天馬
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俺の名前は兵藤一誠。
家族や親しい友人からは俺の事を「イッセー」って呼んでいる。
この春、私立駒王学園で二度目の春を迎える高校二年生だ。
こんな、ごく普通の高校生の俺には「神器」と言う特殊な能力が備わっている。
『何をしていのですかイッセー?早くしないと時間に遅れますよ』
「あぁ、そうだねルシウス。じゃ、待ち合わせ所へ向かいますか!」
俺の脳内に話し掛けて来た人物、彼女の名は「天馬神ルシウス」
俺に宿る神器「天馬神の籠手」として魂を封印された天馬の女神様。
彼女とは神器を通じて意思の疎通を図ったり、精神世界で逢う事が出来る。
本来はペガサスの姿では無く、女神ルシウスとして人間体として居るらしい。
などと言っている内に待ち合わせ所へと着いたようだ。
来る途中で、メイド服を着た女性にチラシを貰ったけど、取り敢えずはポケットに閉まっておこう。
その待ち合わせ所は、駅前に在る時計塔の前。
「イッセー君!ごめんなさい、待ったせちゃった?」
「いいや、俺もさっき着いた所だよ。夕麻ちゃん」
可愛らしく手を合わせて謝罪する彼女。
彼女の名前は「天野夕麻」
駒王学園から程遠くない場合に在る有名な御嬢様高校の二年生と言っているが、実は彼女の実体は「堕天使」だ。
恐らく、俺の命もしくは神器狙いで俺に近付いて来たらしいけど、ルシウスが彼女の実体を既に看板しており俺に教えてくれている。
じゃ何故、堕天使である彼女とデートをするのかって?
答えは簡単。
俺に危害を与えるか、与えないかを見極める為さぁ。
それはさて置き、俺達は普通の高校生らしいデートを行っている。
洋服屋や雑貨屋を巡り、ゲームセンターで遊んで近くのファミレスで遅めの昼食を取ると言った、ごくごく普通のデートを楽しんでいた。
そして…………遂に、彼女が俺の敵に成るか否か時が来た。
俺達は、町外れに在る夕暮れの公園に来ていた。
しかも、人気が一切無い公園に………。
そして俺達が噴水広場に到着したその時、夕麻ちゃんは突然振り返ると、こう告げた。
「イッセー君、今日は楽しかったわ。ありがとう」
「こちらこそ楽しかったよ!夕麻ちゃん」
噴水を背に微笑みを浮かべながら感謝の言葉を述べる彼女に、俺も笑みを浮かべながら言い返す。
すると彼女は、俺から距離を取りながら………こう告げる。
「ねぇ、イッセー君」
「何かな夕麻ちゃん?」
「私達の初デートの記念に1つだけ、欲しい物が在るんだけど良いかな?」
「俺が出来る範囲なら良いけど?」
この展開なら、大方予想は出来る。
だって、さっき迄感じなかった殺気が駄々漏れだから。
すると、彼女は微笑みながら更に距離を取った瞬間に右手に光の槍を展開し、その槍を俺に投げつけながら言い放つ。
「死んで頂戴!」
彼女から放たれた光の槍は、物凄いスピードで俺の心臓を目掛けて一直線に飛来して来た!
だがしかし!!
俺は、光の槍が胸に突き刺さる寸前で掴み止めて見せた!
「この程度の攻撃で、俺は殺せ無いぜ夕麻ちゃん!否、堕天使さんと言うべきかな?」
「なっ!?き、貴様何時から私の事を気付いていた?」
光の槍を掴み取った事と、正体を看板された事に驚きを隠せない夕麻ちゃん。
「そんなの最初からに決まっているだろ?まぁ、俺に宿る神器が教えてくれたんだけどね?」
「ちっ!!よくも舐めた真似をしてくれたわね小僧!絶対に殺す!」
そう息巻きながら、背中から黒い羽を生やし姿を変化させた夕麻ちゃん。
その姿は、妖艶な姿が似合う女性堕天使だった!
「やべ、怒らせ過ぎたか?」
『全く、怒らせてどうするのですかイッセー!幾ら私と修行を積んで「小宇宙」に目覚めたと言っても、今の貴方の実力は普通の人間に毛が生えた程度の実力でしか在りません。このままでは、間違い無く彼女に殺されるでしょうね?』
「あぁ、解っているさルシウス!でも、このまま易々と殺されてたまるかよッ!!燃えろ!俺のコスモよ━━━━━ッ!!」
俺は、昔から聖闘士星矢の星矢や憧れを抱いていた。
傷付きながらも、アテナの為に地上の人々を護る為に仲間達と供に闘う星矢に憧れていた。
だから俺は、女神ルシウスと出会った時から星矢の様に愛する者達を護る為に強く成りたいと願い、ルシウスと供に密かに修行を積んで行った!
そして、数年前に漸く「小宇宙」に目覚めた。
しかし、ルシウスの言う通りマンガやアニメの様に俺の身体は強靭に成っている訳でもない。
普通の人間に毛が生えた程度の強度しかない俺の身体では、例え「流星拳」を放ったとしても音速を越えられない流星拳では、人外の彼女に届かないだろ。
だが!!
「喰らえッ!!ペガサス流星拳━━━━ッ!!」
俺は、渾身のペガサス流星拳を放った!
俺が放てる流星拳は、1秒間に70発程度。
初期の星矢が放った流星拳よりも劣る。
「ふん!この程度の攻撃など、防御壁で防げるわ!まぁ、他かが人間だと侮っていたけど、なかなかやるわね?私達の計画の為に益々殺した方が良さそうね?」
「まだまだ━━━━━ッ!!」
俺の放つ流星拳を左手で防御壁を展開しつつ、右手で光の槍を幾重にも展開した彼女。
「お遊びは此処までよ兵藤一誠君。人間風情の貴方が堕天使である私に勝てる筈が無いでしょう?さぁ、大人しく死になさい!」
そう言って彼女は右腕を振り下ろすと、幾重にも展開された光の槍が俺に向かって降り注いた!
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
『イッセーッ!!』
捌ききれなかった光の槍が身体に突き刺さると、次々と俺の身体に突き刺さる!
身体の至る所から鮮血が吹き出しながら俺は仰向けに倒れた。
「非力な人間の割には、私を此処まで手こずらせた事には誉めて挙げるわ。でも、所詮は人間てことね?怨むなら、聖書の神を怨むのね。貴方に神器を宿した神に」
「…………………」
「それじゃね、イッセー君。退屈だったけど、なかなか楽しかったデートだったわよ。素敵な思い出をありがとう」
そう言って彼女は、上空へ浮かび上がると姿を消した。
俺は激痛の余りに言葉を発する事さえ出来ず、ただ彼女が去るのを黙って観ているしかなかった。
『イッセーッ!!確りして下さい!イッセー!!』
「ごめん、ルシウス。俺、強くなるって言ったのにお前の忠告を無視したばっかりに…………」
『何を弱気に成っているのです!貴方は、私と供に強く成ると約束したでは在りませんか!』
「あぁ…………ごめん。その約束も果たせそうにないかも…………知れない…………」
『イッセー!!』
もし、叶うなら。
神でも悪魔でも構わない!
誰か助けてくれ!!
段々意識が薄れて行く中、僅かだが俺の頭上に人影が見えたと同時に、聞き覚えが在る声が聞こえた。
「私を呼んだのは、貴方ね?」
「だ、誰?」
「どうせ死ぬのなら、私が拾って挙げる」
「えっ、また羽?」
「うふ。貴方のその命、私の為に生きなさい」
その言葉を最後に、俺の意識は途切れた……………。
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