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歳の差なんて

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第十二章


第十二章

「絶対にね」
「そう、それじゃあ」
「言ってみて」
 また美香に言ってきた。
「本当に。どうするの?」
「好きになったのよ」
 まずはこう奈緒に言ってきた。
「本当に」
「そうなの。見たわよね」
「ええ」
 今度は奈緒の言葉に頷いた。
「見たわ。娘さんまでね」
「そうなの。しっかりと見たのね」
「見たわ」
 奈緒の言葉にこくりと頷いてみせる。
「確かにね。先生までね」
「そのうえでの結論ね」
「そうよ」
 奈緒への返答は続く。
「その通りよ」
「ならいいわ」
 奈緒は美香に対してこくりと頷いてみせた。今度は彼女が頷くのだった。
「それでね」
「そう。いいの」
「いいわ。それでね」
「それで?」
「今度告白しようと思っているのよ」
 このことまで奈緒に告げた。
「今度ね」
「そう。頑張ってね」
「もう止めないのね」
「先生も娘さんもはっきりと見たのよね」
「ええ」
 また答えた美香だった。
「そうよ。お家にも招待してもらって」
「えっ、お家に!?」
 これは奈緒も予想していないことだった。
「お家にも招いてもらったの」
「そうだけれど」
「そうなの。もうそこまでいってるのね」
 ここまで話を聞くとあらためて考える顔になる奈緒だった。そのうえで真剣な顔になる。
「そうだったの」
「どうかしたの?」
「それでお話したのよね」
 また尋ねる奈緒だった。
「しっかりと」
「ええ、そうだけれど」
「だったら。もうかなりのものね」
 ここまで聞いてまた考える奈緒であった。
「先生も」
「先生もって?」
「先生も本気なのね、多分」
「本気って」
「美香、あんたね」
 あらためて美香に対して言ってきた。
「先生はあんたが思っている以上に意識しているわよ」
「そうなの」
「あんたも彼氏を家に入れたことあるわよね」
「それはね」
 高校時代のことを思い出しながら奈緒に答えた。
「あるわ。何回かだけだけれどね」
「一回でも入れたことなのは確かなのよ」
 このことはまたはっきりと言うのだった。
「それはね」
「そういえば」
 説き聞かすように言われてやっとわかった美香だった。
「私も。そうだったし」
「そうでしょ?余計に深く考えないと駄目よ」
「余計に・・・・・・」
「何度も聞くけれど娘さんにはいい感じだったのね」
「そうよ。娘さんも」
「向こうがどう思っているかだけれど」
 奈緒はここでその娘に対してあることを思い出しあることを話した。
「そうそう、美香」
「何?」
「娘さんに会ったのよね」
「うん」
 このことをまた話す美香だった。
「それはね。直接向かい合ってお話したし」
「その時どんな動作していたの?」
「どんな動作って?」
「右手で首の辺りをネクタイ締めるようにしていなかった?」
 美香に対して尋ねたのはこのことだった。
「その時。どうだったの?」
「していたわ」
 思い出しながら話す美香だった。
「確かにね。何度もね」
「そうなの。何度もね」
「それがどうかしたの?」
「あんた、娘さんにも好かれてるわよ」
 真剣な面持ちはここでも奈緒の表情になっていた。
「娘さんにもね」
「そうなの」
「あの娘ね、好きな相手と話しているとそうなるのよ」
「そうだったの」
「そうよ。だからね」
「私、好かれているのね」
 美香もこのことを確信した。
「あの人に」
「その通りよ。あんたもその娘のことを悪く思っていないのよね」
「ええ」
 また確かに頷く美香だった。
「そうよ」
「だったら最大の問題はクリアーされているけれど」
 しかしそれでも忠告する奈緒だった。
「それでもよ。本当にいいのね」
「好きになってきているの」
 また答える美香だった。
「本当に。このままだと」
「もう一回聞くことになるわ」
 奈緒はまだ完全な返答をしようとしなかった。
「もう一度ね。いいかしら」
「もう一度なのね」
「私を誰だと思ってるの?」
 真剣な顔と言葉はここでも同じだった。
「私は。あんたの何?」
「親友よ」
 この答えは変わらなかった。
「ずっと一緒の。そうよね」
「そうよ。だったらわかるわよね」
「うん」
 奈緒の言葉にこくりと頷いた。
「そうよ。だから」
「だから?」
「あんたに何かあるのなんて嫌よ」
 じっと美香の目を見据えてきていた。
「何かはね」
「そうなの」
「そうよ。幸せにならないと許さないから」
「奈緒・・・・・・」
「だから。もう一度よく考えて」
 真剣な言葉はさらに続いていた。
「もう一度ね。いいわね」
「もう一度なのね」
「それが終わってからまた話しましょう」
 こう言って席を立った。
「またね。いいわね」
「ええ、わかったわ」
 奈緒の言葉にこくりと頷く。
「それじゃあね。またね」
「今度で最後になるわね」
「最後に?」
「そうよ。最後にね」
 また言う奈緒だった。
「それで決めましょう。それでいいわね」
「わかったわ。それじゃあ」
 美香も頷いて席を立った。こうして今回の話も終わった。そうしてこの話し合いから暫くして。奈緒は携帯のメールを受け取ったのだった。
「あらっ」
『今週の日曜空いているかしら』
 それは美香からのメールだった。
『日曜の午後。どうかしら』
「そう、日曜なのね」
 この時彼女は帰宅途中だった。駅に向かおうと歩いていた。その時に美香からのメールを受け取ったのである。
「日曜ね。わかったわ」
 頷くとそのメールに返信を返した。それは。
『いいわよ』
 表情を変えずにこう返信した。今はそれで終わりだった。
 
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