雲は遠くて
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26章 TOP 5入り・祝賀パーティー (1)
26章 TOP 5入り・祝賀パーティー (1)
12月1日の 日曜日。 午前11時30分。気温は 15度ほど。
肌寒いが、好天に 恵まれて、
日差しは 暖かである。
下北沢駅から、歩いて3分ほどの、
ライブ・レストラン・ビートで、正午から、
グレイス・ガールズ と クラッシュ・ビートの
ダブル・ヒット・チャート・TOP 5入り・祝賀パーティーが
行われるところである。
人びとの行き交う、
下北沢駅で、待ち合わせをした、
清原美樹と 松下陽斗が、
楽しげに 会話をしながら、
ライブ・レストラン・ビートに 向かって 歩いている。
美樹は、チェック柄のセミ・ショルダー・バッグを
肩にかけ、ゆったりとした ネイビー(濃紺)の
ボア・コートに、スカート丈が 膝から
少し上の ワンピース、ワインカラーのコットンタイツで、
歩く 姿も 可愛いらしい。
美樹は 1992年10月13日生まれ、21歳。
陽斗は、インディゴ・ブルー(濃紺)、
裏が 暖かい生地の フリースの ジーンズに、
厚手の グレーの ジャケットが よく 似あう。
陽斗は、1993年2月1日生まれ、20歳。
「美樹ちゃん、オリコンの CDの 売り上げランキングとかって、
いま、どうなっているんだっけ?」
といって、ほほえみながら、陽斗は 美樹を見る。
「昨夜、確認したら…、週間の CD・売り上げ ランキングが、
グレイス・ガールズは、アルバム・チャートが 3位だったわ。
シングル・チャートが 2位だったの。
クラッシュ・ビートは…、アルバムが 2位で、
シングルが3位だったわ。なんか、ウソみたいで、
すごいことよね!」
子どものように 微笑んで、
美樹は 眩しそうに 陽斗を 見る。
美樹の身長は 158で、陽斗は175だから、
美樹は 陽斗を ちょっと 見上げる 感じになる。
「そうなんだ。アルバムじゃ、クラビ(クラッシュ・ビート)が、
2位かあ。グレイス・ガールズも3位なんてね。
まったく、夢を見ているような、現実だね、美樹ちゃん。
多くの ミュージシャンたちは、成功を 夢に見ながら、
経済的には、いつも大変で、ぎりぎりの生活をしている人が、
ほとんどという、きびしい、この世界なのにね。
モリカワ・ミュージックは、そんな夢見る人たちを、
いいカモとかにしないから、おれは好きなんだ…。
この世の中、何を信じていいのか、自分のことしか、
考えてない、口ばかりがうまい、詐欺師とか
ペテン師見たいのが多すぎるよね、美樹ちゃん。
大学も出ていて、頭がいいからって、
その人を信じていたら、大ウソつきで、
人をだまして、自分の利益だけを考えているなんてのが、
ゴロゴロいるんだからなあ…」
「どうしたの 急に、はる(陽)ちゃん。
なんかイヤなことあったの?」
「まあね、あっはっはは!でもね、モリカワ・ミュージックや
モリカワって会社は、正直一筋で、
突き進んでいて、どんどん大きくなっているから、
おれは好きだなぁ…。
おれが、モリカワ・ミュージックと、専属の契約をしたのも、
モリカワが、立場の弱い、弱者というか、個人を、
尊重してくれるからなんだよ。
はっきりいって、世の中の風潮は、
その反対で、社会的弱者や個人を、無視する方向の
ような気がするからね。ねえ、美樹ちゃん」
「うん。はる(陽)ちゃんのいうこと、よくわかるわよ。
わたしも、モリカワだから、純さんのお父さんたちの
会社だから、信用して、契約したんだもの」
「モリカワの 社是 社訓は、
世直しだから!違ったっけ?…あっははっ!
でも、社長の、純さんのお父さんは、坂本 龍馬を
師と 仰ぐような 人で、正義感の かたまりのような、
それでいて、子どものように 純真な 心の 人なんだよね…」
≪つづく≫
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