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真・恋姫無双~徐晃の道~

作者:Rabbit
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第1話 二刀一対

プロローグから時間をすっ飛ばして、俺は10歳になった。

おっと、メタっちまったか。

両親もいる。こんな時代だから、片親ってのも珍しくないと思うんだがな。

両親の名前は別にいいだろ?興味も無いだろうし。

「縁、行くぞ」
「どこに?」
「野盗退治だ」

自宅の裏にある畑を耕していると、マイ・マザーが何か言っている。

…えっ、あんた何言ってるんでしょうか。

女神――多分――にもらった『身体能力強化』のお陰で、俺はこの歳ですでに高校生くらいの力がある。

以前、箸を握りつぶしたことがある。

この時代の物だから、柔だったんだろう。

強化されすぎじゃね?

とも思ったが、ゲームを見た限りではぶっ飛んだキャラばっかだったから大丈夫だろう。

そしたら、次の日から鍛錬の日々。

いや、前世でもこんな感じだったから良いよ?

でも、普通の子どもだったら逃げ出してるぞ。

「大丈夫だ。お前はずっと、私が抱えているから」

俺、行く必要無くね?

「可愛い息子と一時も離れたくないという親心だ。わかってくれ、縁」
「無理だよ」

改めて名乗っておこう。

俺は姓は徐、名は晃。字は公明。

で、真名は縁だ。

読みは、「えん」ではない。「えにし」と読む。

良い名前ではないだろうか。

真名というのは、心を許した物だけに教える名前だ。

ゲームやってたから、俺は知ってた。

「気をつけて行ってらっしゃい」

オゥ、今度はマイ・ファーザーが狂ったことを言い出した。

「では、行って来る。行くぞ、縁」
「無理無理無理!!」

俺は反転して逃げようとするが、父に退路を断たれた。

ブルータス。違った。

マイ・ファーザー、お前もか。

「さあ、行くぞ」
「嫌ぁあああああ!!」

いやね、俺には野望があるから将来的にはそういうことも必要だと思っている。

山賊に一度も会わず街へと移動できないだろうし、これから戦乱になるだろう。

10歳とはいえ、下の下の下――多分居ない――くらいの山賊なら俺でも倒せるんじゃないかと思う。

でも、俺にはまだ人を殺すほどの覚悟が無い。

だから、あと数年は待ってぇええええ!!

まあ、俺の願いが届くことも無く、俺の人間の死を目の当たりにすることになった。





行くまでは憂鬱だったが、どうせ行くならとポジティブに考えることにした。

これも経験――早い気もするが――と考え、俺も実戦デビューを果たすことにした。

鍛錬のくだりが無いが、そこは勘弁。いつかは書くと思う。

これもメタ発言か?

「母上、俺も戦うよ」
「……本気か?」

母に抱きかかえられた状態で、俺はそう告げる。

母は身長が高く、さらに力もあるため俺を軽々と持ち上げてしまう。

母は俺を地面に下ろすと、俺と向き合い問いかけてくる。

「本気。俺も母上を、手伝いたいから」
「辛いぞ?」
「うん」
「…いいだろう」

母は肩にかけていた二刀一対の剣を渡される。

「これは?」
「お前に渡そうと思って、造っていたものだ」

父だろうか。

父は武の方はからっきしだが、手先が非常に器用だ。

母の使う戦斧を造ったのも父らしい。

「短い方が『倚天(キテン)』、長い方が『青紅倚天(セイコウキテン)』だ」

何となく、青白い光を放っているような……。

でも、名刀というのはわかる。

というか、この時代に刀?

「それは、伯縁が天啓を受けて造った物らしい」

天啓か。

あの女神か?

ちなみに、伯縁(ハクエン)というのが父の真名だ。

母は零縁(レイエン)だ。

待てよ。何で今、これを持ってるんだ。

まさか。

「何でこれを今持ってるの?まさか、最初から参加させるつもりだったとか?」
「……」

母の眼を見ながら問いかけると、母はフッと目をそらした。

図星かい!!

「そんなことより、早く行こう。夕餉に間に合わなくなる」

全部見抜かれてるみたいで、複雑な気分だ。

母は俺を置いて、スタスタと歩いて行ってしまう。

俺は小走りでその後を追いかけた。
 
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