人造女神アリスディアと魔人少女達の戦い
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始まりの終わりと終わりの始まり⑦
俺達がニブルヘイム村に入った瞬間。結界が消滅した。それと同時にイリスとイリヤ達の瞳が光っている。どうやら、魔人の力は魔物避けの結界にも有効みたいだ。そりゃ、どこの国も魔人を恐れるわな。防御が殆ど意味無いんだし。まあ、昔はどこの村や街にも有ったみたいだが、現在は主要な街くらいにしか無いみたいだ。
「大変だっ!! 結界が消えたぞっ!!!」
そして、それに気づいた村人やこのニブルヘイムを拠点にしている冒険者と呼ばれる人達が大慌てしだす。丁度、俺達を迎え入れる為に村の入口には防衛部隊やお偉いさんがいるようだ。
「ありえねえっ!!」
「この村はもう終わりだ!!」
村人達は地面に蹲り、この世の終わりだと嘆き悲しむ。
「至急、冒険者共全員を呼び戻せっ!!」
「はっ!」
そんな中でも1人の黒い鎧を身に纏った、角の生えた大柄の男性が声をあげると、その指示で鎧を着た連中が急いで、どこかに向かって行く。そして、その男はこちらに近づいて来た。
「貴様らぁぁぁ、どういうつもりだぁあああああっ!!!」
咆哮のような大声が響く。俺達は急いで耳を塞いだ。だが、リコリス達はどうしようも無かった。
「どういう事とは?」
「惚けるなっ!! 結界を破壊したのは貴様らだろうがぁっ!!!」
「まぁ、それはそうだな。俺達がやった事になる。それで、お前は誰だよ?」
「俺はここの守備隊を任されているゴルドラだ!!」
「そうか。俺はナハト・ベルングス。このニブルヘイムを治める事となった」
「知っているわ!! 俺が聞いていいるのは、生命線である結界を何故破壊したかだぁぁああっ!!」
どうやら、かなりご立腹のようだな。しかし、何故かと問われれば答えは一つだ。
「知らん。事故だ!」
「巫山戯るなっ!! 村を滅ぼす疫病神めっ、始末してくれるわっ!!」
ゴルドラが手に持っていた鎖を引くと、後ろに置いてあった巨大な刺が大量に付いた鉄球が俺めがけて飛んでくる。命中すれば確実に死ぬが、即座に俺の前にイリスとイリヤが出て来て、同時に鉄球に対して刀を振るう。鉄球と2本の刀ぶつかり合って火花を散らし、イリスとイリヤが俺に向かって吹き飛ばされた。俺は自分の大きなお腹を2人のクッションとして利用する。
「馬鹿力ですね」
「強いです」
「耐えたか…………ムッ」
そして、この間にアヴリルが接近して伸びきった鎖に手を触れて、鎖を溶かしてしまう。
「死んで」
さらに踏み込んで、髪の毛を大剣2本に変えてゴルドラに斬りかかる。
「ふん。断るぅわあぁあああああああああああああっ!!!」
そして、ゴルドラは背中に背負っていた大斧を引き抜いて、無造作に。しかし、力強く振り下ろした。その一撃はアヴリルが大剣交差させて取った防御を一瞬で破壊し、地面に命中すると同時にクレーターを作り出した。アヴリルは何とか、大剣が破壊される瞬間に下がって避けていたが、髪の毛が短くなっている。
「やる…………んっ」
しかし、直ぐに元の長さまで伸びていく。肉体再生は髪の毛にも有効みたいだ。
「貴様、先程の結界の破壊といい、その力…………魔人か」
「それがどうしたの?」
アヴリルの正体に気づいたからか、真剣な表情になる。
「決まっている殺すまでよ」
ゴルドラからは圧倒的な殺気が出る。
「殺ってみるといい。侵略者共」
アヴリルも憎しみの篭った瞳でゴルドラを睨みつける。そして、2人はお互いに走り出す。ゴルドラの高威力の攻撃に対して、アヴリルは手数を選んだのか、剣を4本出して対応する。しかし、技術は圧倒的に上で、打ち合う毎にアヴリルの傷が増えて行く。肉体再生が無ければ対応出来ないだろう。
「厄介では有るが、再生の追いつかない程のダメージを与えれば良いだけよ。貴様が俺の大斧を溶かす前になっ」
「っ!?」
自分の起死回生の手段がバレた事に動揺して動きが鈍るアヴリル。
「動揺したな。温すぎるわっ!!」
「ぐはっ!?」
一瞬の動揺を突かれて、アヴリルの胴体が切断された。
「イリス、イリヤっ!!」
「「はい」」
瞬時に2人が接近して、イリスが攻撃し、イリヤがアヴリルを回収して下がる。回収し終わったら、イリヤもイリスと合流する。
「ほう、次は貴様らか」
