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空虚で無気力な青年が異世界で新生活~改訂中~

作者:Rabbit
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第11話 約束

今朝、クラインにノイとヤッているところを見られてしまった。

おっと、違った。寝技の訓練だった。

昨夜は腹が減っていたはずなのに、クラインの予想外の格好とノイの発言によって就寝という選択をしてしまった。

そのせいで、今朝は結構食った。

朝食なんて、数年振りに食ったよ。

腹も膨れたことだし、仕事をしますか。

ということで、ノイやクラインと一緒にギルドへと向かっている。

「それより、シュトラーセ」
「ん?」
「お前の素顔、初めて見たぞ」

俺の素顔?

あぁ、そういやヤッテる時はフードしてなかったからな。

「かなり、その……。カッコイイのだな…」

!!

何だと!?

1ミクロンも自慢ではないが、俺の前世での顔は平々凡々の顔だったはず。

モテた……という記憶も無い。…悲しいことにな。

まぁ、それでも何回かコクられたことはあるがな。

全部断ったけど。

好き、あるいは少なからず好意を持っている相手ならまだしも、相手は俺の嫌いな同級生だったから。

報われねぇ……。

大体察しは付いたと思うが、俺は前世では童貞だった。

悲しいことにな……。

その理由としては、いくつか考えられる。

俺がモテなかった、彼女というのが面倒だった、男友達といる方が楽じゃん?

という、まぁ負け犬的な言い訳が理由だ。

……止めよう。

朝からテンションが下がるだけだ。

…まだ理由があるが、これはいいだろう。

「どうした、シュトラーセ」
「いや、別に。で、俺の顔だったか?」
「私と同じ黒髪の短髪で、瞳はルビーだった」

髪は前世と同じか。

前世でも基本は短かった。

短かったが、ボウズではない。

小学生の時はボウズだったが。

「へぇー」
「何だ、嬉しくないのか?女の子に言われたんだぞ?」
「嬉しいぞ」
「…本当か?」

ちゃんと嬉しいんだが、そう見えないようだな。

心の中では歓喜に震えている。

「そんなことはない。心の中では、歓喜のあまり涙が止まらないほど感動している」
「そこまでいくと、逆に嘘臭いな」
「俺もそう思う」
「はぁ……。忘れてくれ」

呆れられてしまったようだ。

まあいいや。

「それより、シュトラーセ」
「今度は何だ」
「朝食を食べている時、やけに視線を感じなかったか?」

視線?

特に感じなかったが……。

理由については、何となく予想はつく。

「説明しよう。ノイが言っていた通り、ノイは昨夜から俺の部屋に居た」
「ああ」
「その時からヤッていたわけだが、声は漏れることは無かった。事前にノイが、風魔法の応用で声を漏れないようにしていたらしい」
「なるほど」

ちなみに、このことは今朝聞いた。

「だから、今朝は俺が〔サイレンス〕という魔法を使って、部屋の声を外に漏れないように遮断していたわけだ」
「ふむ」
「だが、お前が部屋の扉を開けたお陰で、魔法の効力は切れてしまった」
「なるほど。……ということは」

