空虚で無気力な青年が異世界で新生活~改訂中~
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第7話 単独
林で猫の幼女を拾った俺。
非常に驚いているが、まずはノイと名乗ったこの幼女の教育が完了した。
「わ、悪かったニャ。よ、よく分かったニャ」
ふむ、まだ分かっていないようだ。
では。
「ごめんなさいニャ!ノイが悪かったニャ!だから、お仕置きは勘弁ニャ」
うんうん、分かってもらえて何よりだ。
「で、ノイは本当に迷子でいいのか?」
「迷子じゃないニャ。猫人族は、成人したら1人で旅をするニャ」
成人?その背で?
確かに、一部はその背とは反比例しているようだが。
「ニャ!?シュトラーセ、ノイのオッパイ見てるニャ!」
俺だけ名乗らないのも悪いので、教育の途中で名乗った。
ちゃんと聞こえていたようだ。
「いや?」
「…それはそれで複雑ニャ」
見てたけどな。
どれくらいだろうか。
E。いや、Fはあるだろうか?
「で、ノイは何で俺に突撃かましてくれたんだ?」
「ニャ?良い匂いに釣られて来たら、シュトラーセがいたニャ」
良い匂い?
俺はマタタビなんか持ってないぞ。
「シュトラーセは、お日様の匂いがするニャ。良い匂いニャ」
お日様?太陽か。
そういえば、前にも言われたことがあったな。
「まあ、それはどうでもいい」
「どうでも良くないニャ!大事なことニャ」
「はいはい。で、ノイはこれからどうすんだ?」
「何言ってるニャ?シュトラーセについていくニャ」
いや、何を当たり前のことを、みたいな顔されても。
猫人族では、匂いが良いかどうかが大事らしいな。
俺にそんな自覚は無いが。
だがまあ、悪いことばかりではないか。
俺、猫好きだし。
「1人で旅するんじゃなかったのか?」
「それは最初だけニャ。一緒に旅するパートナーを見つけたら、一緒に旅するニャ!」
何だそれは。
というか、そんな結構大事なことを匂いだけで決めていいものなのか。
…本人が良いって言ってるから、いいのか。
「じゃあ、一緒に行くか」
「行くニャ!ありがとうニャ!」
ノイは満面の笑顔を浮かべると、立ち上がり俺の背中に張り付いてくる。
「この状態で行くのか?」
「嫌ニャ?」
「嫌というか…」
その巨乳が背中に当たりまくっているんだが。
猫人族の特徴なのか、着ている服は薄い。
直接ではないとはいえ、ダイレクトに近い感触だ。
巨乳に触れるのは初めての体験だ。
とはいえ、これは少々目に毒だ。
俺にとっても、街の男連中にとっても。
俺は創造魔法で簡単なローブを創ると、ノイに着るように言う。
「これ着るニャ?」
「ああ」
「わかったニャ」
思ったよりすんなりと従ったな。
生地はそれほど厚くは無いが、防刃・魔法耐性も付与してある。
俺の煩悩も多少だが抑えることが出来て、一石三鳥だろう。
俺は立ち上がると、リムンヘルドの街へと再び入っていく。
さて、そろそろギルドの仕事をするか。
いつまでもクラインに金を払わせるわけにはいかない。
ヒモになってしまう。
ということで、ギルドに行こう。
クラインもいるだろうし、丁度良いだろう。
「シュトラーセ、どこ行くニャ?」
「ギルドだ」
「何するところニャ?」
「仕事を受けるところだな」
「…ニャるほど」
猫人族には、仕事という概念が無さそうだな。
自給自足で生きているんだろう。
まあ、すぐに慣れるだろう。
ギルドへと向かいながら、ノイと交流を図るとするか。
「ノイの故郷はどこだ?」
「あっちニャ」
…何ともアバウトな答えだ。
ノイの指差した方角は、東か。例の聖教国とやらのある方角だな。
「聖教国から来たのか?」
「確か、そんな名前の国があったニャ」
こいつ、俺の予想以上にバカじゃない!?
