IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第510話】
前書き
EOS前の休日話、お相手は……読んでからのお楽しみ( ´艸`)
土曜日、午前の授業が終わり午後からは自由。
普段なら訓練や模擬戦――なのだがあいにくと未だ復旧作業中の各アリーナは使用不可能だ。
一旦部屋へと戻った俺、制服から私服へと着替える。
昨日の篠ノ之には驚かされたが、今日も――。
『あ、有坂……その、だな。 ……い、いや、済まない、また後で……聞く』
――という普段見せる篠ノ之の姿と違うため、真っ先に美冬が驚き、俺に近寄って事情を聞いてきたぐらいだ。
とりあえず落ち着かせたが――それはさておき、今日の午後からの予定が決まっておらず、どうしたものかと思っていると――コンコン、ノックの音が響いた。
ドアを開けると――。
「あ、ヒルト」
「美春? どうしたんだ?」
来訪者は美春だった、服装はカジュアルシャツとミニスカートという出で立ちだ、無論シャルほど短いわけではないが――。
「ん、んとね。 せっかくだから今日の午後、ヒルトと何処かに出掛けられたらなぁって思って」
「ん、そうだったんだ。 予定は特にないし、良いぞ?」
「ほんと? ……へへっ、断られないか心配だったけど、杞憂だったね」
前屈みになりにこっと微笑む、結ってるポニーテールがゆらゆらと揺れた。
部屋の鍵をかけると――。
「んじゃ、せっかくだしレゾナンスでも行くか」
「うん、良いよ。 ……へへ」
嬉しそうにはにかむ美春、俺と美春は並んで歩き、学園駅へと向かった。
場所は変わってショッピングモール『レゾナンス』、土曜日という事もあり、家族連れや友達同士、カップルにと様々な人達が居る。
「レゾナンス……美冬や未来に連れられて来たことあるけど、ヒルトとは初めてだよ」
キョロキョロと辺りを見渡す美春、まだ人間社会に慣れてないのだろう、見るもの全てが彼女にとって新鮮なのだろう。
「んじゃ、とりあえずレゾナンス内散策でもするか?」
「うん。 ヒルトに着いていくからね?」
そう言って隣にやって来る美春、俺は美春を連れて先ずは一階を歩き回る。
一階は主に男性用衣服類、主にスーツ等が目立つ。
「うわぁ……こ、これってスーツだよね? ヒルトは着ないの?」
「俺にビジネススーツはまだ早いよ」
「そっかぁ」
相づちを打ちつつ、美春は様々なスーツを眺めていた。
俺も同様に見るものの、ビジネススーツは色以外は全部同じ様に見えてしまう。
「あ、ヒルト、次いこっ」
「ん、じゃあ次は二階辺りかな、二階はメンズ系の靴が主っぽいし」
「そうなんだ? じゃあヒルトに似合う靴があると良いね」
二人で喋りながらエスカレーターへと向かうと、美春の表情が曇る。
「……私、これ乗るの苦手……」
美春はそう言ってエスカレーターを見上げる、二階へと向かうカップルが仲睦まじく乗っていった。
「じゃあ俺がエスコートするから、それに合わせて乗れば良いよ」
「ぅ、ぅん……」
不安そうな表情を浮かべた美春、俺は左手で美春の手を握り、エスカレーター前まで移動、乗ると美春も俺に合わせる様に一段下に乗った。
「どうだ、まだ難しいか?」
「う、うん」
「そっか、なら今日一日レゾナンスで練習だな」
「うぅ……、上手く乗れるように頑張る……」
二階へと着くや、早速二階を散策――やはりメンズ系の靴がメインでビジネス用の革靴やスポーツシューズ、スニーカーに果ては安全靴と多種多様な靴が揃っていた。
「あ、ヒルト、この靴の色」
そう言ってショーケース内の靴を指差す美春、そこにあったスポーツシューズの色はまるで村雲・弐式の様な色合いだった。
「結構こういった色合いの靴は多いんだよ。 黒系は無難だしね、白も服装に合わせやすいし」
「そうなんだ、へぇー」
笑顔を見せる美春、どんなことでも彼女にとっては興味のある事なんだろう。
「女性ものでも見に行くか? オータムフェアもやってるし」
「うん。 じゃあいこっ」
自然と美春は俺の手を取り先導するのだが――。
「あ、私が先導してもわからないや。 ……ヒルト、お願い」
「うん、わかった」
美春の手を引き、今度はエレベーターへと向かう。
流石にエレベーターは大丈夫らしく、美春は不安な表情を見せなかった。
