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相棒は妹

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伊月「俺は――」

 目覚まし時計の軽快な音で、俺は重たい瞼を開閉させる。相変わらず変わりの無い朝だ。いや、大変な事が起こらないだけマシか。

 ああ、でも個人的には大変な事起きてるわな。頭の重さはきっと、大きな問題事に押さえ付けられてるからだな。

 勿論、その問題事とは、志乃との喧嘩である。

 別に殴り合ったとか殺し合ったとか、そういう物理的で物騒な話じゃない。ただ、全部俺がいけないという事実に変更箇所は無い。

 こうして月曜日の朝を迎えたわけだが、正直学校行きたくない。クラスの奴らの視線はきついし、本山から受けるであろう攻撃も面倒だ。何より、真後ろの席に座る志乃が怖い。何かされるわけでは無いが、怨念でも送られていそうで落ち着けやしない。

 その時、一階の方から母さんの声が聞こえてきた。

 「伊月―!早く起きないと遅刻するわよー!」

 まさにテンプレな台詞なのだが、これから今日という胸糞悪い一日がスタートする言葉としては軽めな感じで丁度良かった。

 俺は凝っている肩を軽く手で揉みながら、一階に向かって下り始めた。

 *****

 現在。五時限目授業中。教科は日本史なのだが、教師が風邪を引いて学校に来ておらず、急遽自習という形が取られている。

 とはいえ、自習と命じられてちゃんと黙々と勉強する奴は極めて少ない。ほとんどの奴らは近くの奴と喋っているか、こっそり漫画を読んでいるかスマホのゲームをやっているかだ。

 だが、俺は周りの連中とつるみたく無いので、教科書を読んでいた。文系は元来嫌いな教科では無かったので、こうして歴史を自分のペースで眺めていくのも好きだった。

 そんな中、左前斜めに座っている本山が俺に声を掛けてくる。

 「ねえ、葉山君」

 とりあえず無視。俺はお前より志乃との仲を深めたいの。いや、決してシスコンなわけじゃない。とにかく仲直りがしたいのだ。

 「ちょっと、無視しないでよ」

 こいつはいつも通り懲りずに話を振ってくる。これ以上続けると俺が不利な状況に持っていかれる事は学習済みなので、

 「本山うっさいぞ。後でな」

 と言って追い払う。実際問題、これホントしつこい。相手が美人で皆の憧れだろうが、ウザいものはウザい。人の安定領域に土足で踏み込まれて、誰が良い気分になるんだって話だ。

 本山はいつもと違う俺の反応に不満足そうな顔を浮かべるも、諦めたのか前を向いて本を読み始めた。あくまで勉強はしないらしい。

 だが、その状態が続いたのは三分ぐらいだった。本山はガバッと俺の方に方向転換し、また話しかけてくる。

 「ねえ葉山君」

 こいつ、マジで何なの?

 多少苛立ちながら、変な情報を漏洩されるのも先が思いやられるので、言葉少なめに返す。

 「手短に頼むぞ」

 「うん。えっとね、何でこの間のデートで勝手に逃げ出しちゃったのかなって」

 その瞬間、クラスに沈黙が訪れる。

 数十秒後、俺は周囲の生徒から槍のように鋭い怨嗟の視線を感じた。……理不尽だ、あまりにも酷すぎる。

 そんな俺の想いなど知らず、本山は本当に不満そうに、シンとしたクラスの中に愚痴を零し続ける。

 「あの時の代金、全部私が支払ったんだよ?私はお金に関してはうるさい人だから、ちゃんと返してもらうからね」

 その後も本山はあの後の事を一人でベラベラと喋り続ける。当然、俺の知った事では無いものだったのだが、クラスメイトの睨みの恐ろしさに、教科書以外に目を向けるのが怖かった。
 そんな中、

 「葉山君、人と話す時は目を見なきゃダメだよ?ホント、恥ずかしがり屋さんなんだから!」

 と、本山がフフフと楽しそうに笑い、優しく俺に注意してくる。ハハハ俺の心中を察しろこの腹黒女め!頭かち割んぞ!

