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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第448話】

 
前書き
超待たせた

若干成樹の未来の呼び方が違うって気づいて修正もしてたり

 

 
 駅から暫く歩き、成樹の自宅でもある喫茶店に辿り着いた俺達三人。

 遠慮する事なく喫茶店の扉を開くと、いつものようにカランカランっと来客を告げる鐘の音が店内に鳴り響いた。


「やあ、いらっしゃい皆」


 コーヒーの豆を引いていた成樹が顔を上げ、俺や美冬、未来の姿を確認するといつもの笑顔を見せた。

 店内には落ち着きのあるBGMが流れている、流行りの店のような派手な音楽じゃないのが俺は好きだ。


「成樹、キャノンボールでは応援ありがとうな?」

「え? ……ふふっ、僕と君の仲じゃないか。 ヒルトには色々助けてもらっているんだし、ね?」


 言いながらコーヒーを淹れる成樹、店内には珍しく女性客の姿が居なく、気品のあるおじさんが窓側奥の席に居るだけだった。

 入り口に突っ立ってても邪魔になるだけなので、俺達はカウンターの席へと並んで座る、間に俺が挟まれる形で左に未来、右に美冬の構図だ。

 座ってる間に成樹はコーヒーと軽食であるサンドイッチを、窓側奥の客の所へと運んでいった。


「……ふふっ、やっぱりここは落ち着くよね、ヒルト?」

「ん? まあ成樹の居る店だからな、店内の雰囲気だって正直言えばカップルがデートに使っても問題ないぐらいなんだし」


 未来が顔を覗き込む形で俺を見てきた、それに俺の心臓は高鳴る。


 不意とはいえ、未来の艶っぽい唇を意識してしまったからだ、グロスが塗られてるのか艶々していてキスがしたくなる。

 一方の美冬は何を頼むか、喫茶店のメニューを開き、まじまじと見ていた。


「デート……。 そうだね、さっきの針葉樹の森にも負けてないもんね、成樹くんのお店」


 ニコッと微笑む未来、その笑顔に僅かに心臓が跳ね上がる――と、お客にコーヒーと軽食を運び終えた成樹が戻ってきた。


「ふふっ、ありがとう飯山さん」

「あ。 ……そういえば、今日は女性客居ないのね、成樹くん?」

「うん。 この時間帯は、女性客も疎らだからね」


 未来の質問に答えつつ、一度美冬の方をチラッと見た成樹、それに釣られて俺も見ると、目を細めてメニューとにらめっこする美冬の姿があった。

 クスッと僅かに微笑を溢す成樹、未来も美冬を見て僅かに口元が緩むがまだ訊きたい事があったらしく、言葉を口にした。


「そうなんだ? ……成樹くんのお店は雑誌とかからの取材とか来ないの?」


 未来が思っていた疑問をぶつける、美冬もその質問が気になったのか、メニューとのにらめっこを止めて成樹を注視し始めた。

 一様に視線が成樹に集中するが、成樹は気にする事なく絶やさぬ笑顔のまま答え始めた。


「雑誌の取材は基本的に断ってるんだよ、父さんの方針でね。 一過性のお客よりも、常連客を大事にしたいから。 ……後、母さんが基本的に恥ずかしがり屋だからね、写真とか撮られたら、多分もっと奥に引きこもっちゃうかもしれない」