「はい。2人でお相手しましょう」
「無駄だ。貴様らごときの技量では俺に勝てぬ」
「「それはどうでしょうか?」」
「やってみるがいいっ!!」
そこから始まった戦いは一方的だった。振るわれ大斧を避けて、接近して行く2人。ゴルドラが本気で振るえば、その機先を征して持ち手を狙い、もう1人が大斧の側面を攻撃して力をそらす。そして、さらに懐に入り込んで、首筋に刀を2人揃って、添えた。
「「私達の勝ちです」」
「馬鹿なっ、素人に毛が生えたような技術しか持たぬ小娘に…………俺が負けただと…………認められるかぁああああああああああああっ!!!」
「そこまでだっ!!」
俺は大声をあげて、まだ続きをしようとするゴルドラを制止させる。
「俺の領地で無碍な争いは禁止だ!!」
「巫山戯るなっ!! そいつらは魔人じゃないかっ!!」
「そうだそうだっ!!」
周りの村人や俺が連れて来た連中からも、声が上がるが、俺は容赦しない。
「黙れ。反逆罪でぶっ殺すぞ!!」
「「「「っ!?」」」」
その言葉に村人共は静まる。しかし、兵士達は逆に攻撃体勢を取って行く。
「ここは正式俺が受け継いだ領地だ。気に食わないというなら出て行け。俺は魔人だからと言って、差別する気は無い。ましてや魔人の力は見ての通り強く、魔物に有効なのだからな。使えるモノは何でも使わねば生き残れないのはここに住んでいる貴様らが一番理解していると思ったのだが?」
「「「「…………」」」」
俺の言葉に、村人達は黙る。ここはそれ程に危険だ。冒険者でも上位の連中はここを狩場にしているし、中位の連中はまず来ないような危険な場所だ。
「結界までこうも容易く破壊するとは思っていなかった。ゴルドラと言ったな。守備隊なら俺の部下になるんだ。力を貸してくれ。このニブルヘイムを発展させたい」
「お前が今までの屑と違って、ちゃんと村を守ってくれるなら俺達はいくらでも力を貸してやる。だがっ!! てめぇが魔人共をちゃんと扱えるんだろうな? 暴走でもされちゃあたまんねけぞ」
兵士達も頷くが、こいつ等…………理解してるのか?
「その点は大丈夫だ。この子達は俺の奴隷にしてある。俺には逆らえない。他にやって来た魔人も奴隷とした後、普通にお前達と同じように生活してもらう。それより、お前らは理解していないのか…………?」
「何がだ?」
「ゴルドラ、てめぇは今、1対1でその魔人を圧倒的な力でぶっ倒したんだぞ! 貴様の力も魔人と同等だろうがっ!! お前ら兵士も含めてここで活動出来る時点で魔人と同等くらいには戦えるって事だろ」
「「「「あっ…………」」」」
思い当たる節はあるみたいで、理解したようだ。
「確かに前、故郷に帰って兵士達と一緒に魔物狩りをしたんだが…………周りの連中は雑魚過ぎたな…………」
「俺もそうだ。騎士団の訓練に参加したんだが、温すぎたぞ」
「実際問題、あの子達1人ぐらいだったら1体1なら倒せるよな」
「手こずりそうだが、何とでもなるな」
どんな化け物連中だよ…………予想以上にやばそうだ。
「確かに、俺達の方が化け物って言われて納得出来るな。それに奴隷にして絶対遵守の呪いがかかっているなら問題は無いだろう。ここは力こそが全てだ」
「そう、この子達は俺の力だちょっとずつでも仲良くしてくれ。さて、それじゃあ…………」
纏まりかけた瞬間。物見櫓から村中に響き渡るような鐘の音が響いた。見ると、近くに狼煙が2つ色違いのが上げられている。
「これは?」
「敵襲を知らせる鐘の音だ」
「狼煙は?」
「赤が敵襲。黄色が危険だから戻って来いって合図だな。つまり、こっちに魔物共が向かって来てるって事だ。おい、魔人の嬢ちゃん達。早速だが、戦えるか?」
「「私達は問題無いですが…………」」
2人は心配そうに再生途中のアヴリルを見る。
「問題無い…………魔物が魔法を撃ってきたら、その中に叩き込んでくれたら直ぐに治る」
「そいつはいい。厄介な魔法の盾に出来るって事じゃねえか。大丈夫なんだろ?」
「「はい。魔物の魔法は私達が防ぎます」」
「良し。お前ら、結界の代わりは魔人の嬢ちゃん達がしてくれる。なら、俺達がやる事は何時も通りだ。やるぞ!!」
「「「「おうっ!!」」」」
直ぐに走り出して、迎撃準備を整えて行く。これには村人達も協力していく。
「人手がいるだろうから、お前達も手伝ってやれ」
「「「はいっ!」」」」
