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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第543話】

 
前書き
早めな更新 

 
 午前の授業が終わり、昼休み――午後からはいつもの様にISを使った実習がある。

 それはそうと昼休みという事で昼食を食べてる俺の周囲にはいつもの如く――。


「ヒルト、私が食べさせてやろう」

「あ、ラウラずるいよ! 僕も食べさせてあげる」

「な、何あんたたち二人抜け駆けしようとしてんのよ!! アタシがヒルトに食べさせてあげるんだから!」

「おー? 鈴音も抜け駆けだー。 ヒルトー、先に私が食べさせてあげるー」


 ――狭い共用机に群がる女子、女子、女子……一応言っておくと篠ノ之、鈴音、セシリア、シャル、ラウラ――と簪もちゃっかり居た。

 後は美冬と美春、未来、理央と玲、静寐に本音、セラにティナと……多すぎる。

 因みに一夏は反省文を書かされてるらしい――詳しく聞いてないからわからないが、やはり学園の危機に飛行禁止区域を瞬時加速で移動していた時に自衛隊機である打鉄数機に取り押さえられたとか。

 まあニュースになってない辺りがまだ織斑千冬の加護があるという事だろう。


「お兄ちゃんモテモテだねー」

「…………美冬、足を踏むな」


 満面の笑顔の美冬だが、俺の足をグリグリと何度も踏みつけていた。


「あ、ヒルト君、口許にソース付いてるよ? ……はい、綺麗になった」


 ……まるで介護を受けてるみたいだ、口許をハンカチで拭ってくれた静寐に頭を下げつつ食事を続けていると――。


「君、後で少し時間を貰えないだろうか?」

「え?」


 そう言ってきたのはエレン・エメラルド――既に食事を摂り終えたらしく、トレイを持っていた。


「おー、ヒルトに用事かー? 織斑に行かない辺り、見る目あるぞー」

「ま、まあそんな所だ。 ……放課後でも構わない、少しだけ私に時間を作って貰えないだろうか」

「ん、わかった。 じゃあ放課後な」

「うむ、楽しみにしている」


 そう言って立ち去るエレン――ひそひそ話が聞こえてきた。


「……ヒルトさんは直ぐに女性と仲良くなりますわね」

「あら、セシリア、そこが彼の魅力じゃない?」


 ティナとセシリアの会話に、セラが小さく頷きながら応える。


「うん。 ティナのいう通り。 ヒルトは皆に大きな愛を与えてくれる存在」


 何気に聞いてる俺が恥ずかしくなりそうな言葉だ、すると篠ノ之は――。


「む……あ、愛が大きすぎるというのも問題ありそうだが……」

「そ、そうよそうよ! 誰か一人にその愛を捧げなさいよ!」

「鈴さん……その場合ですとヒルトさんが捧げる一人の方というのが決まってしまう可能性がありますわよ……」


 そう言い、セシリアは未来を見ると未来は瞳を丸くさせた。


「そ、それよりもさ! 早く食べちまおうぜ! ほらヒルト、俺のも食えよ」


 理央もそう言って俺にご飯を食べさせる、まるでガチョウになった気分だ。


「りおりおずるいー。 ひーくん~、私も食べさせてあげるー」


 本音も発奮したらしく、一口掬って口許に――。


「あ、じゃあ私も私もー」


 便乗するように美春まで俺に食べさせようとしてきた――更に簪も。


「ここは私もそれに便乗するのが最善の手、だから私もヒルトに一口食べさせるけど――」

「こほん! ……ならば私も有坂――否、ひ、ヒルト……に食べさせるとしよう。 うむ」


 軽く咳払いする篠ノ之、何気に下の名前で呼ばれたが――。


「有坂君、モテモテだねー」

「今なら織斑君を狙うチャンス……?」

「あ、でもでも……最近織斑君よりもヒルト君の方がかっこよくなってきたなーって思うな」


 そんな会話が聞こえてくる……ガヤガヤと賑やかな食堂、先日の事件が嘘の様に感じる平穏さ、そして……口許には無数の掬われた食べ物類。

 ある意味女難なのだろうか――そんなことを思う昼休みだった。

 そして放課後、授業も終わって生徒も疎らになった教室。

 エレン・エメラルドを待っていると小走りで彼女は走ってきた。


「すまない、待たせてしまったか?」

「いや、全然待ってないさ。 これがな」

