雲は遠くて
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16章 地上200mの誕生パーティー (2)
16章 地上200mの誕生パーティー (2)
「きょうは、お忙しいところを、
イタリアン・レストラン・ボーノ(Buono)に、
ご来店いただきまして、ありがとうございます」
パーティーの進行役、サークルの幹事長の、
3年生、2月7日で、21歳になった、矢野拓海が、
上機嫌な笑顔と、
ゆっくりとした口調で、挨拶をした。
矢野拓海は、ライトグリーンのポロシャツに、チノパンで、
髪も、刈り上げて、すっきりとしいる。
矢野拓海のとなりには、森川純も立っている。
矢野が、やけに、はりきって、スピーチしているからか、
何かおかしそうに、ニヤニヤと微笑みながら、
うつむき加減に、矢野のスピーチ(話)を聴いている。
純も、白のTシャツに、ジーンズという、ラフなスタイル(格好)で、
髪型も、夏らしい刈り上げだ。
地上から、200mの、東京の街を、
見わたせる、眺望を、
後ろにして、森川純と、矢野拓海は、立っている
「きょうは、MFC(ミュージック・ファン・クラブ)の、
部員だけでも、59人が、参加しております。
ボーノ(Buono)の、キャパシティ(座席数)は、
およそ、120席ですから、お店の約半分のスペースを、
われわれが、占領しちゃうのかなって、
ほかのお客様のことも、ちょっと心配しちゃうのですが、
その点を、お聞きしましたら、だいじょうぶとのことでした。
そんなわけですので、
みんなで、至福のひとときを、楽しみたいと思います。
都心で、星空に近い、このシチュエーション(状況)って、
なかなか、いい感じですよね」
と、矢野拓海は、となりの森川純に、話を振った。
「まあね。高層ビルの上のレストランって、
おれの夢のひとつだったんだ。あっはっは」
と、森川純はわらった。
フロアのテーブルについている、みんなから、
拍手がわきおこる。
「それでは、森川純さんの、ご挨拶をいただきたいと存じます」
「おれって、20歳という年齢って、
なんか、いつも、特別な気がしているんです。
生涯、青春とでもいいますか、
20歳くらいのころの、新鮮さを、失ってしまえば、
人生はつまらないような・・・。
そんなふうに、思うわけです。あっはっは」
純が、そういって、わらうと、みんなも、わらった。
拍手も、わきおこる。
「まあ、きのう、菊山香織さんと、お話ししていたんですが」
と、無意識に、頭をかく、純。
「香織さん、20歳になられたばかりということで。
それじゃあ、と、話は弾みまして、
きょうのパティーと、なったわけです。あっはっは」
純がわらうから、みんなからも、わらい声が、わきおこる。
「ピー、ピ一ッ!」と、
一瞬の、超高い、
口笛が、鳴りひびいたりもする。
「えーと、今年、20歳になる人を、調べてみたんですよ」
と、森川純の挨拶を、継いで、
純のとなりに立つ
サークルの幹事長の矢野拓海が、
スピーチ(話)をした。
「数えましたら、われらのサークルには、
なんと、11人いるんですよね。
その、みなさん、
幸いなことに、きょうは、参加してくださっているんです。
そんなわけですので、
11人のみなさんの、20歳の誕生パーティーと、
まだ、20歳でない人や、20歳を過ぎちゃった人の誕生日も、
お祝いしちゃおうということで、
きょうは、みんなで、誕生日の大パーティーという感じで、
楽しんでいただきたいと思っています。
それと、
昨日は、会費は半額と決めてましたが、
純さんからは、みんな、まだ学生さんだからということで、
会費は、1000円以上はいただくわけにいかないだろうと、
強くいわれてしまいました。
そんな純さんのご好意ということで、
会費は1000円、ちょっきりです。
純さんからは、
きょうは、まったく、遠慮はいらないので、
おおいに、食べて、飲んで、楽しんでくださいということです!」
みんなからの、盛大な拍手が、鳴りひびいた。
≪つづく≫
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