美しき異形達
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十八話 姉妹の力その十三
「私が戦うわ、今度はね」
「そう、それではね」
黒蘭も頷く、そして薊もだった。
鈴蘭に対してだ、微笑んで述べた。
「じゃあここはな」
「貴女もそれでいいのね」
「鈴蘭ちゃんが戦いたいのならな」
それならとだ、鈴蘭に答える。
「そうしてくれよ」
「それではね」
鈴蘭はその手に日本刀を出した、それを上段に構えて怪人と対峙する。その怪人は鈴蘭と対峙するとすぐにだった。
突進して来た、凄まじい速さと勢いだった。その突進を見てだ。
薊は黒蘭にだ、こう言った。
「ちょっと相性が悪いな」
「姉さんとあの怪人は」
「鈴蘭ちゃんは剣道だろ」
「そうよ」
「しかも気を放って間合いを取って闘うよな」
「貴女が手合せした通りね」
その通りだとだ、黒蘭も薊に答える。
「姉さんはあの刀に力を込めて斬ったり放ったりして闘うわ」
「それがあの娘の闘い方だよな」
「その通りよ」
「けれどな」
その鈴蘭に対してだというのだ。
「あの怪人はな」
「突撃してくるわね」
「牛だからな」
まさにだ、闘牛の牛の如くだった。怪人は実際に鈴蘭に対して突進してきている。その衝撃は見ただけで相当なものであることがわかる。
「それでな」
「そうね、ただね」
「ただ、なんだな」
「貴女が案ずるには及ばないわ」
黒蘭は確かな声で薊に答えた、勿論共にいる裕香にもだ。
「姉さんは強いわ」
「だからなんだな」
「そして強いだけでなくね」
それに加えて、というのだ。
「安定感もあるわ」
「その強さがなんだな」
「見たところ貴女も確かに強いわ」
薊に対しての言葉だ。
「間違いなくね」
「けれど安定感はか」
「まだそれ程ではないわね。それにね」
黒蘭は姉の闘いを見つつ薊にさらに言う。
「姉さんにはもう一つの武器があるわ」
「頭だよな、それは」
「すぐにわかったことは流石ね」
「わかるさ、闘いでもスポーツでもな」
「頭脳は武器になるわね」
「まずはそれだろ」
頭のよさ、それが第一だとだ。薊も言うのだった。
「頭がよくないとな」
「幾ら強くとも」
「負けるよ」
そうなるとだ、薊は言い切った。
「江夏さんだって剛速球とコントロールだけじゃ勝てなかったしな」
「江夏豊さんね」
往年の大投手だ、黄金の左腕として阪神タイガースのエースそして伝説のストッパーとして活躍した。その江夏豊もだというのだ。
「そうね、あの人もね」
「頭がよかったっていうからな」
「相手の心理を読んでね」
「そうして勝ってたらしいからな」
「そうよ、だから姉さんもね」
「頭もいいんだな」
「その通りよ、だから」
その頭のよさ、それがあるからだというのだ。
ページ上へ戻る