「……うむ、では行くとしよう」

「んと……何処に行くんだ?」

「そういえば言ってなかったな。 ……灯台へ行こう、そこでならゆっくり話も出来る」


 促され、俺達二人は教室を後にし、一路灯台へと向かう。

 潮の香りが鼻孔を擽り、カモメの鳴き声が小さくこだまする。

 灯台の下、俺は地面に腰掛けると彼女――エレン・エメラルドもその隣に腰掛けた。

 互いに言葉を交わす事なく、暫く夕日を眺めていると――。


「……君のおかげだ、今私がこうしていられるのも」

「え? ……俺は特に何もしてないはずだが」


 首を傾げてそう告げると、風に靡くエメラルドグリーンの髪をかきあげながら小さく笑みを浮かべる。


「いや、今こうして君の隣にいられるのも――私を縛っていた鎖から解き放ってくれたのも君だ。 ……君とあの場で刃を交えていなければ、私は今こうしてこの場にいることもなければ軍から命令を受けて汚い仕事をしていただろう」


 そう話すエレンの表情に陰りが見える――それを悟られないようにする為か僅かに顔を逸らしたエレン。


「……ともかく、私は君のおかげで運命が変わったともいえる。 ……私にとっては君は恩人だ、可能な限り君に協力したいと思う」

「協力って……何の?」

「む……そう言われると難しいものだな……ふむ」


 腕組みして考えるエレン――夕陽に照らされた横顔が綺麗に映る。


「協力とかは気にしなくていいさ。 これからは同じクラスの仲間なんだしさ」

「む、ぅ……」


 納得がいかないといった表情を見せる――なんだかんだでコロコロと表情が様変わりする彼女は十代の女子にしか見えなかった。


「まあ気にするなって。 それと……君も悪くはないがヒルトって呼んで構わないぞ」

「む? ……そ、そぅか。 ……なら私の事はエレン――或いはエリー、又はE.Eと呼んでほしい」


 そう告げる彼女は夕陽に照らされてるせいか顔が赤く染まっていた――。


「じゃあ……エリーかE.Eのどっちかで呼ぶよ」

「う、うむ。 君の好きに呼ぶといい。 ……は、話は以上だ、戻るとしよう」


 そう言って立ち上がるエリーだが、地面の欠けた窪みに足を取られてバランスを崩してしまう。


「危ないッ!!」


 海に落ちかける彼女の手を咄嗟に取り、引き寄せるとそのまま彼女は俺の上に倒れ込んできた――女性一人分の加重が加わるも、柔らかな乳房の感触が妙に心地好かった。


「エリー、無事か?」

「…………っ」


 返事がなく、徐々に赤面していく彼女――端から見ると俺が押し倒されてる光景にしか見えないだろう。

 ふと視界にエリーの大胆に開いた胸元が見える――谷間が強調され、俺の胸板に潰されたそれは柔らかな感触を伝えてくれていた。


「す、すすすまない! わ、わざとではないのだ!」


 慌てて飛び起きようとする彼女だが、俺が腰に腕を回してるせいか起き上がれず、身悶えするしかなかった。


「うぅぅ……」

「どうした、エリー?」

「き、君が離してくれないのが……ぅぅ」


 恥ずかしいのか顔を真っ赤に染め上げたエリーに、流石にそろそろまずいなと思った俺は解放することにした。

 刹那、勢いよく立ち上がる彼女――湯気が出るぐらい赤く染まった表情のまま――。


「で、ででででわ、こ、ここ此にて失礼いたしまする!!」


 そう告げ、脱兎の如くその場を後にしたエリー――彼女の温もりが未だに残る中、俺は沈んでいく夕陽を眺めていた。


「~~~~~~ッ!! ま、まだ心臓がバクバクしている……!」


 どれぐらい走ったのだろう――気付くと寮近くの公園に居た私は荒い呼吸を整えていた。


「ふ、不意の事故とはいえ……か、彼とあれだけ密着することになるなんて……!!」


 思い出しただけでも恥ずかしくて卒倒しそうだった――何度も呼吸を繰り返す中、エレンは呟く。


「……だけど、暖かかったな……彼との一時は……」


 そんな呟きも、風の音にかき消される放課後だった。 
 

 
後書き
次回から多分九巻?

一応原作一夏の瞬時加速連続で学園の危機に間に合うってのは過去巻に確か町中でISは云々って何処かで出てたからそれ拾っての結果っす

まあここでの主人公はヒルトだし 
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