 ヤバい、周りの奴らの危険度が上昇してる気がしてならない。このままだと休み時間になった瞬間殺されちまうぞ俺。

 だが、この中で一番恐ろしい視線を感じたのは、俺の真後ろからだった。

 背中を銃で突き付けられたような感覚。人は眼力で殺せるとは聞いた事があるが、もしかしたら本当に出来る人がいるのかもしれないと、今ならそう思える。

 なにせ――今の志乃からは、ガチな殺気みたいなものがガスのように湧き出てるような感じがするからだ。

 確証は無い。勿論抽象的な話に変わりは無い。でも、背中がゾクゾクするのだ。突然氷を背中にぶちまけられたように。……ただし、俺はM気質では無い。

 もう考えるのが嫌になった俺は本山に「俺寝るわ」とだけ言って、顔を机に突っ伏し、その周りを腕で覆った。去年寝不足で授業を寝てしまった時にやってた技だ。幸い今は自習だし、多分このまま寝れる、っしょ……。

 俺は、完全に意識を途絶させ、暗い暗い休息の海の中に飛び込んで行った。

 *****

 目覚めは異常な悪さだった。頭が痛い。鈍器で殴りつけられたようにガンガンする。もしかして、俺が寝てる間にクラスの奴らが椅子の端ぶつけてたんじゃね?それでも起きない俺もどうかと思うけど。

 そんな冗談はともかく、俺が頭を前に起こすと、丁度帰りのHRだった。どうやら、午後を全て寝過ごしてしまったらしい。誰も起こしてくれないなんて、あまりにも酷すぎるだろ。これは虐めとして訴えても良いんじゃないか?

 担任は何故か片手にホッチキスを持ちながら、係の連絡や明日の連絡をしている。まぁ、あの人は常によく分からないので、あまりそこに集中しないようにする。でも、とても良い人であるのは間違いない。

 やがてHRが終了し、帰りの挨拶と共にクラスに様々な空気が入り混じる。三者三様の動きを見せるクラスの中で、掃除担当では無い俺は、思い切って後ろの席の志乃に声を掛けてみる事にした。なんか好きな人にコクるような感じだ。当然、妹に告白するわけでは無いが。

 「志乃、一緒に帰ろうぜ」

 ちなみに、朝は一緒に登校した。だが、互いに声を掛ける事もせず、これまでで初の無言登校が形となって浮き上がってしまった。クラスの奴には特に気にされなかったが、恐らく本山は勘付いていただろう。

 志乃は自分のバッグに教材を詰めているだけで、俺の言葉に答えようとしない。

 「志乃?」

 もう一度聞いてみるものの、志乃は一切目を合わせず、帰りの準備を進めるだけだ。

 そんな志乃の態度に、俺が発した言葉は――

 「ざけんな……」

 気付いた時には遅かった。俺の口は言う事を利かずに自由気ままに動き出す。

 「ざっけんな!確かに、全部俺が悪いよ!でも、それにしちゃ長すぎるだろ!いつまでもそんなにカリカリ怒ってんだよ!」

 もしかしたら、自分の望んだ生活が出来ない事に対する八つ当たりなのかもしれなかった。

 「そんなんじゃ、俺みたいにいつまで経っても前に進めねぇ!あれからもう何日経った?六日ぐらいだぞ!それとも、俺が土下座してお前の言う事を何でも聞けばやっと許してくれるのか?」

