雲は遠くて
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14章 美樹と詩織のテネシー・ワルツ (2)
14章 美樹と詩織のテネシー・ワルツ (2)
「真央ちゃん、うれしいわ。励ましてくれてるのね」
といって、真央の話を、素直に受けとめる、美樹だった。
うふふっ・・・。
3人は、微笑みあいながら、ソフトドリンクの、
はちみつレモンの、カラフルなストローに、口をつけた。
この、38号館の、1階にある、戸山カフェテリアは、
アラカルト方式で、客が自由に選んで、注文できる、
1品料理の学生食堂であった。
それぞれの料理は、ボリューム(分量)や栄養バランスが、
よく考えられていて、評判もなかなかだった。
おすすめ企画や、定番メニュー、サラダバーなどから、
好きなメニューを選んで、食べることができる。
主なメニューは、麺、パスタ、丼もの各種、
お惣菜、
サラダバー、ケーキ、お菓子、ドーナツ類、ドリンクなど。
スペインでは、朝食の定番といわれる、
油で揚げた、甘くて、おいしい、
焼きチュロスも、人気であった。
イギリス的な、喫茶・習慣、
アフタヌーン・ティーのために、といった感じの
おしゃれなケーキ・スタンドが、人目を引く。
定価210円の、ゴマと豆乳のモンブランとかの、
おいしそうなケーキがたくさん、陳列されている。
「美樹ちゃん、さあ。ちょっと、気になるんだけど、
詩織ちゃんのことで。
彼女、信ちゃんと、おつきあいを始めたらしいわよね」
そういって、少し、心配そうな表情で、
真央は、美樹の様子を、窺った。
「うん、そう、みたいね」
と、美樹は、全然平気な様子だ。
「つい、この前の、土曜日に、詩織ちゃんと、信ちゃん、
それと、岡くんの、3人で、
フレンチ・レストランや、ライブ・レストラン・ビートに
行ったんですってね。
そのライブ、松下陽斗さんと、
白石愛美さんとのコラボだったでしょう!
わたしは、美樹ちゃんに誘われたけど、
用事があっていけなかったけど。
行きたかったなあ!」
「詩織ちゃんと、信ちゃんのことなら、
わたしは、おふたりが、うまくいくことを祈っているわ。
わたしには、いまは、
松下陽斗さん(まつしたはると)がいるんだもの。
信ちゃんとは、
わたしも、おつきあいさせていただいていたけど、
ふたりだけで、会って、
はっきりと、いつまでも、お友だちでいてくださいって、
お話ししたんだもの。わたし、つい、泣いちゃったけどね」
「やあー、みなさん、おまたせしました!」
と、ふいに、元気な明るい、男の声が聞こえた。
いつもの、憎めない笑顔の、
大学1年の、岡昇、
同じく、1年の、平沢奈美と、
1年の、大沢詩織の、3人が立っていた。
「あれー?岡くんも、いっしょだったの?
あなたって、ほんと、意外性のある、おもしろい人ね!
ちょっと、あきれたような顔をして、岡を見ると、
菊山香織が、かわいい、笑顔で、そういった。
「詩織ちゃん、来てくれて、ほんとに、ありがとう。
どうぞ、ここに、お座りください」
そういって、美樹は自分の隣の椅子を、
大沢詩織に勧めた。
「はーい」と、大沢詩織は、少し恐縮しながらも、
満面の、輝くような笑みで、
美樹のとなりに着席した。
≪つづく≫
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