ちゃんと勉強とかさせれば、まともになりそうだ。
「シュトラーセの故郷はどこニャ?」
「東の海を越えた先だ」
「ノイ、海見たこと無いニャ」
海を見たことが無いということは、内陸部に住んでいたということか。
なら、仕方ないか。
「ノイ、水たまりは分かるな?」
「分かるニャ」
「それのでかいやつだ」
「…身も蓋も無い説明ニャ」
やかましいわ。
言うほど間違ってないはずだ。
「ノイは戦えるのか?1人でここまで来たんだろ」
「聞いて驚くニャ。ノイは、魔法が使えるニャ」
「へー」
「リアクションが薄いニャ…。予想外ニャ」
「何が使えるんだ?」
「風魔法ニャ」
風か。
場所を選ばない魔法かな。
「でも、お父さんは別の魔法も使えたニャ」
「どんな?」
「絶倫だったニャ」
………。
「どういう意味ニャ?」
「まだ知らんでいい」
「分かったニャ…」
不服そうではあるが、一応は納得したか。
しかし、絶倫になる魔法があるのか。
欲しいような、いらんような。
とか何とか考えている間に、ギルドに到着。
ギルドの中に入ると、周囲を見渡す。
「シュトラーセ、来たか」
見つけた。
「…背中に何かぶら下がってるぞ」
「ああ。拾った」
「拾った!?猫人族をか!?」
「拾った」
そんなに驚くことか。
頭だけ振り返りノイを見ると、不思議そうに首を傾げていた。
「猫人族は、この辺りで見かけることは珍しい。居住地域も聖教国付近に集中しているからな」
「そうなのか?」
「よく分かんないニャ」
なら仕方ない。この話は終わりだ。
「それより、仕事をやる」
「一緒に行った方が良いか?」
「いや、1人で行く」
「そうか。では、この子と宿で待っている」
「ノイ。すぐ帰って来るから、この人と待っててくれ」
「ニャ!」
俺はまだノイを背負ったまま、受付へと歩いていく。
俺が来た時と同じ受付嬢だ。
「仕事を受けたいんだが」
「ようこそ、シュトラーセさん。リベレさんによると、中々の腕の持ち主だそうで」
「さあ。他人の評価に興味無いんで」
「そうですか…。申し遅れましたが、私、ハーフエルフのローゼと申します。以後、よろしくお願いします」
「よろしく」
挨拶をすると、ローゼは受付の隣に置かれた掲示板に手を向けた。
あれに依頼が貼り出されているらしい。
さすがに、色々あるな。
護衛に討伐に輸送。報酬も様々だ。
「おススメとかある?」
「そうですね。リベレさんの場合ですと大体、金貨5枚前後の依頼をお受けになることが多いです。報酬が高いものは必然的に危険度も上がりますので、ランクが上がらなければお受けできません」
なるほどね。
じゃあ、これでいいか。
〔北西に位置するシュヴェレ湖周辺に潜む水蜥蜴人の討伐。報酬、金貨5枚〕
俺はこの依頼書を掲示板から取ると、ローゼさんへと持っていく。
「じゃあ、これで」
「…はい。では、印を水晶へ」
手袋を外し、印を水晶に近付ける。
水晶がわずかに発光し、依頼の受領が決定する。
「ところで、ランクとかあるの?」
「…登録の時に、係の者から聞きませんでしたか?」
「いや。俺の潜在能力に興奮してたから、忘れていたのかも」
説明を聞かなくても大体理解できるけど、一応聞いといた方がいいだろう。
「はぁ……。申し訳ありません。そそっかしい子でして」
「いや、別にいいよ。依頼が終わってから聞かせてくれる?」
「かしこまりました。では、お気をつけて」
忘れてたけど、やけにノイが静かだな。
って、寝てるんかい。
俺は冒険者仲間と話していたクラインに近付いていく。
「クライン。行ってくるから、ノイをよろしく」
「ああ、わかった。気を付けて行って来い」
「ああ」
ノイをクラインに預け、俺はギルドを出た。
さて、北西だったな。行きますか。
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