 もしかしたら、自分がどれだけやっても許されない事に対する苛立ちなのかもしれなかった。

 だからこそ、言い終えてから気付く。

 俺はどこまでも自分勝手で、どこまでも成長しない、我儘なガキなのだと。

 大人になれば辛い事や苦しい事はもっと増える。しかし、今の俺はそんな厳しい現実には立ち向かえないだろう。相手のせいにして、被害者面して文句だけ言うに違いない。

 周りは皆、俺と志乃を見て固まっていた。だが、囃し立てるものはおらず、俺達の様子を見守るだけだった。

 沈黙。

 それだけが支配する極限の空間。そんな中を、妹が言葉を紡いで切り裂いた。

 「五日間だよ」

 それが、最初の台詞だった。志乃は更に言葉を吐き出す。

 「……私だって、このままじゃダメだって思ってた。いつまでも進歩しないって分かってた。でも許せなかった」

 「……」

 「私はその場を見てなかったけど、確かに兄貴は究極の決断を迫られて、仕方なく女狐と出かけたのかもしれない」

 五月三日の話をしているのだろう。女狐とは、恐らく本山の事だ。

 「でも、やっぱり私は……」

 そう言って、志乃は顔を俯けた。おさげの髪が揺れ、前髪で目元が見えなくなる。口をわなわなと震わせ、何か言おうとしている。それでも口にはしようとしない。
 緊張と沈黙が極限に達した教室内。担任はおらず、中で掃除していた生徒達は何も言わずに俺達に注目している。だが、誰も小言や嫌味を挟んでくる事は無かった。
 そして、何十秒もの空白の末、志乃はゆっくりと言葉を紡ぐ。その言葉はまさに、志乃自身の本心から来るものだと、俺は直感で感じた。

 「……私は、私を優先してほしかった……!」

 その言葉を聞いた瞬間、俺は志乃の手を掴んで教室を飛び出した。バッグなんて持ってきていない。俺が手に握りしめているのは、志乃だけだ。

 時間がゆっくり流れているように感じる。動いているのが俺と志乃だけのように感じる。この世界に、俺と志乃以外存在しないようにすら思えてくる。そんな曖昧な感覚を持って、俺は志乃の手を引いて廊下を疾走する。

 志乃はあまり運動が得意じゃない。というか出来ない。その事を知っている俺は階段を上り、閉鎖されている屋上へと続く階段の半分まで登って、足を止めた。

 手の先を見ると、志乃が肩で息をして俺を見上げていた。意図が掴めぬといった感じだ。

 俺はそんな志乃を見て、手を離し、静かに頭を下げる。

 まだ、ちゃんと謝れていない。さっきも八つ当たりみたいなバカな事をしてしまった。志乃には最初から迷惑を掛けているのに、本当に俺はバカな人間だ。

 「お前の、お前の気持ち、まだ分かってなかった」

 そして、更に深く頭を下げる。武道で習った礼では四五度と教わったが、今の俺は九〇度に達している事だろう。少し顔を上げれば志乃の顔を触れそうな位置だ。最後に、志乃に告げる。

 「……ごめん」

 「……」

 志乃は何も言わず、俺を見ている。だが、やがて小さな声で呟いた。

 「私もムキになってた。ごめん」

 その言葉を聞いて、俺は顔を上げる。そこには照れくさそうに顔を背ける志乃がいた。

 「兄貴がビッチと仲良くしてるように見えて仕方なかった。この間ズタバでお茶してたの見てホントに怒った。でも、ちょっと頑固になりすぎてた。ごめん」

 そういう志乃の顔は不安げで、チラチラと視線を向けてくる。何かを怖がっているように思え、頑張って優しい笑みを作ろうとしたが、引きつってしまう。

 「いや、それも俺が悪いんだ。お前だって人間なんだし、感情に動かされておかしくねぇよ」

 そう言うと、志乃はホッとしたように息を吐き、一つの提案を出した。

 「じゃあ、今回も言う事聞いてもらおうかな」

 「またかよ。まぁ、出来る範囲で頼むぞ」

 まるで女王と下僕のような関係だが、志乃はそれに気を留めずに言った。

 「『俺はちっぱいが大好きだ』……ってクラスで言ってきて」

 「は?」

 ……そのネタ、本気で言ってんのかこいつ。俺を終わらせたい気か?つか、今はシリアスな展開なんだから、それに見合った事を言ってくれないかな。詳しく言えば、もうちょっと華々しい事だ。

