IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第284話(ラファール・リヴァイヴカスタムⅡ編)】
前書き
ラファール・リヴァイヴカスタムⅡ編です
――第三アリーナピット内――
「ヒルト。 パーソナライズとフィッティングは切ったよ? はい、僕のリヴァイヴ、壊さないでね?」
「こ、壊さないって! シャルの大事な機体なんだ。 可能な限り、壊さないようにするさ、これがな」
そう必死に言う姿が可笑しかったのか、シャルは口元を手で覆い――。
「あはは♪ 冗談だよ♪」
楽しそうな笑い声がピット内に響き渡る。
……流石に借り物の機体を壊すわけにはいかないからな。
第三アリーナピット内、俺が選んだのはシャルのラファール・リヴァイヴカスタムⅡだった。
……ラファール・リヴァイヴを扱った経験から選んだのだが……シャルの機体、俺に扱えるのだろうか……。
――と、ラファールの前面装甲が開き、中からシャルが降りてくる。
「ふふっ。 ……まさか僕のリヴァイヴを選ぶだなんて思わなかったなぁ。 てっきり、ラウラのレーゲンを選ぶのかと思ったよ」
自分の機体が選ばれるのが意外だったのか、そう言ってくるシャルは更に言葉を続けて――。
「で、でも……やっぱり選んでくれたの、凄く嬉しいよ? ……僕のリヴァイヴ、よろしくね?」
「あぁ。 ……ありがとな、シャル?」
「ふぇ?」
何でお礼を言われたのか解らず、首を傾けるシャルに対して俺は――。
「フッ……。 何となく、ちゃんとお礼を言ってなかったって思ってな。 ……いっぱい傷つけてるかもしれないのに、答え出せなくてごめん」
そう言ってリヴァイヴに足を掛け、背中を預けるように座ると前面装甲が閉まる。
フィッティングが無いものの、機体はちょうど俺の体を包み込む様に、まるで抱き締められてる感覚に陥る――と。
「……ううん。 確かに、ヤキモチ妬くこともあるけど……傷付くのを恐れてたら、前に進めないし、ヒルトが振り向いてくれないからね」
笑顔でシャルは近付き、既に腕部装甲に包まれた腕を触ってくる。
「……ありがとう。 ……何て、結局この状況に甘えてるのかもな、俺」
「ふふっ♪ ……でも、僕達の高校生活は始まったばかりだし。 ……あ、ヒルト? 僕のリヴァイヴは武装を沢山インストールしてあるから、ちょっと呼び出すのに時間がかかることを忘れないで? ……ラピッド・スイッチ、ヒルトも使えたらお揃いなのにな……」
そんな何気無い最後の呟きに、ドキッと心臓が跳ねると自然と頬に熱を帯びる。
「あ、あんまり一夏を待たせる訳にはいかないからな。 ……そろそろ行くよ、シャル」
「あ……うん。 ……ヒルト、頑張ってね?」
そう言って拳を突き出すシャルに、軽く触れるように拳で触れると照れ笑いを浮かべながら観客席に移動していった。
それを見送ると、俺はピット口へと進む。
その合間に、左腕のシールド内側に各種弾装を装着していき、腰部サイドアーマーにもハンドガン用のマガジンを呼び出しては装着していった。
そして、内部に入ると俺はカタパルトに脚部をセットする。
右前方に見えるシグナルが点灯するのと同時に、ハイパーセンサーが一夏を捉える。
……と、不意に声が聞こえてきた。
『……キミがシャルロットの想い人だね? ボクが誰だかわかるかい?』
そんな声が聞こえてきた――この感覚、ムラクモと同じだ。
『……もしかして、シャルの機体のコアか?』
『へへっ、その通りだよ。 ボクはラファって言うんだ。 姉妹が沢山居るのが自慢なんだよ、ボクの』
何気にこの子も僕っ娘というやつなんだな。
……シャルの機体だからだろうか?
