無限に等しい膨大な数の本が整然と並ぶ世界。
そこに壁はなく、天井もなく、ただただ白だけが続き、本棚が屹立していた。
《神々の書架》
数多ある世界の始まりから終わりまでを記した書が眠る異界。 とある一柱の神が創り上げた叡智の集積地。
システムに干渉することはできず、それどころか構造そのものすらをも完全に解析できないそこは、様々な世界にアクセス可能で、《鍵》を持ったものであればどの世界からでもアクセスすることができる。
けれど《鍵》の所有者はそれぞれに閲覧可能な書に制限がかけられ、書架の全容を知ることはできない。
利用できないと知った神々からは見向きもされない、既に忘れ去られた世界に一人、とある少女が誘われる。
黒い髪に黒い瞳をした混じり気のない人間。 魔法の存在も、書架の存在も、神々の存在すらをも知らないまっさらな人間。
数多ある世界の全てを内包した異界に放り込まれた少女は、そこで己の出自を知り、そして……
「いきなり『貴方にはこれからいわゆる異世界にいってもらいます』って言われて『はいわかりましたいってきまーす』って言えるのは大馬鹿か頭のネジが外れてるかだよ!」
「貴方が元いた世界とは使用している言語も文化も法律も情勢も、なにもかもが異なります。 このままなにもしなければ早々に野垂れ死ぬことは明白です。 だから、それなりに困らない程度の力と知識を与えましょう」
「私も貴様と共に向こうにいく。 貴様が向こうでなにを成し、世界をどう書き換えていくのかをこの眼で見ておかねばならんのだ。 だが忘れるなよ人間。 私はあくまで観測者だ。 故に守護も助勢もせん。 死にたくないのなら貴様の力で生き抜いてみせよ」
一人の少女による一風変わった英雄譚、開幕
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[この作品は作者の諸事情により非公開にしています]
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