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戦国異伝

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第百七十三話 信行の疑念その八

「わかっておろう、織田家だけではないわ」
「武田、上杉、北条、毛利と」
「本願寺までも」
「徳川、浅井、長宗我部も」
「色のある家はですな」
「我等の敵じゃ」
 それに他ならないというのだ。
「どの家もその時に潰れてもらう」
「織田と争ってもらい」
「そうして」
「既に幕府がその手筈を整えてくれた」
 義昭、他ならぬ彼がだというのだ。
「あらゆる家に文を送ってくれてな」
「実によく動いてくれまいsた、あの公方殿は」
「我等の望み通りに」
 空海と崇伝は楽しげな声で影に述べた。
「ですから後は」
「織田と本願寺の和が切れた時に」
「うむ、ではな」 
 それではと話してだ、そしてだった。
「その時にどの家も織田に兵を挙げる」
「北条もです」
 天海が言ってきた。
「武田、上杉と密かに話を進めております」
「三つの家が手を結びな」
「織田に対することを」
「織田は天下統一を目指しておる」
 それならというのだ。
「北条にとっても迷惑な話じゃ」
「はい、そうなります」
「北条は天下を目指してはおらぬが関東を己のものにしたい」
「ですから織田の天下布武は北条にとっても迷惑です」
「だからじゃ」
 それでだというのだ。
「あの者達もな」
「織田と敵対します」
「毛利もじゃ」
 毛利も天下を目指していない、だが山陽と山陰を手中に収めんとしている。そこに織田家が来ればというのだ。
「だからな」
「あの両家も織田に対します」
「そうなりました」
「毛利は本願寺と手を結んでいます」
「そのやり取りが今行われています」
 水面下でだ、そうなっているというのだ。
「ですから」
「後はじゃな」
「はい、織田と本願寺の和が切れた時です」
 まさにその時にというのだ。
「大きな戦になります」
「どの家も倒れる」
「ここで全て倒れてもらう」
 色のある家は、というのだ。
「本願寺にも随分やられたがのう」
「親鸞の頃より」
「我等はかなりやられましたな」
「坊主達にもやられたわ」
 親鸞だけでなく、というのだ。
「行基の頃からな」
「はい、神主共と共に」
「我等を痛めつけてくれました」
 二人もだ、影に忌々しげに述べた。
「陰陽師にしても山伏にしても」
「あらゆる者が我等を虐げてくれました」
「長きに渡って」
「この国が出来てから」
「まつろわぬ者は闇の者じゃ」
 影も言う、やはり忌々しげに。
「しかしじゃ」
「それがですな」
「いよいよ」
「終わる」
 そうなるというのだ。 
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