それはそうとして、姉妹が沢山――。
『……量産機のラファール・リヴァイヴだな。 ……てか、どうして声を掛けてきたんだ?』
『え? ……うーん……。 ……何となく? アハハッ♪』
そんな笑い声が心に響くのと同時に、シグナル二つ目が点灯――。
『そろそろ出撃だね? ……力は貸せないけど、ボクも見てるからね? キミの健闘に期待してるよ』
そう言い終わると、もう声が聴こえなくなっていた。
……やっぱり、コアには意志があるんだな。
ムラクモや福音が特別って訳じゃないようだ。
武装欄から、ハンドガン二丁を選択すると、掌に粒子が集束し、それが形成されると同時に三つ目のシグナルが点灯し、カタパルトから勢いよく射出された。
そのまま放物線を描き、規定位置に到着すると同時に一夏が口を開いた。
「……ヒルト、悪いが今回は勝たせてもらうぜ。 勝ってあの人に俺が弱いと言ったことを、訂正させなきゃいけないんだ」
「……気持ちは分からなくもないけどさ。 そんなに弱いって言われたこと許せないか?」
真っ直ぐと一夏を見据え、返事を待ってると暫くしてから頷き――。
「……あぁ。 ……前にも言ったが、俺だって努力してる。 それを何も知らないあの人が俺の努力を否定する権利はないはずだ」
「……ならさ、周りから一夏は強い強いってちやほやされる方がいいか? ……弱さを認めるって、難しいけど大事な事だと思うぞ?」
夕焼けの陽が、俺達二人を照らす。
観客席に移動する女子の一人――篠ノ之の姿がハイパーセンサーで捉えられた。
息を切らせ、何度も呼吸を整えてるのが見える。
「……御託はいい。 今やることは、ヒルトに勝ってあの人勝つ。 ……それだけだ」
言ってから構えた雪片を斜めに振るい、左腕を俺に翳す。
シグナルが点灯し、俺も模擬戦の準備を行う。
直ぐに二つ目のシグナルが点灯――そして、三つ目が点灯するや、模擬戦が開始された。
「先手必勝だッ! 月穿ッ!」
翳した左腕の掌に紫電が走る――甲高い高周波音が辺り一帯に響き、小さな閃光を放つ。
次の瞬間には、高出力の荷電粒子砲による射撃が迫ってくる。
勿論、急降下してその一撃を避けるとハイパーセンサーとセンサー・リンクを接続するや、視界にターゲットロックするマーカーが現れる。
……これで皆は射撃補正を行ってるのか、便利だな。
そう思いつつ、最大火力で荷電粒子砲を放って動けなくなってる一夏に、ハンドガン二丁による連射。
排出された空薬莢は、地上に落ちると小さく金属音を鳴らせていた。
「クッ……! 左腕を狙ってくる……!?」
一夏の言葉通り、左腕の武装腕を集中的に狙う俺。
大きく旋回をしながら、低威力のハンドガンで集中攻撃を行い、弾装が空になると前もってリヴァイヴのシールド内側に備え付けた弾装を勢いよく空に踊り出させ、空中で弾装の装填を行うと、また射撃を開始する。
ハイパーセンサーがあるからこそ出来る芸当で、普通の人間が空中に舞うマガジンをそのまま装填する事は無理に等しい。
「……やっぱり射撃戦は分が悪い! ハアァァアアアッ!!」
ハンドガンの弾丸が当たるのも構わず、瞬時加速で間合いを詰める一夏。
乾いた火薬音が鳴り響き、弾丸は白式のバリアに当たっては塵となって消え、確実にエネルギーを減少させていった。
「零落白夜で一気に決める……ッ! うぉぉおおおッ!!」
叫びがアリーナに響き渡る――雪片の展開装甲が開き、目映いばかりに光を放つ光刃が刀身を覆った。
すれ違い様を狙うように横に雪片を構える一夏――そして、横に振り抜く――。
「――何ッ!?」
「……いい加減学習しろよ、真っ直ぐ突っ込んでくる奴を避けるなんて、ザラだろ?」
小さくスラスターを噴かせ、横に振り抜いた光刃を避けきると同時に新たな弾装をシールド内側から勢いよく空に出す。
特殊AP(アーマーピアシング)弾入り弾装を装填すると、直ぐ様背部ウィングスラスター両基の薄い部分をロックし、トリガーを引いて射撃する。
ウィングスラスターを貫通した弾丸は、シールドバリアーに阻まれるも、当たったスラスターは小さな爆発を起こし、更にシールドエネルギーも減らした。
「がぁッ……!? く、……スラスター狙ってくる何て……! しかも、さっきまでのハンドガンの威力じゃねぇ……ッ!」
小破したウィングスラスターからは煙を上げていた。