俺は連れて来た連中にも指示を出す。そして俺自身もリコリス達を抱き上げて、来た時と反対側から村の外へと出る。そこは草原で、所々に岩で作られた防壁の跡があったり、抉られた地面が見える。遠くには森が有り、比較的近くには幅30メートルくらいの川が流れている。
そして、イリスとイリヤの指示の元、等間隔に置いていく。その後ろにはカタパルトと呼ばれる投石器が荷台に乗せられて多数運ばれ、魔法陣の上に配置されて行く。そう、魔法陣。人類が使えるのは魔術が基本だが、書かれた魔法陣の上に居る間だけ、魔術などを魔法と同じ威力に強化する事が出来る。この魔法陣を書いて維持する技術は過去に存在したようだ。後でアリスディアから教えて貰うのも有りかも知れない。
「お~~~、随分来やがったな」
遠くに有る森から小さな人のような者が数人出て来る。そして、その後ろを魔物が追ってきている。それと同時に別の場所からも人が出てこちらに向かっている。
「ナハトと言ったか。取りあえず、この場の指揮は俺が取るぞ」
「ああ。そっちの方が良いだろう。頼む」
「おう。投石部隊、準備しやがれ!」
「「既に出来てます!」」
「なら、撃て」
ゴルドラの声と同時に、魔術などでエンチャントされた岩が勢いよく、魔物目掛けて放たれる。その岩は人を通り過ぎて、魔物の群れに着弾して爆発を起こす。
『アレは爆破の魔法ね。魔法陣に書かれている爆破の魔法を岩にエンチャントして、それを放ってるのね』
「魔法陣には種類が有るのか?」
『有るわよ。魔法を強化する魔法陣と魔法其の物を閉じ込めて、それを発動出来るようにする魔法陣がね。ここは後者ね。ちなみにエンチャントまでが魔法陣に書かれた効果よ』
そんな会話をしていると、先頭を走る燃えている犬の魔物達からこちらに向けて大量の火炎魔法が飛んでくる。
「嬢ちゃん、行ってこい!!」
「なっ…………」
アヴリルをその火炎魔法の嵐に向かって、ゴルドラがその馬鹿力で投げ込んだ。そして、その火炎が吸い込まれるようにして、アヴリルへと向かって行く。瞬時にそれらの魔法を吸収して肉体を再生させてアヴリルはこちらを恨みの篭った瞳で睨みつけた。だが、そのまま魔物の群れへと掠れるような速度走って行く。そして、かなり長くなった髪の毛の剣で魔物達を斬り殺し始める。
「はっ、はっ、はっ。やっぱ、化け物じゃねえかよ。普通、あんだけ魔法を食らったら死ぬぜ。おい、投石部隊は嬢ちゃんから距離を取った場所に放てよ。魔力の無駄だ」
「「了解!」」
「さて、俺達も行くか」
「あっ、ちょっと待ってくれ」
「あん?」
「セニア。魔物の居る場所を凍らせられるか?」
「出来る…………えい」
可愛い声が響いた後、地面が凍って行き、魔物達の達が氷に足を取られて滑りだした。アヴリルはジャンプしながら、剣を突き刺して、魔物から魔物へと飛び移って行く。
「こりゃあ、楽だな。お前ら、近づいて来た奴らをタコ殴りにしろ」
「「「イエッサーっ!!!」」」
氷の道を滑って来る魔物達を兵士達が囲んで斬っていく。セニアはご丁寧にも段差を付けて、魔物が通るコースを作って居た。つまり、そのコースを必死にすべらないように頑張っている魔物に向かって、槍を突き刺して行くのだ。たまに人も流れて来るが、そっちは救助されて、殺す側に参加して行く。魔物から魔法が放たれても、近くにいるセニア達が魔法を吸収して行くので安全だ。
「なんつーか、魔人って便利だな、おい」
「対魔物用に神と人が作り出しただけは有るって事だな」
「そうなのか? 俺達が聞いた話しじゃ、魔物の突然変異やら、魔物と人の子だって聞いたが…………」
「それは作った連中に捻じ曲げられてるからだろ。俺はあの子達から、聞いたが、魔物の王を倒した力に恐怖した当時の連中が、彼女達を殺そうと、魔物の王を倒した所に攻撃して来たから、反撃して戦争になったみたいだぞ」
「みみっちぃ連中だな。まあ、役に立ってくれるんだ。構わんさ。今は今だ」
「ごもっとも」
それから、程なくして魔物は殲滅された。その後、氷が解除されて、抜かるんだ地面に嫌がりながらも皆は魔物の死体を回収して、剥ぎ取りを開始。その日、村では魔物の肉が振舞われた。流石の村人達も、彼女達の働きぶりを目にして、受け入れてくれるようだ。
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