 苦笑を溢す成樹、確かにいつも店の奥の厨房に引きこもっていて、接客も現在は成樹が行っている。

 前に来たときは成樹の親父さんは海外に行っていたが、今はどうなんだろうか。


「そういえば成樹、親父さんは帰国したのか?」

「うん。 でも今日は居ないよ、父さんの友達と一緒にスポーツジムで運動して体力をつけてるからね。 ……そろそろ注文聞こうかな?」


 きりの良いところで成樹がそう言うと、小さくお腹の音が鳴った――俺ではなく、美冬のお腹の音だ。

 お腹の音が鳴ったのが恥ずかしいのか、美冬の顔が真っ赤に染まる。


「や、そ、そんなにお腹空いてないよ!? せ、生理現象なんだからね!? むぅ、皆笑い堪えすぎッ!!」


 美冬のお腹の音に、未来も成樹も必死で笑いを堪えていた――俺もだが。

 何とか笑いを堪えると、俺達三人は注文する、俺は軽食のサンドイッチを、美冬も同じくサンドイッチ、後はオレンジジュース、未来は紅茶とケーキを頼んだ。

 注文を聞いたら成樹は一旦奥へと消える、多分成樹のお母さんにケーキを頼んだのだろう。


「むぅ……」

「美冬、あんまり膨れるなよ」

「だって……皆笑いを堪えてるんだもんっ。 好きでお腹の音が鳴った訳じゃないもんっ」


 ますます膨れる美冬、あまり突っ込むと不機嫌になりそうだと思い、俺は話題を変える事にした。


「それはそうと、この後どうする?」

「そうだね……ウインドウショッピングとかは?」

「あ、後はお兄ちゃんをまた着せ替えるとかも悪くないかもっ」

「あ、それも良いねっ」


 間に俺を挟んで会話する美冬に未来、着せ替え人形されては敵わないのだが――と、成樹がサンドイッチを皿に盛り付けて戻ってきた、ついでに向こうで作ってきたのだろう。

 それを俺と美冬の前へと並べ、今度はコップにオレンジジュースを入れ始める――一連の仕草一つ一つが様になっていて、女性客が居れば熱っぽい溜め息がこぼれ落ちていただろう。

 あいにくと、女性客が美冬と未来しかいないから熱っぽい溜め息が溢れる事はないが。


「はい、御待たせしました」

「へへっ、ありがとう♪」


 美冬はそう言葉を口にすると、ストローに口をつけて一口飲む、グラスの中の氷がカランッと小さく鳴る音が聞こえた。

 成樹の方は、直ぐに未来の注文した紅茶の準備を始める、頼んだのはアッサムティーだ。

 あまり詳しくは無いが、確か赤い紅茶だった気がする。

 軽食のサンドイッチを頬張りつつ、成樹の普段の仕事ぶりを観察――と、俺の視線に気付いた成樹は困ったように眉を下げて。


「ふふっ、あまり見られると調子が狂っちゃうよヒルト」

「ん? 今さらかよ。 ――てか、女性客居たら思いっきり見られるだろ?」

「まぁ、ね。 でも、やっぱりヒルトに見られるのと、お客様に見られるのとは違うからね? ――御待たせしました」


 言いながら淹れ終えた成樹は、未来にアッサムティーを出す。

 カップの取っ手を掴むと、一口それを飲んで――。


「ぅん、美味しい……」


 控え目な感想、だが表情を見るに嘘は無く、本心から美味しいと思っているのがわかる表情だった。


「ふふっ、ありがとう。 ……とはいっても、僕はまだまだだからね。 もっと上手に淹れられる様になりたいんだけどね。 ……店の商品を使っての練習はダメだから、消費期限の近い物を使うか、或いは小遣いで遣り繰りしないといけないから――そろそろケーキが出来たか、見てくるよ」


 そう言い残し、奥へとまた消える成樹、店内のBGMが変わり、今度はクラシック曲が流れ始める。


「……成樹くん、遣り繰り大変なんだね。 ……私達って、代表候補生だから一定の支給額あるけど……やっぱり普通の高校生は、アルバイトしてそこからって感じだもんね……」