だが、この程度なら1日あれば修復も可能だし問題ないだろう。
雪片を構え直した一夏は、間合いを詰める様にまだ辛うじて起動出来たウィングスラスターを噴かし、接近戦を仕掛けてくる。
「接近戦になればこっちのもんだ!」
「……!」
詰めたと同時に行う袈裟斬りを、左腕に備わったシールドで受け止める。
零落白夜の光刃から発する粒子エネルギーに何とか耐えるが、徐々にシールド外側の厚い部分が熱で赤く溶け始めてくる。
「このまま押し切るッ! 悪いが……今日は俺が勝つ!!」
雪片を両手で持ち、更に強引に力押しでシールド事斬ろうとする気迫が伝わってくる。
右掌でハンドガンを回し、雪片を握った左手目掛けて集中的に射撃を行う。
乾いた火薬音が鳴る度に、一夏のシールドバリアーを突破した弾丸は左手に直撃――堪らず一夏は苦悶の表情になると共に左手を手放した。
「……悪いな。 注意散漫だぞ、一夏!」
「チィッ……!?」
舌打ちする一夏の一瞬の隙をつき、力任せにシールドを使って胸部装甲に打撃、その衝撃によろける一夏に、脚部装甲のスラスターを全開に噴かせたローリングソバットを叩き込む。
「グハッ……! く……ッ!?」
勢いのついたソバットの一撃に、きりもみしながら一夏は墜落していく――。
その間も、攻撃の手は休めず、両手に構えたハンドガンによる追撃を行いながら墜落する一夏を追う。
堪らず一夏は腕をクロスさせ、防御体制を取るが情け容赦の無い弾丸の雨は、無情にも一夏のシールドエネルギーを確実に減らしていく。
すでに雪片もハンドガンの衝撃に持っていた手から落ち、白式よりも先に地面に突き刺さっていた。
そして、地面に墜落した一夏――刹那、激しい轟音がアリーナに響き渡る。
衝撃に苦痛の表情を見せる一夏は、身体を起こそうとし、左腕の雪羅をブレードモードに切り替えようと行動した。
「……無駄だ」
起動した左腕を封じる為、右脚部で手首を抑え込む様に踏みつける。
基本保護されてるため、一夏の身体にダメージは無いが端から見ると悪役にしか見えないだろう。
……だが、時に勝負とは非情な物だ。
モンド・グロッソの試合の入ったデータを見たことあるが、俺と同じ様に腕を封じ込める戦法を行う人も多数居た。
「これで武装は全て封じた。 降参しろ」
「く……クソッ! そんな決定権、お前にあるのかよッ!!」
まだ敗けを認めない一夏に、俺は左腕の盾をパージする。
パージした衝撃に、白煙が立ち込める中、六九口径パイルバンカー《灰色の鱗殻(グレー・スケール)》、通称をシールド・ピアースと呼ばれるそれが姿を現した。
シャルも基本的にあまり使わない最大攻撃力を持つこのパイルバンカーは、基本狙い通りに相手に当てられるかは分からない。
だが、この状況は必殺必中――狙いを外す事も無い上に、まだ手に握られていたハンドガンにも弾丸は込められている。
「最終警告だ。 ……降参しろ、意地でも負けないって言ってるがこの状況の打開はお前には無理だ」
「……それはどうかな――ガハッ……!?」
一夏の言葉を待たずに、俺はシールド・ピアースの一撃を腹部に叩き込む。
今の一撃で、雪羅のブレードモードが解除された――つまり、エネルギーがほぼ底をついている。
「……無駄な抵抗するな。 もう零落白夜も使えなきゃ、雪片も手の届かない所にある。 更に言ってしまえば何か行動しようものなら俺は再度これを叩き込まないといけない。 ……降参しろ、一夏」
そう言って、俺は左腕のシールド・ピアースとハンドガンを腹部に押し当てる。
それでも一夏は――。
「降参は……しねぇ!!」
何がそこまでの意地を見せるのかが分からないが、降参しない以上勝ち負けは決まらないので――。
「……そうか」
静かに、呟くその言葉は静寂に満ちていたアリーナに響き渡る。
そして、次の瞬間には無情な鉄杭が一夏の腹部に撃ち込まれた。
絶対防御が発動し、エネルギーが無くなると同時に試合終了のブザーが鳴り響く。
……これが戦場なら、一夏はミンチだな。
そんな考えを他所に、俺は空へと躍り出るとピットへと戻っていく。
ハイパーセンサーには、悔しそうに地面を叩く一夏の姿を映し出していた……。
後書き
とりあえず書いてみた
次は甲龍編書きますφ(..)
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