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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百八十三話 第6次イゼルローン要塞攻防戦 前哨戦1

 
前書き
おまたせしました。

やっと戦闘開始ですが、今回はアッサリとした状態です。

次回以降がほんちゃんの戦闘開始です。 

 
宇宙暦795年 帝国暦486年1月3日

■銀河帝国 イゼルローン回廊 イゼルローン要塞

『ティアマト星系外縁でワープアウトと思われる重力異常と発光現象を多数確認反応増大しつつあり!』緊急事態を知らせる放送によって要塞全域には緊張感が漂う。

自室で寛いでいたエッシェンバッハ元帥は今回の同盟軍の行動を事前に知らされていたとは言え直ぐさま司令部へと連絡を入れる。混乱しているのか20秒ほどしてから通信士官がスクリーンに現れた。エッシェンバッハにしてみれば、怠慢だと怒りたい気分もあるが、事情を知っていた自分でさえ緊張しているのであるからと踏みとどまり事態の推移を聞き出す。

「何があった?」
エッシェンバッハの連絡と判り、通信士官をどかして総参謀長のグライフスが現れた。
『はっ、ティアマト星系に数万規模のワープアウトを観測しました。更に観測衛星が破壊された模様です』
事情を知らないグライフス総参謀長は非常に慌てた様に状況が刻一刻と変わる大スクリーンを何度も確認しながらエッシェンバッハに答えた。

「うむ、どうやら敵の奇襲という訳か、判った直ぐ其方に向かう、要塞全域及び各艦隊に第一級警戒態勢を取らせよ」
『はっ』

帝国に居るスパイ共に司令部の慌てる様を報告させ、今回の同盟軍襲来の情報を受けて居ないように見せかけねば成らぬと言う事で、襲撃自体を教えていなかったため慌てるグライフス達に些か悪いと感じながらもエッシェンバッハは気を取り直して直ぐさま司令室へと向かった。

司令室付近は捕虜交換という一大仕事が終わった関係で休暇や通常勤務での交代で歓楽街や自室に戻っていたスタッフなどが慌てふためきながら司令室へ向かう波が出来ていたが、皆が元帥の姿を見ると慌てて敬礼を行う。

答礼しつつ司令室へ入室すると、其処もまた喧噪に包まれていた。
「敵艦総数5万隻突破!」
「F23ポイントからK11ポイントまでの偵察衛星通信途絶!」
「カプチェランカよりの自動定時連絡が妨害電波のため入電不能!」

「オーディンへの通信が出来ません!」
「既に妨害電波が発生してる模様です」
「妨害電波の発生源は何処だ!」

喧噪に包まれた司令室もエッシェンバッハの入室で多少なりとも落ち着きはじめる。
直ぐさまグライフスと要塞司令官シュトクハウゼン、駐留艦隊司令官ゼークトが近づいてきて敬礼してくる。

「司令長官閣下、敵艦隊は5万隻を越えるようです」
「既に電波妨害が行われ、オーディンへの通信が不能になっております。これは由々しき事態です」
「艦隊総数では当方が不利ですが」

見るからに落ち着きがない状態で普段の剛胆さなど微塵も見えない三人にエッシェンバッハも内心では“卿らが此処まで慌てるとは意外だな”と考えていたが、自分は落ち着いた顔で一括する事にした。
「狼狽えるな、我等には殿下が着いていらっしゃるのだ、我等が慌ててどうするか」

その言葉に、喧噪に包まれていた司令室に静寂が訪れ、皆が落ち着いた表情をし始める。
「閣下、殿下には直ぐさま御避難して頂きませんと」
グライフスが真剣な表情でテレーゼの避難を勧める。

一応殿下から避難しないとの話は聞いているが、形だけでも避難を勧めることをする事で話し合いが出来ていたために殿下の元へと向かう話をしている最中、司令室にケスラー大将を引き連れたテレーゼが入室してきた。

「敵襲なのじゃな、ほんに折角捕虜を帰してやったと言うのに、又ぞろ捕虜に成りに来るとは、叛乱軍の指揮官はマゾなのかの?」
コンサート会場からそのまま来たのか、普段と違いライブ衣装のままではあったが、何時ものように扇で口元を隠しながら同盟軍に皮肉を言うテレーゼに皆が目を見張る。

