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ドリトル先生と伊予のカワウソ

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第五幕その四

「是非にと」
「左様ですか」
「はい、では」
「それではですね」
「このお城もさらに」
「御覧になられますね」
「案内をして頂けるでしょうか」
 見れば先生の目は細くなっています、その細くなっている目でお城の中を今も見回してそうして楽しんでいるのです。
「このお城の中を」
「喜んで、私も楽しませてもらっていますので」
「お城の中を回ってですか」
「はい、そうです」
 だからだというのです。
「私も楽しんでいます」
「そうなのですね」
「では今日はお城を見て回って」
「このお城について学ぶのですね」
「そうなりますね」
「はい、そうですね」
 こうお話してでした、先生達は加藤さんの案内を受けて松山城の中も見て回りました。その日本の城壁もお堀も石垣もです。 
 先生は全部見ました、そうしてそこに歴史と文化を見たのでした。
 そしてです、出口のところに来てです、ジップとダブダブが先生に言ってきました。
「またあの匂いだよ」
「今度はこっちに来ているよ」
「近いよ」
「すぐそこまで来ているよ」
「そのお年寄りの狸さんがだね」
「うん、そうなんだ」
「あの人がね」
 来ているというのです、するとです。
 先生の前にでした、ある人が来ました。その人はといいますと。
 お年寄りでした、あの飄々とした感じのお年寄りです。その人が前に出て来てジップとダブダブはいよいよでした。
 先生にです、こう言いました。
「この人化けてるよ」
「間違いなくね」
「この人が狸だよ」
「相当長生きしているね」
「そうした匂いがするから」
「間違いないよ」
「ほっほっほ、わかるのじゃな」 
 お年寄りもです、二匹の言葉を聞いて笑って言うのでした。
「わしのことが」
「あっ、やっぱり」
「自分でそう言うんだ」
「この人やっぱり狸なんだ」
「そうなんだ」
「如何にも。わしは狸じゃ」 
 まさにそうだと答えたお年寄りでした、飄々とした笑顔で。
「伊予の仁左衛門という」
「仁左衛門といいますと」
 そのお名前を聞いてです、加藤さんがびっくりして言いました。
「伊予の狸の総大将にして松山の長老狸であられる」
「その通りじゃ、そういう御主は」
 狸は加藤さんを見て言いました。
「加藤さんじゃな」
「私の名前をご存知なのでした」
「当然じゃ、この松山にずっと住んでいる人なら誰でもな」
「誰でもですか」
「知っておるからのう」
「そうだったのですか」
「しかしこうして会ったのはな」
 それはというのでした。
「はじめてじゃな」
「まさかお会い出来るとは」
「はじめまして」
「はい、こちらこそ」
 挨拶も交えるのでした。
 そしてです、お年寄りつまり伊予の狸の長老さんはこう先生に言うのでした。 
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