IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第452話】
前書き
遅れぎみ
申し訳ないっす
夕方、太陽はゆっくりと水平線の彼方へと沈んでいく中、親父が借りた車に乗って学園への帰路についていた。
親父が借りた車はファミリーワゴン車で、空中投影ディスプレイが備わった最新設備のある車だった。
「お父さん、わざわざ最新のワゴン車借りなくても良かったんじゃ――」
「ん? せっかくだから乗ってみたくてな! まあ良いじゃねぇか、ワハハハハッ」
真っ直ぐ運転しながら車内には親父の高笑いが響き渡る、窓が空いてる為笑い声が外に駄々漏れ状態だった。
車内に入ってくる秋風、寒くはなくむしろ心地よさすら感じさせた――隣の未来の髪が靡いていて、夕陽に照らされたその横顔は何処か軟らかな優しさ溢れる印象を俺に与える。
「……? ヒルト、私の顔に何かついてる?」
「え?」
俺が見ていたのが気になったのか、不意打ちで振り向いた未来――突然の事で心臓が一瞬跳ね上がった。
そんな様子を悟られないようにポーカーフェイスを装いながら――。
「……強いて言えば、目と鼻と口がついてるぞ?」
「ふふっ、なにそれ? ヒルトにも美冬にもついてるでしょ? あははっ」
少し可笑しかったのか、微笑を溢して目尻を指で拭う未来――その間も車は一路学園へと向かっていた。
学園のある島が建物の合間から見え隠れしていて、遊覧船もゆっくり航行しているのが時折覗き見えていた。
「そういえば――まだあの遊覧船、乗ったことないなぁ……」
美冬がそう呟くと、親父が口を開いた。
「俺は少し前に母さんと乗ったぜ? なかなか良かったぞ? まあカップルばっかりだったがな! ワハハハハッ!」
「ふ、ふぅん……」
何気無く返事をした美冬だが、突き刺さる様な熱っぽい眼差しが俺を捉えていた。
「……なんだ、美冬は遊覧船に乗りたいのか? なら今度親子水入らずで俺と乗るか?」
「えー、お父さんとぉ? ……それならお母さんと二人の方が美冬は良いなぁ……」
「な、何ですとぉー!? しくしく……」
美冬に無下にされ、泣き真似する親父、それを見てクスッと笑みを溢す未来、美冬は親父の泣き真似を気にすることなく投影ディスプレイに映し出されていたニュースに注視していた。
内容はIS関連のニュースで、コメンテーターがこの間のキャノンボール・ファストの専用機持ちの途中までのレース結果を必死に解説していた――因みにこのコメンテーター、一夏贔屓で有名らしい。
曰く、最下位争いに甘んじていたのも最後の周回での逆転劇を演じる為の織斑一夏の演出だとか何とか――訊いてるだけで頭が痛くなりそうだ。
「このコメンテーターの人、いっつもお兄ちゃんの事はボロカスに言うのよねー。 美冬に取材来たことあったけど、断ったもん」
「あ、私も。 何かヒルトの悪いところばっかり訊きたがってたから――」
「かぁーっ! 何でヒルトの悪いところを訊きたがるのかねぇ? 俺の息子だってのに」
言いながら親父はチャンネルを変え始めた、ディスプレイには別のニュース番組が映し出され、最近起きた住宅街発砲事件の事をアナウンサーが喋っていた。
……この住宅街発砲事件は、前回亡国機業の一人で、織斑先生と同じ顔を持った『マドカ』なる人物が起こしたものだ。
あの時、ラウラや親父が間に合わなかったらどうなっていたか……。
一瞬脳裏に過る拳銃の銃口、それに呼応する心臓が徐々にバクンッバクンッと速くなっていく。
頭を振って無理矢理その時の事を忘れようとした俺、美冬もその様子に気付いたのかそっと俺の手の甲に自分の手を重ねた。
「美冬?」
「へへっ……人の手の温もりって、案外安心するでしょ?」
言いながらニコッと微笑む美冬――部屋ならキスしてたかもしれない。
――と、ここで車が左折、IS学園のある島へと繋がる道路へと入っていった、車の姿は基本的に無く、ほぼ独占状態で道を走る。
「……こう車がいないとさぁ、飛ばしたくなるよな」
「いや、親父、いくら学園がどの国にも属してないって言っても交通ルールは日本のものを守らないと」
「ワハハハハッ、わかってるって!」
そう言いつつも僅かに加速を始めた車――まあ多少なら問題ないだろう。
「……明日からは今度の大会に向けての調整かぁ……」
未来が小さく呟く、それに美冬が反応し――。
「だね。 一応機体の整備なんかは二年生の整備科が個人個人に合わせての設定したりするらしいけど――」
「中じゃなく、外回りのバーニアやらの出力調整とかだもんね……。 バランス調整やダメコンチェックは最終的に私達が自分でしないと……」
美冬、未来と二人は今度始まる専用機タッグマッチに関する話を始める――専用機は整備科が弄るとは訊いていたが、俺のもそうなのだろうか?