直ぐさま宇宙艦隊司令長官エッシェンバッハ元帥、宇宙艦隊総参謀長グライフス大将、要塞艦隊司令官ゼークト大将、要塞司令官シュトクハウゼン大将達が、テレーゼの前で跪き頭を垂れる。

「殿下の行幸にも係わらず、叛乱軍の攻撃を察知できずに殿下の御身を危険に晒すなど、万死に値する行為、如何様な御処分も受ける次第でありますが、部下達には何とぞ寛大なご処置をお願い致します」
代表してエッシェンバッハが慈悲を請うが、この事自体、テレーゼ、エッシェンバッハ、ケスラーの三人は演技をしているのであるが、他の皆は皆知らずに固唾を飲んで推移を見守る。

その姿を見てテレーゼは真剣な表情で四人を含めた全員に聞こえるように優しく語りかける。
「卿ら気にするではない、卿らのせいではない。どうやら黒狐めが暗躍したようじゃな」
「殿下……」

今回の件はテレーゼ達の悪巧みであり、黒狐は精々踊らされただけで全然悪くないのであるが、テレーゼは敢えてルビンスキーとフェザーンのせいにしておく。

テレーゼの言葉に、常日頃のフェザーンの態度を知っている者達は全く疑問も持たずにフェザーンとルビンスキーに対する怒り燃やす。

その熱気が冷めやらぬ内にエッシェンバッハがテレーゼに避難を勧める。
「殿下、敵は5万隻を越えます。直ぐさま御避難を」
エッシェンバッハ渾身の演技にテレーゼは笑いそうに成りながらも、拒否の姿勢を見せる。

「司令長官、それは成らぬ。帝国の為に戦う卿らを捨てて妾だけが逃げる事が出来ようか。妾は卿らの事を信じておる。卿らに妾の命を預けようぞ」
司令室でも、知ってはいるがエッシェンバッハ以下、全員が感動に震えが止まらずに居たのである。

「御意、殿下の御心確と胸に刻み込みました。必ずやあの恥知らずな叛徒共に裁きの鉄槌を与え、殿下に捧げます」
エッシェンバッハが述べると司令部全体で“テレーゼ殿下万歳!帝国万歳の!”大歓声が上がり、更にテレーゼの今までの遣り取りは、何故か全館放送で(ケスラーの仕業です)要塞は元より駐留艦隊、直衛艦隊、護衛艦隊にまで流れて帝国軍将兵や臣民が感動し大歓声が上がった。

しかし、タンホイザーの艦橋の遮音力場で防音された提督席でキルヒアイスと敵が攻めてきて喜んでいたラインハルトは、馬鹿にした表情で放送を見ていた。
「態々放送を流して下らん茶番を見せるとは、エッシェンバッハ、シュトクハウゼン、ゼークトもそろいも揃って阿呆揃いだな、それにあの小娘も阿呆の極地だな、そう思わないかキルヒアイス」
「はぁ」
微妙な表情のキルヒアイスであった。



暫くすると、ロイエンタールの艦隊が妨害電波の発生源を突き止め除去したことで妨害電波が消え、オーディンへ非常事態の連絡が為され、事情知っているフリードリヒ四世、リヒテンラーデ侯、グリンメルスハウゼンなど以外の事情を知らない者達はテレーゼや共に向こうに居る娘達の安否を心配して大騒ぎになるのである。

また陛下もシュザンナに散々泣き叫ばれる事に成る。
軍ではエーレンベルク元帥が知っていながらも知らない振りで各家の親からの願いなどで、増援艦隊出撃の準備に入り、実際にケルトリング中将、シュタイエルマルク中将を含む4個艦隊60000隻も出撃させることになるが、この艦隊がイゼルローンヘ着く前に戦闘が終わり結局の所戦闘には間に合わずに単なる遠洋航海になってしまうのであるが、これ自体も今後の布石と成っていたのである。