 「だって、私を優先してくれるんでしょ?」

 「……お前、さっきまでのは演技だったの?」

 俺が訝しげに呟くと、志乃が珍しく慌てながら弁解の言葉を吐き出す。

 「ち、違う。ただ、兄貴の言葉に証明を付けてほしいだけ」

 証明?俺が志乃を優先する事に対して?なるほど、確かにそれは必要かもな。言葉だけの絆なんてクソ食らえだし。でも、ちょっと待てよ……。

 「つまりお前は、自分が貧乳であることをみとめ……」

 「そこまで詮索しないで変態」

 俺の言葉に被せ、暴言を吐く志乃。だが、その態度がいつも通りに変わっている事に気付き、なんか懐かしく思えた。たった一週間ぐらい喋ってなかっただけなのに、本当に笑えるな。

 それが顔に表れ、クスッと笑うと、志乃が嫌そうな顔をして再び酷い事を呟いた。

 「兄貴一人でに笑うとかキモすぎるよ。顔の手術した方がいいんじゃないの」

 「余計なお世話だっての」

 そう言って、俺達は立ち上がる。

 階段を降りて行く時に他のクラスの生徒から心配そうな視線を向けられたが、あえてスルーする。心配なんていらない。もう復活したんだから。

 だが、俺の中に危険信号が点滅しているのは事実だった。だって、考えてもみてくれ。最初は何とも思わなかったけど、考えてみるとけっこうヤバい台詞だよなこれ。下手したら女子にセクハラで訴えられるぞ。

 念のためそれを志乃に聞いてみると、

 「兄貴なら大丈夫」
 
という根拠の無い言葉が返ってきた。まぁ、大体予想はついてたけどさ。

 俺達は教室の前に辿り着く。掃除当番で廊下を担当していた五十嵐や少数の男子友達に心配されたが、親指を立てて問題無い事を告げる。

 「行ってら」

 まるで戦争に向かう夫を見送る……とは程遠い返事だが、志乃は俺にそう言ってくる。お前が言い出したのに興味無さそうだな、ってツッコもうとしたけど、今は次のステップに集中する事にした。

 俺は静かに教室の中に入る。すると、何人かがこちらを振り向き、何にも発さないで入口に突っ立っている俺を見て、再び掃除モードに切り替わった。

 だが、机を拭いていた本山が俺に気付き、「葉山君~」と近付いてくる。こいつ、俺と志乃にイザコザ作った元凶のくせに、すげえ笑顔振り撒いてるよ。

 無性に苛立ったので、もう少し接近してから『台詞』を口にしようと考えた。

 四メートル。

 三メートル。


 二メートル。まだいけるか?



 一メートル。人と人が言葉のキャッチボールを交わすのに相応しい位置。「葉山君ってさ~」と勝手に話を進めようとする本山の前で、俺は大きめの声で台詞を放つ準備をする。

 「俺は――」

 「え?」

 自分の事だろうと思ったのか、本山が首を傾げ、俺を見つめる。皆きっと、これに参ってやられたんだな。

 そう考えながら、俺は志乃に命じられた言葉を口の中から解放していく。

 「俺は、貧乳が――」

 最後。教室は愚か、廊下一帯にも響くようなバカでかい声で、俺は宣言した。

 「俺はちっぱいが心の底から大好きだあああああああああああああああああああああああ!!」

 *****

 気付いたら自分の部屋にいた。ベッドに横たわり、天井を見つめていた。って、この展開前にもあったよな。

 確か俺は、志乃に証明してくれって言われて、貧乳大好き宣言をしたんだっけ。うわ、今思うとマジでヤバい事したな。これ、本当に通報されかねないぞ。

 思わず額に汗が滲むが、丁度その時部屋に来客がやって来た。ノックもせずに堂々と入り込んでくるのは家族全員なので、いちいち確認しなきゃならない。くそ、俺のプライバシーはどこに消えちまったんだ。