窓の外を眺めると、学園に停泊しているコンテナ戦からコンテナを降ろす『クサナギ』の姿が見える――IS用強化外骨格『クサナギ』、パワードスーツがパワードスーツを着込む形になる珍妙な光景だが、やはり荷降ろし等では役に立つのかも――と、親父が運転しながら口を開いた。
「そういや、今クサナギが見えてたんだが――アメリカじゃ、今のところ開発が頓挫してるみたいだな。 夏にクサナギを回収した際にしれっとクサナギのデータやら駆動系何かを念入りに調べてたが……。 元々が作業用ワークローダーで開発されてたのを改良、改造したのがクサナギだからなぁ……。 母さん居なきゃ、多分歩かせる事すら叶わないだろうな、わははっ」
一通り喋る親父、夏に危惧した様にアメリカはクサナギのデータ等を勝手に録っていた様だ。
――とはいえ、怒らないのは回収させるには日本の船じゃ載せられない可能性があったのかも。
まあ俺自身、現場見てないからわからないが、戦車等を乗せられる揚陸挺何かを使ったのかも……。
等と考えつつ、揺らめく波間を眺めつつ車は学園のある島内に入り、正門前に入ると俺達は車から降りた。
「んんっ! 久しぶりの車だからかな、ちょっと身体が痛いかも」
降りるなりに美冬はぐぐっと両手を前に組んで軽い柔軟を始める。
ヒラヒラと舞うスカートが気になるが、美冬自身は気にせずに柔軟を続けた。
「後は俺の方で母さんの所に荷物を運ぶから、お前たちは寮に戻って構わないぞ?」
いつの間にか台車が用意されていて、親父は其処にさっき入れた資料の入った鞄を乗せていく――と、中が少し開いていたのかひらりと資料の紙が一枚、俺の足元に落ちてきてそれを拾う。
デザイン画らしく、そこにはずんぐりと丸めなパワードスーツのデザインが――。
「それは母さんが初期案で考えた奴だな。 バッテリーには燃料電池を用いるつもりだったらしい、ISが世に出る前の話だ」
「ふぅん……。 PPSとは違うんだな、見た目もだけど」
「おぅ。 母さんはPPSの量産は今は考えてないが、戦争に利用されないならそっちのパワードスーツの方は作っても良いらしい、作業や危険な場所に入るのに役立つ様にな。 ――まあ、母さんの思惑通りにならないのが世界だからな。 ISが宇宙開発用からスポーツ――とは名ばかりの『兵器』運用されてる実態からすれば……な」
拾った資料を親父は受け取ると、鞄に入れてチャックを閉める。
「んじゃ、明日から基本的に学園の見回りか、正門での受け付けか、お前らや上級生の授業の特別講師をやるからな」
「うーん。 ……こうやって家族集結するってのも、何だか不思議だね? 去年まではお父さんもお母さんも、海外でたまにしか帰って来なかったのに」
柔軟を終えた美冬がそう告げる、風が吹き抜け、美冬も未来も共に風に靡く髪を押さえた。
「……わははっ、まあ良いじゃねぇか、美冬! さて、明日から大会の準備があるんだろ? 今日はもう帰って休めよな! ワハハハハッ!」
台車を押し、親父は高笑いと共に学園方面へと歩いていった、残された俺達三人は互いに顔を見合せ――。
「……とりあえず部屋に戻るか」
「だね。 ……とりあえず、私は部屋でシャワー浴びよっかなぁ……」
美冬がそう言う、一瞬脳裏にシャワーを浴びる美冬の霰もない姿が過り、欲望の塊に血液が集中しそうになった。
「じゃあ私は先にご飯かな、帰って来たら理央や玲ちゃんとご飯食べる約束してるし、ね」
微笑を溢しつつ、歩を進める未来に続いて美冬も歩き出す。
「お兄ちゃん、戻ろうよぉー」
「あ、あぁ」
美冬の呼ぶ声に反応し、俺は美冬達の後を追って寮へと戻っていく、遠方ではクサナギがコンテナを船から降ろす姿が時折視界に入っていた。
後書き
個人的な事ですが、今週の仕事場で短期の男子が殆ど来ず、圧倒的男子の人手不足でピンチに
短期の最終日である水曜日何かは、短期の子が二人しか来なかった
故に、朝の九時から通しで夜の八時半までお仕事
激疲れでした
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