同盟軍に対して帝国軍は艦隊をくり出し、1月いっぱいはイゼルローン回廊の同盟側出入り口付近の宙域で制宙権を確保するための小規模な戦闘が連続して行われていた。戦闘は50隻から3000隻ほどの単位で立方体に区切った数千の宙域を一つ一つ争奪する形で展開した。

ラインハルトも20回以上も出撃し、狩猟でも楽しむかのようにその手腕を遺憾なく発揮している。
またロイエンタール達も戦闘に参加し十分な戦果を上げている。






何故これほど和平への道が出来そうな時点で同盟軍の攻撃が始まったかであるが、同盟軍にしてみれば、先だって命からがら亡命してきたオッペンハイマー中将の情報でイゼルローン回廊に建設中のイゼルローンツヴァイが予想に反して数ヶ月程で完成するとの情報に驚愕したうえで、今回の捕虜交換時に情報収集艦により得た情報などから、今の状態ならば未稼働である事。

更に今回は確認出来なかったが即在のイゼルローン要塞には同盟の誇るアルテミスの首飾りソックリなブリガージンの首飾りが建設中であるとの情報ももたらされた以上、同盟軍としても難攻不落のイゼルローン要塞が全てに於いて難攻不落に成りかねない事もあり急遽攻略を進める事と成ったのであるとヴァンフリート星域で発表されたのであるが、これは最初から攻撃する気であったことを糊塗する為にブラフとして流された物で有った。

実際の所、今回の捕虜交換が為される事により、多数の拉致被害者が帰国し、政府としては選挙の票集めの為の出兵をする気は無かったのであるが、ヴァンフリート星域会戦で大敗した為、後がない宇宙艦隊司令長官ロボス元帥と出世欲に駆られた作戦参謀フォーク中佐のスタンドプレーで、更なる票を集められると、最高評議会へ謀った事により出兵が決定したのである。民主共和制と言いながら既に同盟は衆愚政治へと突き進み、政治腐敗の酷さだけが目立つ状態で有った。

同盟軍が恐れているイゼルローンツヴァイは直径60km表面を流体金属の層に包まれた質量100兆トンの天体である。そして完成後の主兵装たる物はシュテルンブレッヒャー(星砕き)(スターライトブレーカー)と呼ばれる事が決まっているとの情報も入っていた。

しかし、その主兵装はオッペンハイマー、フェザーンからの情報により今だ建造すらされていないとの事であり、このまま手を拱いてイゼルローンツヴァイが完成し、イゼルローン要塞とツヴァイによる鉄壁の守りとなる前に両要塞を攻略するべく進撃したのである。

投入された艦隊は5個艦隊、総司令官ロボス元帥自率の司令部艦隊5000隻、ルフェーブル中将の第3艦隊13000隻、パストーレ中将の第4艦隊13000隻、ホーウッド中将の第7艦隊13000隻、アル・サレム中将の第9艦隊13000隻、ドールマン中将の第11艦隊13000隻、総数70000隻、総兵力798万6500名であった。

対する帝国軍は、宇宙艦隊司令長官エッシェンバッハ元帥率いる直衛艦隊15000隻、ゼークト大将率いるイゼルローン駐留艦隊15000隻、シェーンバルト艦隊3000隻、そして、捕虜交換式典に参加する為にイゼルローン要塞完成以来、初めて来た皇族であるテレーゼ殿下の護衛艦隊10600隻、総数43600隻、総兵力489万122名であった。又別に要塞には軍人、軍属、民間人を含め550万人が居た。




所で誰が見ても猪突猛進のビッテンフェルトがイゼルローンの危機の通信を聞いて飛び出さなかった訳は、最初の通信妨害がケスラーの仕業であり、襲来直後にメックリンガーに連絡を入れ、ビッテンフェルトを呼び出してテレーゼの親書を見せたからであった。

さしもの猪も敬愛するテレーゼの命令と頼みなら聞かない訳が無く、イゼルローン回廊帝国側出口で毎日イライラしながら陸戦訓練で憂さを晴らしていたのであり、それに付き合わされるオイゲンやディルクセンは非常に迷惑していたのである。

「まだまだ行くぞ!」
「もう勘弁して下さい」
 
 

 
後書き
オイゲン、ディルクセンお疲れさま>< 
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