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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──

作者:なべさん
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GGO
~銃声と硝煙の輪舞~
  START

築何年かも分からない、ひょっとしたら何十年かもしれない木造三階建て。屋根には銘と同じ呼び名の草がところどころ生え、さらには建物そのものがどことなく傾いているような気がしないでもない。

小日向相馬と小日向蓮が住むおんぼろアパート《ぺんぺん荘》は、あらゆる意味で世界中似存在するどこよりもユニークな場所である。

まず、玄関先で出迎えてくれるのが幽霊、ご飯を賄ってくれるのも幽霊という時点で、何というかもう一杯一杯だ。

さらに、その住人達もユニークそのもの。

自分の開く絵の展覧会で暴れまわるヤクザ画家や、見た目小学生にしか見えない女教師。ヒキコモリの天才プログラマーに職業謎なアラサー一歩手前OLなど。

人生に一癖も二癖もありそうな面子。

そして、ここにいたら一生分の見聞が広がりそうな面子である。

しかし小日向兄弟は初めからここに住んでいた訳ではない。両親が死んでしばらく経ち、小日向蓮が物心つく頃に、当時両親と姉ともに健在であった紺野家からほど近いこのアパートに引っ越したのだ。

正直、このアパートに入ってからしばらくの間、涙しか浮かべていなかった記憶しかない。

当たり前である。

当時幼稚園児だった少年にとって厳しすぎる現実を、予想の斜め上を行くスパルタで指導してくれた大人達ばかりだ。

両親の死に向き合う間も、大嫌いな現実世界に眼を向ける間もなかった。

だが、今ならそれにも感謝している。

社会の縮図たる学校よりも、現実の事を叩き込んでくれた住人達がいなければ、今の小日向蓮はいなかったであろう。

小日向蓮にとって、学校よりも、現実よりも大事な、現実世界の記憶が詰まっているのは、他でもない。このアパートなのである。

そんなアパートの一室で眼を覚ます一人の少年がいた。

2DK。

現在進行形で一人暮らし(仮)な少年にとっては、かなり広々と感じてしまう。

遮光カーテンの隙間から薄く入り込んできている12月の朝日と空気が、もう一年もしたら中学生になる年の割には肉の薄い身体を包み込んでいる。

ベッドの上でむくりと起き上がった少年は軽く部屋の中を見回した後、自らの目元に手をやり、呟く。

「…………また……あの夢か」

近頃、日をまたぐたびに強くなっていく、ある特定の夢。

覚えている事は少ない。起きた端から、すくった砂の山のように記憶から零れ落ちていくのだ。

暗闇の中、白き穴のふちから自分に呼びかける白い小さな影。

「……………………」

ぶらん、と力なく垂れた手の甲から、涙の粒がスーッと落ちていった。

2025年12月。

1月22日に起こった、あのALOでの事件から約一年が経過しようとしていた。

その間、所在地不明なネットの片隅から発生した謎のフリーソフト。《ザ・シード》から生まれだされた無数のVRワールドがネット上を徘徊し、文字通り世界がガラリと変わったのだが、それでも時間というものは万人に、世界に関係なく流れていくものらしい。

あの事件は、一年という時と《ザ・シード》登場のインパクトの中で消え去りかけている。

この世とは、あるいは世界とは、突き詰めていけばそんな単純なものなのかもしれない。

小日向蓮はベッドから起き上がり、傍らにあるソレを引き寄せる。

最先端の運動力学を応用した、斜めにセットされた大き目の車輪に、ゆったりとした背もたれ。色は無機質なクリアシルバー。

車椅子である。

そう、彼――――小日向蓮はいまだに車椅子生活を余儀なくされているのだった。

背もたれに背を預け、車でいうギアノブのような取っ手を傾け、ロックを外す。続けて背もたれ上部に置かれている、チョーカーを半分に割ったような装置を手に取り、幾つものコードが繋がっているそれを己の頚椎部にはめる。

