SM的スポーツジム
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#2移動
不意に不安げな表情を浮かべた文音が「私とじゃ嫌ですか」と問う。
「そんなことない! 全然ない!」
祐次が大げさに首を振る。それを受けて文音は安堵するような笑みを浮かべた。
手にした飲み物が空いたら二階へ、と文音が話をまとめた。
静かに頷く祐次だが、内心は穏やかではなかった。
スポーツ飲料の缶を口につけながら、文音をじっと見つめている。彼女が何を思っているのか知りたくて堪らなかった。
文音は視線に気付いて、口元を小さく歪めた。
それから、腕を上げて缶を大きく傾ける。
最後の一口を飲み干す姿に、祐次は魅入られていた。
白い喉が動く様も、露になった腋に滲む汗も扇情的だった。
空になった缶を机に置いて、文音は微笑みながら言った。
「ごちそうさまでした」
祐次は胸を高鳴らせながら、慌てて手にした缶の中身を飲み干した。
*
階段を上る。
先頭に立つ文音は如何なる空間が待っているかを知っている。
対して、祐次の表情には不安が滲んでいた。
眩しいぐらいに照明が使われていた一階から離れるにつれて、薄暗くなっていく。到着したフロアは同じ建物の中とは思えなかった。
スポーツの為に作られた施設とは考え難い、妖しい空気が漂っている。
カップル専用とされているのが、余計に淫らなものを思わせた。
「な、なあ……」
一階とは全く異なる雰囲気に圧倒され、祐次は文音に声を掛けた。
しかし、彼女は何も答えず、振り返りもしかなかった。
(……変な夢でも見てるのか?)
文音の態度に違和感を覚え、首を傾げた祐次が自身の頬を抓ってみる。
痛みはしっかり感じられた。
階段を上がってすぐのところにはロッカーの並んだ空間が広がっていた。
文音はそこで二人の女性スタッフに声を掛けていた。
スタッフはどちらも若く美しい女性だった。一階で見掛けた従業員と同じ制服を着ている。
(じゃあ、やっぱりここもジムの中だよな……)
何か理由があって、妖しい空気を演出しているのかも知れない。
そう思いながらも不安は抜け切らない。
祐次の下へスタッフが近付いてくる。文音は二人の後に続いていた。
初めての利用者に対する説明でも始まるのだろうか。
そんな考えが頭を過ぎった直後、女性スタッフは両脇から祐次の身に抱き付いた。
「えっ、うわっ、なっ、何ですか!?」
驚愕しながらも、祐次は彼女達を振り払うことが出来なかった。
押し付けられる身体の柔らかさや、全身から漂う良い匂いに捕らわれてしまっていた。
「先輩っ」
愉しげな文音が声を掛ける。
彼女はスタッフ達の取った行動に驚いている様子がなかった。
「な、なっ、なんなんだ、これ!?」
「先輩には、相応しい格好になってもらいます。……裸に」
祐次は目を見開いた。
二人の美女に挟まれ身動きを封じられる彼の眼前に立っていた文音が、ぴょんと横へ跳んだ。
「ほら見て」と指された光景に、祐次は呆けた声を漏らした。
一組の男女が歩いていた。
女の手にはリードが握られており、その先には首輪を着けられた全裸の男。
呆然とする祐次の耳に、文音の明るい声音が届く。
「さ、スタッフさん達、お願いします。脱がせちゃってください」
彼女の言葉に応じて、左右の美女が動きを出す。
服に手を掛けられた祐次はハッとして「やめてください」と声を上げるが、全くの無駄だった。
美人スタッフは彼の股間を撫でたり、豊満な胸を押し付けたりと淫蕩なやり方で迫った。
祐次の頭に、相手は女だと言う認識が強く刻まれる。乱暴に押し退けることは出来なかった。
彼はあっという間に全裸に剥かれてしまった。
脱がされたレンタルウェアはスタッフの手によって、ロッカーへ放り込まれた。
錠を掛けられ、鍵は文音へと手渡された。
「ふっ、文音、か、鍵を……!」
股間を隠しながら彼女に駆け寄る祐次の身体を、背後から女性スタッフが羽交い絞めにする。
「うぐ……ぐ、ううう……」
羞恥で赤く染まる祐次の顔をじっと見つめながら、文音は手を伸ばした。
「あうっ、うう、ふ、文音、どうしたんだよ、なんなんだよ、これ!!」
文音のしなやかな指は睾丸を握っていた。
狼狽する祐次に対して文音は落ち着いた様子で声を掛けた。
「ここでは、女の子に逆らっちゃ駄目なんですよ」
祐次は何かを言い掛けるが、文音はそれを黙らせるように睾丸を握る手に力を入れた。
鈍い痛みに呻く彼に、文音が口元を歪める。
「……どうせなら、愉しく汗を掻きましょうよ。痛いのは嫌ですよね?」
痛みと羞恥で顔を真っ赤にする祐次の瞳には、後輩の見たこともない表情が映っていた。
嗜虐的な笑顔。愉悦と侮蔑。
見下すような眼差しに、端の吊り上った薄い唇。
祐次の背筋にゾクゾクとしたものが這った。
その正体が虐げられる悦びだとは気付かずとも、ペニスは膨らみ、上を向いて、発情の様相を呈するのだった。
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