察しがついたようだな。

「だから、最後のノイの声は宿中に響いたことだろう。実際のところはノイが相手だったが、周りの人間は相手がお前だと考えるだろう」
「……やっぱりかーっ!!」

突然のクラインの大声に、まだ朝は早いほうだが人はいるわけだ。

通りを歩いていた人たちが驚いた顔で、クラインへと視線を向ける。

だが、当のクラインはそんなことを気にしている余裕は無い。

壁に手を当てながら、何やらブツブツ言っている。

怖いな、おい。

仕方ない。慰めてやるか。

俺はクラインの肩を叩き、慰めの言葉をかける。

「まっ、気にすんな」
「お前のせいだろう!!」

怒られた。

だが、見事なまでに真っ赤だ。耳まで赤くしている。

「別に害は無いだろ」
「私が不埒な女だと思われただろう!!それに、私は猛烈に恥ずかしい!これは実害だろうが!!」

不埒って……。

子孫繁栄に必要な行為なんだから、不埒ってことは無いと思うんだが。

「周りも面白がっているだけだ。言って来る奴がいたら、適当に流せばいい」
「確かにそうかもしれんが、気になるんだ!」

俺が何を言っても無駄そうだな。

もう何も言うまい。

唸るクラインは無視して、ギルドへと向かうことにしよう。

唸りながらも、クラインはちゃんと歩いている。

もう済んだことを考えても、仕方ないと思うんだが。

ギルド入口の扉を開けると、思ったより人がいた。

早起きの奴らばっかだな。

俺の場合、今日は寝技の訓練があったからな。

…明日はフェラで起こしてもらうように、ノイに言っておくか。

つうか、今朝も中で出しちまったな。

まだ避妊の魔法は考えてないんだが。

まあ、出来るかどうかも不明だけど。

「何をしている、シュトラーセ」

いつの間にか復活していたクラインに急かされ、俺は掲示板へと歩いていく。

今度は何の仕事をするか。

「今度はノイも一緒に行ってみるか?」
「行ってみるニャ」

行きたいようだ。

じゃあ、討伐系はちょっと止めるか。

訓練が必要かな。…俺もだけど。

「護衛とかはどうだ?」
「護衛か。難しいんじゃないか?」
「ノイは魔法が使えるのだろう?なら、3人もいれば余程の数が来ない限り、大丈夫だろう。目的地も隣街だ。それほど距離も無い」

確かにそうかもな。って、待て待て。

「一緒に来るのか?」
「言ったであろう。お前に興味がわいたと。嫌なのか?」

あ~、そうだな。

当分、旅の仲間を増やす予定も、増やせる予定も無いから良いかもしれん。

「こんな美少女と旅が出来て、嬉しいだろう」

自分で言うなよ。

だが、美少女なのは間違いないから否定も出来ない。

「いや、別に。よろしくな」
「ああ」
「本気かい、クライン。そんなEランクの奴と、旅をするつもりなのかい?」

クラインと改めて挨拶をすると、変な男が寄って来た。

何だ、こいつは。

「何か用か、モーブ」

………モーブだってよ!

ハッハッハッハッハッ!!

と笑いたいところだが、面倒なことになるのは目に見えているので必死に笑いをこらえることに全力を注ぐ。

「君みたいに実力のある冒険者が、こんな低レベルの奴と一緒にいたら、君まで低レベルになってしまう」
「誰と旅をするかは私が決めることだ、モーブ」
「僕は忠告をしているだけだよ。君のように実力のある者は、同様に実力のある者と組むべきだよ。例えば、僕とかね」
「彼はまだ冒険者になったばかりだ。ランクが低いのは当然だ、モーブ」

……くっ、ダメだ。

クラインが奴の名前を言う度に、俺のポーカーフェイスが崩れそうだ。

耐えろ、俺!!

「どうしてこんな奴と一緒に居るのか理解に苦しむよ、僕は」
「自分の実力をひけらかす貴様と、シュトラーセを一緒にするな」

クラインさんや、それは言ったらダメだよ。

こういう奴は、それだけが生き甲斐なんだから。

俺の腹筋も限界が近い。

さっさと依頼を受領して外に出ていよう。

掲示板に掲示されていた紙を取ると、受付へと持っていく。

「…今の言葉は納得できないな。この僕が、あんな奴に劣ると?」
「そう聞こえなかったのなら、貴様の耳は飾りか?」

オゥ、クラインさんや、どうした。

やけに辛辣だな。

どうやら俺が脱出できるまでの時間はそう無さそうだ。

急ぐとするか。

「言ってくれるね。なら、1つ賭けをしようじゃないか?」
「賭け?」
「彼と勝負をして、負けたら相手の要求を飲む。というのはどうだい?」

モーブと目が合ってしまった。

……HQ!脱出失敗だ!

くそっ!ダンボールを被るべきだったか!

コードレッドが発令された!

大佐!何とかしてくれ!!

「もし僕が勝ったら、クライン。君は、僕と2人で旅をしてもらうよ」

おー、分かり易いくらいにクライン狙いだな。

クラインの方は……。

短い付き合いだが、今まで見たことも無いくらい表情が歪んでいる。

かなり嫌そうだ。

「こちらが勝ったら?」
「金貨50枚+君に二度と話しかけないことを約束するよ」

…おや、いつの間にかやる方向で話が進んでいる?

だが、金は魅力だな。

クラインも相当嫌そうだし、恩を返すのも悪くないか。

「シュトラーセ、いいな!?」
「イエッサー!」

クラインさん、顔が般若っす。

めっちゃ怖いっす。

まあ、金のために頑張ります。

金貨50枚もあれば、しばらく仕事しなくても大丈夫そうだ!
 
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