 俺が顔を右に向けると、そこには体操服姿の志乃がいた。志乃は無言で机にある椅子に腰掛け、あの後の事を説明してくれた。

 「最初に、兄貴がゼンマイ切れたみたいに倒れた」

 道理で記憶が一切残ってないわけか。

 「で、兄貴の名セリフを聞いた男子が感動して、気絶した兄貴を胴上げしてた」

 「そこは俺を気遣って保健室に運べ!」

 つか、うちの男子は一体何なんだ?巨乳が好きなんじゃねぇの?まぁ、関係が修繕出来たのは今後動きやすいかな。

 「でも、女子が兄貴の悪口すごい言ってた。『葉山君って見た目と違って変態なんだ』的な感じで」

 「悪口止めろよ!」

 いや、志乃の事だからそれを遠目に聞いて笑ってたんだろうな。性質の悪さは本山と同等かそれ以上だな。

 「それで、私がタクシー呼んで家まで帰ってきた」

 「マジか。じゃあ、金払ってくれたのか」

 「うん」

 「ああ、じゃあ割り勘にしないか?お前に全額払わせるのは勿体無い。タクシー高いし」

 そう言って財布を取り出して、志乃に料金を聞いてその半分を渡す。

 「ちなみに、その額は間違ってないよな?」

 「当たり前じゃん。私を誰だと思ってんの?」

 すごい自信満々に返って来たので、あえて追跡するのは止めた。

 そこで少しだけ何も話さない静かな時間が出来たのだが、志乃が小さい声で呟いた事で、沈黙は破られた。

 「あの女狐は、もう兄貴に関わって来ない筈」

 「?何でそんな事言えんの?」

 突然そう言われて純粋に気になったので聞いてみると、志乃はそれが決定事項のように言葉を吐き出す。

 「だって、『私に興味持ってなかったのは、胸がでかいからなの……?』って言って泣いてたから」

 「泣いてたの?そんな事で?」

 別にそれが理由じゃないんだけど。あいつ、いつになったら自分の性格をちゃんと理解するんだろう。計算通りにやるくせに、肝心なところずれてるよな。にしても、泣くのはダメだろ。これについても女子から散々言われそうだな。はぁ、やっぱ学校嫌だわ。

 そんな俺の心中を察してか、志乃は一言呟き、俺の部屋を出て行った。

 「兄貴なら大丈夫」

 気の入っていない言葉だが、何故か少しだけ安心感が生まれた。

 *****

 次の日。志乃と学校へ行くと、男子勢に囲まれた。

 「葉山!お前はなんて素晴らしい奴なんだ!」「お前のおかげで女性の本当の魅力に気付けた!ありがとう!」「おっぱいだけが全てじゃない!それなのに、俺達は……!」

 いいからお前らとっとと離れてくれ。男に囲まれて爽やかな笑顔向けられても嬉しくないから。

 一方、女子からの視線はドライアイス並みに冷たかった。しかも運の悪い事に、男女混合の出席番号順の席のため、周囲の女子比率が高かった。

 五十嵐は他の女子と違って唯一話しかけてくれたが、最初の一言の「葉山君は、胸が小さい方が好きなの……?」という純粋な戸惑いの色が混じった質問に心が折れそうになった。いや、違うんだ。でも否定は出来なかった。

 本山に関してはずっと元気が無くて、毎度毎度女子がやって来て慰めていた。そして、時折俺を睨みつける。お前ら、それは無いぞ。あいつが勝手に絡んできただけなのに、俺が悪いみたいに見るな。

 俺の悪運は、どんな時でも健在らしい。全く持って嫌な性質を持っちまったよ。

 でも、志乃との和解の代償がこれだって言うなら、こんなのお安いもんだ。 
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