてた。
あ、火っ!!
聞いてないっ!
持ってない!!
『スミマセン聞いてなかったので知りませんでしたぁ~...ライター借りて来ますっ!!』
『聞いてなかったなら仕方ない♪もしかして俺、優チャンの初日で初客って事?』
『はい、本当はアッチだったんですけど美香さんがたすけてくれました。』
『何かされたん?』
『いや、違います!ただ、若くてチャライ系が嫌で...泣きそうだったんを美香さんが気付いて交代してくれたんです...』
『ほ~...美香は優チャンのことよっぽど気に入ったんやな♪美香は誰にも心開かん子や...優チャンに興味をもち好意をもち、変わってくれたら良いけど...可哀相な子やからね、美香は...』
-お待たせいたしました-
ボーイが持ってきた。
お客さんがボーイに店長呼んでって。
店長がスグに来た。
『店長~、優チャンにライター言うて無かったんやって?持ってないからあげて♪』
店長はウッカリって感じ。
慌てて店の名前入りのライター持ってきた。
『うわぁ、店の名前入りとか生で初めて見た!マッチとかサスペンスドラマで観るやんね!』
思わずおかしくて笑てしもた。
『優チャン笑いなっ!真面目なんも良いけど笑い笑い!!とりあえず乾杯っ♪』
ほんまに良いお客さん。
時間来てボーイが来て延長してくれた。
美香さんに伝言頼んでた。
『今から延長50分、優チャンと話す。その後50分指名で美香に来るように!』って。
凄く常連さんみたい。
初日にこんな良いお客さんに出逢えたのは奇跡。
美香さんに感謝。
美香さんのこと少し話してくれた。
勿論美香さんには聞いたって言わんようにって。
育児放棄で施設育ち。
自殺前症候群。
過換気症候群。
レィプ被害。
美香さんも...
涙出てしもた...
お客さんが左腕を取った。
『優チャン...切ってるね...美香と同じ?』
『...はい。』
『...美香は、優チャンを見て何かを感じ取って話したんかも知れんな。』
『美香さん、今も?』
『今は切ってない!』
『良かった...』
『優チャンは名前の通り優しいんやね♪』
『優って決めたとき、美香さんに爆笑されました。』
『爆笑!!!美香が?ほんまに優チャンのこと可愛いんやな♪ほぉ~...♪飲も飲もっ♪』
店内は音楽がうるさい。
ミラーボールで頭もクラクラ。
で、たまに激しい音楽に変わる。
その時間が、基本、激しいお触りサービスタイム。
お客さんの膝にまたがり、モノの上に座る。
胸をお客さんの顔の前に、舐めやすいようにする。
終始、お客さんの上に乗ってる子もいる。
キスしたり胸揉んだりは良いけど...でも、舐めたり指入れたりするのは音楽が激しいときだけ。
今ついてるこのお客さんは、最初この店来て、一目で美香さん指名して話して以来、一切お触り無しで飲んで話すだけの関係らしい。
『おかわり頼もっ!』
普通に生2つ頼んだ。
ボーイは何も言わず行った。
ん?未成年...
関係無いん?
飲んで良いん?
ラッキー♪
お客さんもキョトン。
2人でメッチャ笑った。
しかも生2つ持ってきた。
普通に。
更におかしくてツボった。
久々にこんな笑った。
あっとゆう間に時間。
美香さんが来た。
『お客様、本当に良くしていただいて、初めてが凄く楽しくて幸せでした!』
『美香さん、本当にありがとうございました!美香さんみたいな女性、凄く憧れます♪』
『優チャン何言うてんの!酔ってる?私が助けたかったんよ♪
このお客さん良い人やったろ?惚れんときやぁ!!あげんから♪
次、優チャン指名入ってるみたいよ♪行ってみぃ♪』
深々と頭下げて去った。
ほんまにほんまに、今日1日で店長に美香さん、美香さんのお客さん...
良い人に出逢って嬉しかった。
席に案内されてビックリ。
シンさんと一緒にいた秋。
『えっ!なんでっ!聞いたん?てか年!16歳よね!客の年齢て関係無いん!』
プチパニック。
おしぼり渡して無いし。
『ちょっ!おしぼり!』
急いで取りに行った。
渡してから座る...
秋が言う。
『兄貴に聞いたけん様子見に来た。MJ居る時から気になってたし。』
『え、見張り?シンさんから頼まれた?』
『違うよ!自腹!店長、オカンの知り合い♪』
秋の母親は、此処等仕切ってる社長らしい。
何の仕事かは謎。
敏腕社長で美人らしい。
秋も綺麗な顔してるから、母親が綺麗なんは解る。
『客としてサービス受けに来たって事?』
『ちゃうよ!せんでえぇし!普通に何か頼んで話そうや♪兄貴一緒でいつも話せれんし...』
『別に話したいとか無いやろ?』
『気になってたって言ったやん!』
『うん、でも...愛媛に彼氏居るん知ってるやん!』
『それって関係無いよ?真面目やね!だって昨日兄貴にヤラレたんやろ?』
『最低!!こっちがどんな気持ちで耐えたか解らんくせに!!』
『俺も苛ついとんよ!!飲もうや!!飲んで!!』
『わかった...』
舎弟とか言ってたけど、色々あるんかな?
生2つ頼んだ。
『心配してきてくれたんよね?』
『...うん。』
なんか、可愛かった。
族の総長やってたらしいけど、マダマダ可愛いわ。
2つ下やけど、その割にシッカリしてるとこはある。
でも、カッ!となると歯止めがきかんタイプ。
昔の自分と同じ...
『自分からしたらアンタのが危なっかしいし心配やわ。』
『女に心配されるとか無いわぁ~、男として恥やないっすか...』
『男としてや無くて1人の人間として心配してる!』
『それは...あかんやん!男として見てないって事やんねっ!』
笑って濁した。
家のこと、族のこと、シンさんに対して兄貴って呼ぶのが嫌なこと、色々話してくれた。
延長して更に飲み続けた。
『時間とお金大丈夫?』
『大丈夫!久々に旨い酒やぁ!まだ飲むよっ!』
確実に酔ってる。
16の可愛い男の子が。
美香さんが様子見に来てくれた。
『あら可愛い男の子♪友達?
食べたいくらい可愛い―――っ♪♪♪』
美香さんも酔ってた...
自分は何気に強いんか酔えん。
秋はラストまで延長し続けた。
他の客に付けんように。
気持ちは有り難いけど、申し訳ないわ。
そんな延長やドリンクしてくれても日給決まってるし。
『下で待っとく』
支払いして出て行った。
店終わりミーティング。
新人として紹介された。
初日は2人接客。
店長曰く売上成績トップだったらしい。
明日からも頑張るように言われた。
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