| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

空虚で無気力な青年が異世界で新生活~改訂中~

作者:Rabbit
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第12話 思想

成り行きで進んでしまった話により、俺がモーブ……。

くっ……。

自分で言っても笑っちまう。…まあ、奴と戦うことになった。

今日は奴に用事があるということなので、明日戦うことに。

だから、今日は訓練に当てることにした。

剣の師について聞いてみたら、クラインが多少なら教えれるということなのでご教授してもうことに。

街のそばにある平野で、訓練を始めた。

「ふぅ……。少し休憩しよう」

1時間程を基礎に当て、1時間だが簡単に斬り合ってみた。

分かりきったことだが、勝てるわけないわ。

影使ったら勝てるかもしんないけど、純粋に剣術だけなら無理だよなー。

クラインが休憩しようと言うので、刀を仕舞い地面に腰を下ろす。

ちなみに、ノイはここから見える木陰で昼寝をしている。

寝る子は育つってか。

「シュトラーセ」
「ん?」
「今さらだが、本当に良かったのか?あいつとのことに関しては、お前は関係無いことだ」

巻き込んだお前が言いますか?

でも、まあ。

「そういう話になったんだから、しょうがねぇだろ。お前に借りを返す良い機会だ」
「シュトラーセ…」

金貨50枚というのも惜しいからな。

待てよ。ああいう奴は、自分の実力に自信を持っている。

そこを上手く利用すれば、上乗せすることも可能なんじゃないか。

……クックックッ。

「…何か悪いことを考えているな」
「失礼だな」
「私には、お前の両目が金貨になっているように見える」

…俺の欲望が具現化したか。

目は心の鏡とも言うからな。無心、無心。

「…金貨が輝きを増したな」
「バカな!」

これほどまで無我の境地に至っているのにか!?

いや、こんなことを考えている時点でそれは無いか。

「正直に言おう。目的は金だー!!」
「……」

クラインの視線が痛い。非常に痛い。

「だが、クラインに借りを返したいのも事実だ」
「割合は?」
「そりゃー、お前。3:7だよ」
「本音は?」
「7:3だ」

はっ!

思わず即答してしまった。

まったく、正直者だな俺は。俺の長所だ。

「さて、休憩は終わりだ。ビシビシ行こうか」

…短所でもある。というか、短所の割合の方がでかい。






さらに1時間経ち、俺は地に倒れている。

クラインの形相がハンパなかった。マジでビシビシしごかれたよ。

…命の危機を感じたよ。そのお陰で、俺の腕は上がったけどね。

で、今は昼。

クラインは何か食い物を買いに行ったから、俺は休憩。

と行きたいところだが、新しい技の開発と行こうか。

いつまでも【影操】で、動物を出すだけじゃな。

自分で言うのもあれだが、俺は近距離向きじゃない。

中・遠距離向きだろう。

近付かれた時のために、剣を習っているだけだ。

今度は影で何を作るか…。

大量の剣を作って、攻撃?多対一には便利かもな。

当然、一対一にも圧倒するにも有効か。

俺はノイにバリアを張ると、1人森の中へと入っていく。

以前、ナイフの投擲練習をしたところだ。

俺は新しく開発したオリジナル魔法、〔不可視の壁(トランスパレンツ)〕を俺の周囲に展開する。

同時に〔サイレンス〕の広域バージョンも展開。

周囲に透明の膜を作ることで俺の姿を見えなくし、〔サイレンス〕で音を消す。

これで、騒いでも問題無い。

準備が整ったところで、俺はナイフで掌を切り影に血を染み込ませる。

掌の傷は、回復魔法ですぐ治す。

目をつぶり、何十本もの剣を想い浮かべる。

イメージ、イメージ……。

目を開くと、俺の周りに10本ほどの影で出来たユラユラと揺れる黒剣が浮かんでいた。

両刃の剣が出来た。創り出す剣も、想像次第で変えられるのかな。

それは後でいいとして、名前は何にするか……。

「【影操】。形状、【剣舞(シュヴェアトゥタンツ )】」

ちょっと動かしてみるか。念じれば動くかな。

ゴー!

…動かないな。発音か?

Go!

…ダメか。じゃあ、もっとネイティブに言ってみよう。

ゴゥ!

…だよな。そもそも、ネイティブを知らないし。

つうか、発音が問題っていうのがおかしいよな。

念じるが違うとなると…。手でも動かしてみるか?

半信半疑で手を上げてみると、俺の右側に展開していた剣が上へと飛んで行く。

おおっ…!手か!

左が動かないけど、左右の手で動かすのか。

俺は上に向けていた右手を正面へと振り下ろし、左手を外側から大きく回して正面へと向ける。

すると、俺の正面数m先にあった木数本がバラッバラに粉砕した。

結構な威力で。

でも、これを人間に当てたらエライことになるんじゃないか。

…まぁいっか。

さっき思ったのを試してみるか。

剣が消えるように念じると消え、再び剣を創造する。

今度は細かく考えてみる。

半分は日本刀のような片刃のもの、残りの半分はナイフだ。

目を閉じ、想像して創造する。

目を開くと、想像した通りのものが俺の周囲に展開していた。

ふむ、出来たな。

問題なのは、限界がどこにあるかだ。

創造できる物の限界、数、時間などだ。

創造できる物体の幅は大きそうだが、数と創造できる時間は分からない。

追々、調べることにするか。

俺が常時発動している〔気配察知〕に、クラインが引っ掛かった。

一応魔法はあるが、絶対ではないと俺は思っている。

さらに、影は俺の切り札になる存在。

まだ信用していない人間に晒すつもりはない。

ノイも例外ではない。

当然だが俺は、他人をそう簡単に信用するつもりはない。

それが借りのある相手だとしても、ヤッた相手であろうともだ。

この性格のお陰で、前世の大人からは「何を考えているか分からない」とよく言われた。

それを聞いた時、俺は正直に「何当たり前のことを言っているんだ」と思ったものだ。

信用していない人間に、ベラベラと自分のことを話すわけがない。

そんなことをするのは子どもくらいだ。

それを苦に思ったことは無い。自分が信用できない人間に、自分を理解してほしいとは欠片も思わないし、考えない。

同様に、自分が信用していない人間に、信用して欲しいとも思わない。

そんな傲慢なことは言うつもりはない。

人間ほど汚い動物はいない。

騙し、欺き、嘘を吐き、裏切る。

嫌だね、人間ってのは。

明日の決闘。正直、金は惜しいがそこまでして勝つ気は無い。

クラインという、慣れた人間の補助があれば旅をしやすいのは確かだ。

だが、それはそれで弊害もある。

俺は善人じゃない。それは断言できる。

俺の基本理念は、損得だ。メリットとデメリットを考える。

よほどデメリットが大きくない限りは気分で動くこともあるが、事によっては邪魔な人間を殺すことも考えている。

クラインみたいな人間が、こんなことを容認するとは思えない。

いずれ、障害になる。

……何か色々語っちゃったけど、あくまでも予想だ。

まあ、クラインに色々と奢ってもらった状態で言うのも変な話だけどな。

そもそも人を殺すなんて面倒なこと、出来ればしたくない。後処理とか面倒だろうし。

俺は使っていた魔法をすべて解除すると、戻って来たクラインに手を上げて応えるのだった。

ちなみに、クラインが買ってきたのはサンドウイッチのようなものだった。

中々、美味かった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