ピピッ、と。

微かな電子音が耳につく。

車椅子の運動制御プログラムと自分の大脳が、間接的に接続されたのを知らせる電子音だ。

―――前へ。

声にならない意思の声。

大脳から発せられた脚部への運動命令式をシステムが読み取り、車輪が滑らかに動き出す。

行き先は食堂。

日本家屋らしい滑らかな木造建築の床はところどころ軋むが、幸いにも車輪が止まるような段差はない。

「う~、るり子さんおはよぉ~」

寝癖だらけの頭をボリボリかきながら、あくび混じりに放たれたその言葉に答える声はしかしない。

だが、その事実は大食堂内に誰もいないという訳ではない。

隣接されている厨房。薄暗がりに沈むそこに、白い影がチラチラ見え隠れする。

それは手だ。

手首から先しかない人間の手首が二つ、フワフワと中を漂っている。と思っていたら、こちらの声に気付いたのか、手を振ってくれた。

これがるり子さん。

幽霊である、

生前、小料理屋を営む事が夢だったらしく、このアパートの賄いを文字通り一手に引き受けている。

「るり子さん、今日はパンで」

蓮の声に指で『OK』を出し、カチャカチャと忙しく厨房内で動き始めた。

水曜日午前十時半。

『おはよう』なのか『こんにちは』なのか激しく迷うこの時間帯は、平日だという事も相まって最も住人達がアパートにいない時である。

葛城ミサトや月詠小萌などの社会人ズはいないのも当然であるが、勤務時間がそもそも不確定な画家である深瀬明はたいてい昨日の酒呑みの二日酔いでダウンしているか、もしくはまだ呑み食いしているかだ。ヒキコモリな天才プログラマーである赤坂龍之介などは、そもそも自室から出てこない。

紺野木綿季などは、アパートに程近い位置に立地する紺野家より多くの時間を過ごしているんじゃないか、と思えるほどの頻度で遊びに来ているが、彼女もSAO生還者(サバイバー)に向けて建築された学校(キャンパス)に通っているので、来れるはずもない。

そんな事を思いながらガランガランの広い食堂内を見回していた小日向蓮の目の前に、焼きたてのトーストがするりと差し出された。中心にぽてんと乗っけられたマーガリンが漂う事によって発生する香りが、鼻腔と胃を激しくせっついてくる。

匂いだけで唾液が、滝のように湧き出してくる。

最近蓮の食が細いのをるり子さんは分かっているため、出されたのはトースト一枚とカップ一杯のミルクだけだった。

マーガリンが充分溶けきるのを待ち、トーストにかじりつく。サクサクとした食感と、ふわふわとした食感が絶妙なハーモニーを奏でている。

何というか、今日も今日とて平和であった。










しかし、小日向蓮は知っているはずであった。

否、知っていた。

平和とは、争いと争い、血と血、戦争と戦争、絶望と絶望の間に生じた、一時の休息のようなものでしかない、と。

一年。

一年という時間は蓮の、レンとしての、《冥王》としての本質を小さなものとしてしまっていた。

そう、かつて少年があれほどまで嫌い、憎んだ《灰色の現実世界》が、彼自身を侵食しようとしていた。

その事に少年の本能は気が付いていたが、理性は気付いていない。いや、気付く事さえ恐れている。誰しも、自らの牙がもがれる事を恐れるのは、ある種当然の精神防衛本能である。

しかし、少年の本質は、存在は薄れていく。

あの魔城に行く前の自分に、透明な存在に。

ゆっくりと。

じわじわと。

ずるずると。

引っ張られ、引きずり込まれ、染まっていく。

その速度は決して速いものではなかったが、確実に少年は『戻っていく』。

だが、《世界》は彼を許さない。

許さなくて、赦さない。

平和とは、刹那の休息なのだから。

休んだ分は、返さねばならない。

少年にとって、小日向蓮にとって、《冥王》にとって、一年という休暇は終わった。

戦いが始まる。

否、戦いとも呼べない《コロシアイ》が。

さぁ、そろそろ起き上がろう。

火蓋は切られた。

号砲は鳴った。

幕は上がった。

先は見えない闇の中。

血で血を洗う、聖戦を始めよう。 
 

 
後書き
なべさん「はいはい読者の皆様お久しぶりでございます。そーどあーとがき☆おんらいん!」
レン「ホントに久しぶりだなぁ。一ヶ月も更新サボってどこ行ってたのさ」
なべさん「どこにと言われたらほぼどこにも行ってないね。99パーセント自宅の、しかも自室から一歩も出ない生活送ってたアルね」
レン「…………(かわいそうな物を見る目」
なべさん「や、やめて!その目が一番刺さる!」
レン「さて、とうとう本編はGGOだよ。おいカス、何か言いたいことはないの?」
なべさん「(あれ、今ナチュラルに人に定義されなかった)んー、そだね。この編はどうしても、ALO以上の原作無s――――ゲフンゲフン、原作崩壊をしないといけないんだよね」
レン「言い直したけど改善どころか改悪になってるぞ――――その心は?」
なべさん「ラスボスが弱い」
レン「……あー」
なべさん「いやいや、SAO、ALOをGMと来て、何でGGOは一般ぴーぽーなんでしょうね?苦戦せずに一発KOが目に見えて分かるからタチが悪い」
レン「(ここまで堂々と原作に対する愚痴をブチかます二次作者がいただろうか)てことは?」
なべさん「うむ、化学反応のイコールは原作崩壊に決まっている」
レン「そうかねー」
なべさん「うむ、張り切って頑張っていくぞい」
レン「はい、自作キャラ、感想を送ってきてくださーい」
──To be continued── 
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