IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第146話】
前書き
遅れました
福音との単独交戦です
沖合い20キロ地点。
海上を疾走する黒い機体――。
加速する機体は、激しく水飛沫を立てながら目標へと真っ直ぐ向かう。
「目標まで残り10キロか……。衛星からのリンクはこのまま維持と同時に、座標を――」
独り言を呟くように、口を開く俺にプライベート・チャネル通信が開かれた。
『有坂、そこで何をしている?命令があるまで待機だと言った筈だ』
通信相手は織斑先生だった。
その表情は険しく、眼光の鋭さもいつもの三割増しになっていた。
『命令?……織斑先生、自分は軍属になった覚えは無いですよ』
『……学園に所属する以上、そんな子供じみた言い訳を聞くわけにはいかない。今すぐ戻れ、命令だ』
『……嫌です。例え、後で拘束されようとも、退学にされたとしても、それを聞くわけにはいかない。ここで今、福音を止めずにただただ悪戯に時間が過ぎ去るのを待ってるほど、俺は悠長な性格でもない。――それに、いつまでも暴走したISを放置するってのも福音のパイロットにも負担がかかる筈だ。そうだろ?』
『…………』
返答を待つが、何も応えずハイパーセンサーに映し出された織斑先生は瞳を閉じたままだった。
『それに、俺が独断専行したとなれば【他の代表候補生達】はそれを名目に俺を拘束するために出撃可能になる――そうでしょ?』
『……有坂、お前――』
『織斑先生、美冬と未来以外の皆とはまだ付き合いが短いが、いつまでも黙ってられる性格じゃないのはわかりますよ?――【俺が独断専行に出なくても多分、皆は俺を誘った上で織斑先生の待機命令を無視、全員で福音を仕留める】って感じで行動するはずです』
通信の返事をすると共に、福音との距離が残り五キロと表示され――。
『すみませんが通信切ります。そろそろ福音と交戦に入るので――【命令に背いたのは俺だけ】という事を忘れないでください。連帯責任って事にするのもやめてくださいね?【皆は独断専行をした俺を止める為に仕方なく追跡、なし崩し的に福音との交戦】っていう筋書きじゃないと意味が無いですから。以上、通信終わり』
『お、おい――』
無理矢理プライベート・チャネル通信を切ると同時に、エネルギー充填率を確認する。
「……ビーム充填率100%か。これならこの距離からも当たるな。――悪いな福音、先手、取らせてもらうぜ!!」
加速した状態のまま、右手を正面に翳す。
村雲の右手の動きに同調するかのようにクサナギも正面に翳した。
一瞬閃光が走り、次の瞬間には掌から高密度圧縮されたビーム粒子が放たれる。
その粒子は、大気を焼き払う様に目標へと突き進み――その一撃が直撃すると同時に激しい爆発に福音は飲み込まれた。
だが、その爆発から直ぐ様抜け出し、敵機である此方に向かって加速――更に光弾を面制圧するかのように弾幕を張った。
「……ッ!」
海上を滑らかにスラロームしながらその光弾の弾幕を避けていく。
ISより大きな機体の為、普段より大きなスラロームを描く――だが、その軌跡は、まるで海上でスケートをするかのような動きだった。
互いに加速し、更に距離を詰めていく。
その間も福音は、幾重にも重ねる様な弾幕を張りつつ接近――その弾幕をスラロームで避け、時には海面にビームを放ち、その衝撃によって出来た水の壁によって防ぎ、接近していく。
相対距離が一キロを切った所で福音は更に急加速――。
その加速で福音は軽い衝撃波を発生させ、その衝撃で此方の機体が揺らぐがダメージは無く、此方も更に加速。
交差する直前、俺の咆哮が辺り一帯に轟く――。
「――オロチィィイイイッ!!」
クサナギの左手が福音を捉え、その拳が当たるその瞬間――深々と突き刺さる様にクサナギの左手に備わった村雲・弐式の第三世代兵装【八式・天乃御柱】四基が射突――その加速力も加わった一撃により、福音の装甲の一部が破壊――激しく破片を撒き散らせた。
その質量と加速力によって福音はきりもみしながら海面に落ちる瞬間――機械音声が辺り一帯に響き渡った。
『敵機の情報を更新。最大レベルで対処、攻撃する』
その声と共に体勢を立て直した瞬間、一気に急上昇しながら周囲一帯に光弾を撒き散らせるかの様にばら蒔く――。
「フッ、それは過大評価って奴だぜ。――俺が、そこまで強いわけねぇだろうがッ!!」
迫り出す様に両手を前面に翳し、腰まで引くや、八式・天乃御柱のレーザー弾幕が、福音の光弾を次々と撃ち落としていく。
『……優先順位を変更。現空域からの離脱を最優先――』
「逃げる?――逃がすかよッ!!」
福音が離脱しようと砲撃と共に全スラスターを開く――。
砲撃がクサナギの装甲に当たるのも構わずに、此方も全スラスターを点火、急加速し肉薄するその刹那――荒々しく福音の片翼をクサナギの右手で掴み、一気に圧壊させた。
『――――!!』
「これで機動力も攻撃力も半減だな、これがぁッ!!」
叫びが木霊する刹那、振り上げたクサナギの左腕は握りこぶしを作り、叩き付けるように福音へと振り下ろした。
機動力が半減した福音は、その一撃を避ける事が出来ず――その衝撃に福音の装甲から紫電が走り始める。
「もう一発――食らいなァァァアアッ!!」
横に一回転し、脚部スラスターを点火して加速力をつけたバックスピンキック。
流石に何度も質量差のある攻撃を受けたためか、福音は力無くきりもみしながら海面へと落下、落ちた所から激しい水柱を立ち上げた。
「……やり過ぎたか?やはりクサナギだと威力が高過ぎるか……?」
呟きは、静寂が訪れたこの空域に吸い込まれるように――次の瞬間、海面が吹き飛ばされた。
「……成る程、とことんやりあいたいって訳か。――『第二形態移行(セカンド・シフト)』、初めてその変異を見たな、これが」
徐々に高度を上げていく福音は、自らの身体を抱くように踞り、破壊した筈の翼が新たに生え、機械質な翼が、エネルギー翼になった為か生物的な印象を与えた。
更に、第二形態移行した結果か、破損した装甲は元に戻り――シールド・エネルギーも回復しているようだ。
一瞬だった。
福音が突如間合いを詰め、復元した装甲の至るところから小さなエネルギー翼が生え、 密度の高い小型の光弾による弾幕が零距離から放たれ――クサナギの表面装甲に刺さるや幾重にも爆ぜていく。
「ぐぅっ……!?この衝撃、並みじゃないなッ!!」
爆煙をかき消す様に左腕を振るう。
それと同時に掌から高密度ビームを射撃――凪ぎ払う様に振るうと福音はそれに反応するのが遅れ、装甲が焼かれていった――。
この時、花月荘では代表候補生達が俺の単独出撃に気づいた時だった……。
後書き
気づいたら関東ではIS二期
そして弓弦氏の不愉快な呟きと共に酷評の一話
餅は餅屋に任せるのが懸命だという事ですな
いつもと違い、早い時間に話をあげます
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