エレベーターが来るまで待っていると、子供が――。
「あー、仲良しカップルだー」
「……!?」
カップルと言われ、美春はびくっと反応した、表情を見ると僅かに赤くなっている様に見える。
俺達を冷やかした子供は直ぐ様フェードアウト、風のように去っていった。
エレベーターがやって来て、扉が開く――中には誰も居ず、俺と美春の二人が乗り込み、七階のボタンを押して扉が閉まった。
エレベーター内で黙る美春、時折俺に視線を送ってくるのだが、目を合わせると照れてるのか視線を外す。
七階に到着するや、扉が開く――降りると七階はやはりオータムフェアが開催されてるらしく、秋物の洋服等が目立っていた。
「あ、ヒルトくんだ。 やっほー」
声を掛けられた方を見ると、私服を着ていたが四組の生徒の子達が居た。
仲の良いグループで買い物に来てるらしく、店で買ったであろう買い物袋を持っていた。
俺は手を振って挨拶を返すと、彼女達は人混みの中へと消えていった。
「……カップル」
「ん?」
「カップル……に見えるのかな、私達」
上目遣いで見上げる美春、頬が更に赤くなっていた。
「まあ、端から見ても義兄妹には見えないからそう見えるんだろ」
「そっかぁ……。 ……へへっ、ヒルト。 見に行こっ」
カップルに見えたのが嬉しいのか、美春は俺の腕を取ると絡ませてくる。
若干照れる俺だが、美春は気にせずに密着してくる――とりあえず七階にある各店舗を見て回る事にした。
時間は過ぎ、午後三時過ぎ。
レゾナンス内は更に賑わいを見せていた。
「美春、何か甘いものでも食べるか?」
「甘いもの? ……うん、良いね♪」
賛同した美春、俺はそのまま上の階にある甘味処へと移動した。
店員に案内され窓際の席へ――。
「うーん……」
美春はメニューを手に取り早速にらめっこし始める、俺もメニューを眺める。
店内は女性が多く、一応男の姿もちらほら見える――のだが。
「ほら、早く支払いなさいよ。 せっかくアタシがあんたとデートしてあげてるんだから」
「う、うん」
――と、もろに女尊男卑の影響を受けている男の姿も散見した、多分俺と同じぐらいの高校生だろう。
俺自身、学園内での不当な扱いが減って忘れかけていたが、まだ世の中は男性が弱い立場だというのを改めて認識した。
「ヒルト、どうかした?」
「え、いや……何でもないさ、これがな」
「ふぅん……。 ん、私、食べたいもの決まったよ」
「わかった、なら注文するか」
備え付けられている呼び出しボタンを押すと、直ぐに店員が現れた。
「ご注文はお決まりになりましたかぁ?」
「うん。 このジャンボミックスパフェを二つ♪ ヒルトは?」
「俺はクリームメロンソーダで」
「畏まりましたぁ、では失礼します」
注文をとると一礼してその場を去る店員、ふと窓から外を眺める――微かにここからキャノンボール・ファストが行われた会場が見える。
キャノンボール中止後はマラソン大会の会場に一回なったんだったか……。
「てか美春、今思ったんだが……ジャンボミックスパフェ二つ頼んでなかったか?」
「ん? 頼んだよ? 美味しそうだったから」
「そうか。 ……てかあんまり身体冷やしたら体調崩すぞ?」
「ふふっ、平気だよ。 私、体調崩さないもん」
にへっと笑う美春、パフェが待ち遠しいらしく瞳がキラキラと輝いていた。
そして――。
「お待たせいたしました、ジャンボミックスパフェお二つとクリームメロンソーダです。 以上でお揃いでしょうか?」
「あ、はい」
「それでは、ごゆっくりおくつろぎください」
折り目正しく、お辞儀する店員。
一方の美冬は、瞳を爛々と輝かせてスプーンを手にとっていた。
「へへっ、それじゃあいただきまーす。 あ、む……」
ジャンボミックスパフェをスプーンで一口掬い、それを食べると美春は――。
「んんーッ♪ 甘くて冷たーい♪ 美味しい~~♪」
幸せそうに頬張る美春、また一口、一口と食べていく度に表情が緩んでいく。
俺達には当たり前でも、やっぱり美春にとっては新鮮なのだろう、味覚で感じるのも、手で触れるもの全てが。
俺もクリームメロンソーダのクリームをスプーンで掬い、二人で甘いものを堪能した。
後書き
美春でしたー( ´艸`)
後半へと続く
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