雲は遠くて
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
15章 カフェ・ド・フローラ (5)
15章 カフェ・ド・フローラ (5)
「なるほど、12人中、5人が見たということになりますか?!
やっぱり、ジブリの映画は、人気があって、大ヒット中ですね。
『風立ちぬ』は、
おれも見て、感動しましたよ。
ラストシーンで、宮崎監督みたいに、泣いちゃいけないと、
我慢しちゃいました。
主人公たちの、人生に迷わずに、生きていく姿には、
いつも、感動したり、励ませれるものがありますよね」
「わたしは、主人公の菜穂子さんが、風に飛ばされそうになった、
二郎さんの帽子を、
すばやく、からだを伸ばして、キャッチした、場面で、
感動して、思わず、涙が出そうになりました」
平沢奈美がそういった。
「奈美ちゃんは、岡くんと、映画に行ったんでしょう。
映画見に行った人って、
よく考えてみたら、みなさん、なかよく、ふたりだけの、
デートだったわけで、うらやましいですよ!
おれも、そろそろ、デートしてくれる相手を見つけないと!」
そういって、みんなを、わらわせたのは、
幹事長で、3年生の矢野拓海であった。
「拓海さん、おれの場合は、奈美ちゃんを、
強引に、
『風立ちぬ』に、誘ったんだから、デートではないと思います」
岡昇は、生真面目に答える。
「あっはっは。そういう強引さも、デートには必要なんだよな、岡ちゃん」
と、わらって、矢野拓海がいえば、みんなも、またわらった。
「おれも、ジブリの大ファンだから、見に行きますよ。
宮崎駿監督や、
プロデューサーの鈴木 敏夫さんって、
ブログとかで、平和憲法の9条を、守ろうとかいっているじゃないですか。
徹底的な、戦争反対論を展開していて、
おれなんか、そっちの、彼らのコメントのほうに、
感動して、涙も出てきそうですよ。
ジブリのアニメにも、彼らの憲法を守ろうという考え方も、
おれなんか、深く共感しちゃうなあ・・・」
森川純が、そういって、生ビールを、おいしそうに、ゴクリと飲んだ。
「戦争って、ムードで、いつのまにか、始まっているていう感じが、
歴史をみているとあって、それって、怖いよな」
ベース・ギターが担当の、やや、ふっくら感のある、
高田翔太が、そういって、生ビールを飲む。
「戦争やって、いいことなんて、何もないよ。
それなのに、世の中から、無くいならないよな。
愚かな、戦争が・・・」
そんなふうに、みんなにむけて語る、森川純には、
心優しいリーダーのような、落ち着き(おちつき)があった。
「わたしも、ジブリのアニメは大好き。
もしかしたら、ジブリは、平和を守る、最後の砦みたいに、
なるのかもしれないわよね。日本や世界の・・・」
小川真央が、そういうと、みんなは、
「うん、うん」と、うなずくのであった。
「わたし、変なこといって、ごめんなさい!
きょうは!楽しく飲んで、騒ぎましょう!」
小川真央が、そういったら、
「真央ちゃん、ぜんぜん、変なことなんて、いってないわ!」
と、清原美樹がいう。
「うんうん、美樹さんのいうとおり、真央ちゃんは正しいこと、
いっていると思う。わたしもジブリ大好き!
平和は守らなければと思うもの」と、美樹のとなりの、大沢詩織もいう
みんなから、明るい、わらい声が、わきおこった。
「憲法9条とかにしても、宮崎監督や鈴木さんのように、
はっきりとした、自分の意見がいえる人って、すごく少ないよね。
おれも自分の意見に自信ないけど。
スタジオジブリのブログを見ていて思ったんだけど」
ちょっと、はにかむような、笑顔で、そういったのは、
クラッシュ・ビートのギターリスト、
23歳の岡林明だった。
「そうですよね。自分の意見をもたないまま、なんとなく、
ムードに流されてしまって、
世の中が、悪い方向へ向かってしまうとしたら、怖いですよね」
岡林明のとなりの水島麻衣が、岡林に、そういって、ほほえんだ。
さっきから、岡林と麻衣は、
ふたりとも、ギターリストなので、ギターの話で盛り上がっていた。
「ところで、純さん。きょうの打ち上げ、純さんのご招待ということで、
サークルのみんなを代表して、
あらためて感謝を申し上げたいのですけど、どうもありがとうございます」
サークルの幹事長らしく、矢野拓海が、
森川純に、ていねいな、一礼をする。
テーブルのみんなも「ありがとうございます」と、感謝の気持ちをこめていう。
「そんな、あらたまらなくたっていいって。
MFC(ミュージック・ファン・クラブ)が参加してくれる、
8月24日のサザンオールスターズ・祭りのチケットは、
ソールド・アウト(完売・かんばい)だし、
よく、うちのライブハウスとか、みんなも利用しくれてるから、
その、ささやかな、おれの感謝の気持ちでもあるんですから。
きょうの、ここでの、打ち上げとかは。
みんなで、サザンオールスターズ・祭りも、盛り上げようね!」
「はーい、がんばります!」とかの、女の子たちの、よろこびにあふれている、
かわいらしい声が上がった。
≪つづく≫
ページ上へ戻る