「だね……。 ――そういえば、お兄ちゃんはお金の管理は大丈夫?」

「…………」


 美冬の言葉に沈黙する俺、殆どが学園の食費に消えていくため、お金は常にカツカツだったりする――まあ、それでも服装を一通り揃えれるだけの金額はあるのだが。


「沈黙って事は、お兄ちゃん金欠? ……美冬で良かったら、いつでも援助するからね?」

「……いや、いい。 てか金問題は友達は勿論家族でも安易に考えたらダメだからな」


 そうは言いつつも、一夏の誕生日の出費等で母さんから金を頂戴した俺が言えた義理では無いのかもしれないが。


「お兄ちゃんってば、相変わらずだねぇ……。 美冬はそんなお兄ちゃんが好きだけどね?」


 言ってから腕を取る美冬、僅かに柔らかな感触が腕に伝わってくる――色々想像するのは不味いので、とりあえず咳払いしつつ、サンドイッチを食べると――。


「……ヒルトと美冬、最近仲が前より良い気がするのは気のせい?」

「え?」


 未来の見透かす様な眼差しにドキッとするも、美冬は未来に対して――。


「そぅかな? ……元々、私はお兄ちゃんっ子だからお兄ちゃん大好きだし、ハグとかスキンシップが少し増えたからみぃちゃんにはそう見えるのかも」

「そぅ、かなぁ……?」

「そうそうっ♪」

「そぅ、だよね。 ごめんね、急に変な事言っちゃって」


 笑顔でそう告げる未来、美冬は上手く言いくるめたが、俺が美冬と少し進んだ関係だと知ればやっぱりショックを受けるだろう――そう思うと、安易に誰彼と関係を持つ訳にはいかない。

 そう思うのだが――多分無理だろう、俺自身が歯止めが効かなくなっている、昨日はセシリアと最後までヤりかけたし。

 そうこうしていると、成樹がケーキを運んで来てそれを未来の前に差し出した。

 それから暫く、成樹の店で成樹を交えながら他愛ない話をして時間を潰した。


「ん、そろそろ行こうか。 美冬、未来?」

「だね、あんまり長居しても駄目だしね」

「そうだね」


 未来も頷く、既に前に居たおじさんは会計を済ませて店内は俺達だけしか居なかった。


「ふふっ、僕は特に気にしないけどね? ……でも、この後買い物があるならゆっくり楽しむ方が良いしね」

「そうだな。 ――っと、成樹。 そういやさ、成樹はインフィニット・ストライプスって雑誌、買ったことあるか?」

「え? うん、一応IS関連の雑誌だからね。 ほら、今月号も店内に置いてあるから」


 そう言って指差す先にマガジンラックがあり、IS関連の雑誌の今月号が列べられていた。

 その隣には普通の雑誌が列べられていて、色々な客のニーズに応えるために置いているのだろうと俺は思う。

 ――もしかすると、ただたんに雑誌が好きなだけかもしれないが。


「そっか。 来月か再来月号かはわからないが、多分俺達の特集載るかも。 ――まあ、一夏や篠ノ之も一緒なんだけどな、これが」

「そうなんだ。 だから、今日は美冬ちゃんも飯山さんもいつもより綺麗なんだ」


 何気ない言葉に、二人して顔を赤くしながら――。


「も、もぅっ! 成樹くんってたまにそう言うよね。 ……言われて悪い気はしないけどね」


 未来がそう言うと、柔らかな笑みを溢す成樹――そして、未来は俺の右手をギュッと掴んで握ると、僅かに潤みを帯びた眼差しで俺を見詰めた。

 一方の美冬は――。


「ありがとう♪ 写真、基本的にツーショットばかりだけど私やみぃちゃんは仕事で織斑くんと撮ったから、勘違いしちゃダメだよ?」

「うん。 それは大丈夫だから安心して?」


 レジへとやって来ると、成樹は慣れた手付きでレジを打ち始め、清算を開始する。

 ピピッと鳴る電子音、流れてるクラシックの曲とは不協和音を奏でているがそれも束の間、清算が終わると金額が表示されていて俺達三人は各々清算を終える。


「皆、また良かったら来てね? 僕はいつでもここに居るんだし、ね」

「あぁ。 ……また今度、成樹の時間の都合が合えば俺と久しぶりに何処かに遊びに行こうぜ、成樹」

「勿論だよ。 大丈夫な日は、僕から連絡するからねヒルト」


 成樹の言葉が嬉しく、微笑を溢すと成樹も共に笑顔になる、そして喫茶店を出ると背中から「ありがとうございました」という成樹の声が聞こえてきて、俺達三人も共にお礼の言葉を交わすと喫茶店を後にした。

 少し歩いた十字路、其処で俺の携帯電話が突如鳴り始めた、相手は――親父だった。 
 

 
後書き
もう少し更新ペースをあげたいが、やはり疲れてると難しいかも

次かその次辺りでまた原作に戻るかも

 
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