雲は遠くて
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29章 清原美咲 と 新井幸平 の デート (2)
29章 清原美咲 と 新井幸平 の デート (2)
「美咲さんも、ご存じのように、モリカワさんとの今回の件は、
ぼくも、ちょっと、参りましたよ。ギブアップでした。
あっはっは」
幸平は、そう いい終ると、
ファイヤーキングのグリーン色のマグカップに入っている、
この店、カフェ・ユーズ(cafe use)自慢の、
スペシャリティ・コーヒーを、おいしそうに飲む。
ファイヤーキングとは、耐熱ガラス容器の有名ブランドだ。
「私の立場からは、何と言って、幸くんを、
励ますことができるのかしら。わからないわ」
「いいんです。こうやって、ぼくにお会いしてくれるだけで。
美咲さんと、二人でいられる、貴重なこの時間だけで、
ぼくは、十分に、励まされますし、
元気が出ますから」
「幸くんってば、まだ、わたしなんかのことを、
そんなに思っていてくれているの?」
「ぼくにとっては、美咲さんは、永遠の理想の女性
なんですから・・・」
「またまた、そんなことをいって・・・。
幸くんが、いろんな女の子と 噂が
あったりするのは、もう十分すぎるほど、
わたしも知っているわよ。
わたし以外の女の子にも、永遠の理想の女性なんて、
きっといっているだろうなって、つい、想像しちゃうわ」
「ぼくは そんな 軽い男じゃないですよ。あっはは・・・」
「そうかな。まあ、幸くんは、かっこよくて、イケメンだし、
女性からの支持率が高いのは、
わたしも十分に理解できるけどね。慶応大学でも、
女の子たちは、口に出さないけれど、こっそりと、
あなたをマークしていることが多かったもの・・・」
「あっはっは。ぼくがモテたのも、おやじが、大会社の
社長で、金持ちだったからという、そんな欲望が
混じった、不純な、それだけの魅力なんですよ。
ぼくは、いまでも、一応、不純は嫌いです。
純粋に生きたいと思っています。
これも、美咲さんに教わった 生き方ですけど」
「うふふ。幸くんも、ロマンチスト(夢想家・理想主義者)
なんだわ。わたしもだけど。
わたしの場合は、天然ボケの入っている、ロマンチストだけど、
あなたは・・・、常識にとらわれない、芸術家タイプの、
ロマンチストなんだわ、きっと。うふふ・・・」
「あっはっは。そのとおりかも、ですね。たぶん、ぼくって、
変わっているんですよ」
「そんなことはないわよ。わたしは、幸くんのそんな性格は、
好きだし。いつも、応援しているんだから・・・」
「ありがとうございます。美咲さんとは、最良のパートナーに
なれると、信じていたんですけどね。
いまも、ぼくは、それを信じているんですよ。美咲さん」
「よく、恋は盲目っていうよね。1度、好きなると、
好きな人の欠点も、美点というか、長所というか、
その好きな人の魅力に見えちゃうのよ。
それって、ある意味では、怖いことよね。
わたしって、そんなふうに、恋愛については、
悪いほうに考える、マイナス思考をするから、
くじけやすいし、行動の前に、尻込み
してしまうんだわ。
だから、いつも、好きな気持ちは強くても、
最初の一歩が、なかなか踏み出せないのよ・・・」
≪つづく≫
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