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空虚で無気力な青年が異世界で新生活~改訂中~

作者:Rabbit
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第3話 再会

酒場の中では、ゴリマッチョの男とどこかで見た黒髪女性の後ろ姿が。

回避したはずのフラグがまたここに……。

いや、よく考えたらそうだよな。

進行方向を考えると、この街に向かっていただろう。

それに、俺もこの街についてからあっちこっちとフラフラしてたから、追い付かれたのか。

いや、それより今どうするかだ。

決まってる。

逃げる!

俺は回れ右をして離脱を試みる。

すると、窓から手が届くところにテーブルが。その上にはまだ手がつけられていない料理がある。

もったいない。処理してやろう。

俺はフォークを掴むと、唐揚げのような肉を刺し口の中に放り込んだ。

中々美味いな。鳥かな。多分、鳥だな。もう1個。

「おい、てめぇ。何してやがんだ」

顔を上げると、また別のゴリマッチョの姿が。

「てめぇ、なにマーチョさんの飯を食ってやがんだ」

マッチョ?

「違う!マーチョさんだ!」

どうやら口にしていたらしい。

「どうした、ゴーチョ」
「マーチョさん。このヤロウが、マーチョさんの料理をつまみ食いしやがって」
「何だと?」

マーチョとゴーチョって…。

ふっ……。

「てめぇ!何笑ってやがんだ!」

いや、変な名前だなと。

「バカにしてんのか、てめぇ!!」

おっと、また口にしていたらしい。

このー、正直者め。

そしてマーチョ、キレる。

ゴーチョも口には出さないがキレる。

マーチョは黒髪の女性を放置し、俺に近付いてくる。

むさ苦しいな。来るなよ。

「お前は…」

黒髪の女性って言いにくいな。

フラグ女でいいや。

フラグ女にも見られた。

そしてバレた。

仕方ない。

逃げるが勝ち!

俺はフォークに刺したままだった唐揚げを口に放り込むと、一目散に逃げる。

「あっ、待ちやがれ!」

俺は〔脚力強化〕を使用すると同時に、重力魔法を使って俺にかかる重力を半分にする。

俺は強化された脚に力を込めると、地を蹴り屋根に飛び移る。

「なっ!?」
「バカな!!」
「魔法か!」

マーチョ、ゴーチョ、フラグ女の順番だ。

俺は屋根から屋根へと飛び移り、移動していく。

俺は一通り逃げた後、酒場に戻る。

灯台下暗しってことだ。

今度は入口から入ると、カウンターに腰を下ろす。

「お前さん、無事だったのか」
「ああ」
「しかし、お前さん。面倒な奴らに目を付けられたぞ」
「へぇー」

そう言って俺は、酒場のマスターが出してくれた水を口にする。

よく冷えてるな。

「あいつらを知らないってことは、旅の人かい?」
「そんな感じ」
「じゃあ、俺がこの街について軽く教えてやるよ」

そう言うと、マスターは拭いていたコップを置いた。

それにしても、このマスター。

声といい顔といい、渋いな。

渡 哲○みたいだな。

「まず今いるこの街は、商業都市リムンヘルド。そして、この都市が属する国は、リアバーグ王国。大陸にある国の中では、一番歴史のある国だ」

やっぱりここは商業都市か。

で、今いる国は王政か。まあ、見るからに中世っぽい感じだからな。

民主主義は無いか。

民主主義は、それはそれで問題ある政治体系だが。

「リムンヘルドは上層と下層と2つある。上層は富裕層と、富裕層専門の店が並んでいる。下層はその逆だ。庶民や浮浪者が住む区域だ。その区域をさらに東西南北で区分してるってわけだ」
「なるほど」
「で、最初の話に戻るが。東西南北、それぞれにまとめ役みたいなのがいるんだ。あのマーチョは俺たちが今いる区域、南区域を取り仕切る奴だ。ゴーチョはその子分だな」

小物臭しかしないけどな、あいつら。

まあ、そこら辺は色々あるんだろう。

他所者の俺が口出しすることじゃないな。

「それより、マスター」
「ん?」
「仕事とかないのか?」
「仕事か?それなら、ギルドに行きな。ギルドには、庶民だけでなく富裕層からの依頼も来る。実力次第だと、大金持ちになれるぜ」

ギルドか。RPGだな。

「じゃ、ギルドに行くわ。水、御馳走さん」
「ギルドは東区域だ。次は何か頼めよ」
「来た時はな」

俺は立ち上がると、ギルドへと向かう。

しかし、ギルドか。

やっぱり、モンスター討伐とか護衛とかがあるのかな。

15分ほど歩くと、剣が交差した看板を掲げた建物を発見。

ここか?

扉を開けると、中には武器を引っ下げた男女がいるいる。

俺は受付へと歩いて行く。

「あっ、お前!」

……。

視線を左にスライドすると、フラグ女の姿が。

三度登場か。何だ、このフラグは。

「あの時はお礼を言えなかったけど。リムンヘルドに向かっていたから、また会えると思っていた」
「お姉さん、ギルドの仕事がしたいんだけど」

俺はフラグ女をスルーし、受付に座る女性に話しかける。

気のせいか、耳が尖っているような。

「お前はどこから来たんだ?」
「登録が必要?」
「はい…。ギルドへの登録が必要となります。この紙に必要事項を記入してください」

俺は女性から紙とペンを受け取り、必要事項を記入していく。

「私はこの国の出身だ」

まずは名前か。

名前…。どうするか。

九条 焔はすでに死んだ人間。

あの器にこの魂が入って、初めて九条 焔となる。

じゃあ、今の俺は誰だ。

偽名でいいか。いや、あながち偽名というわけでもないか。

……シュトラーセにするか。

道、って意味だ。

俺の未来への道も見つかると良いんだが。

「シュトラーセというのか。私はクラインだ」

えーと、出身地。

日本って言っても分からないだろうしな。

東でいいや。

「東というと、聖教国か?」

主な武器か。

ナイフ、刀、魔法だな。

「やはり魔法を使えるのか。すごいな。私は簡単なものしか使えないのだが」

今までの職業か。

そうだな。駆け出しの傭兵ってことでいいか。

「ほぅ、傭兵なのか。しかし、本当に駆け出しなのか?駆け出しであの実力とは」

さて、これでいいか。

「これでいい?」
「…はい、結構です。それでは、あちらの階段を上ってください。上に係の者が居りますので、指示に従ってください」
「わかりました」

書類を書いている途中、隣で何か騒いでいた奴がいた気もするが、気のせいだろう。

気のせいということにしよう。

俺は階段を上がると、誰もいなかった

係の者がいるんじゃなかったのか。

「あ、あの……」

ん?

声がしたな。しかし、誰もいないが。

「あの…」

誰もいないのに声がするとは。

ここには地縛霊でも住んでいるのか?

「あの、下です」

下?

俺は視線を下げるが、やはり誰もいない。

これは、いよいよ霊がいるという可能性が。

「もっと、下です…」

もっと下だと?

これ以上視線を下げたら、真下を見ることになるが。

視線を下げると、確かにいた。

「こ、こんにちは…」

目測で身長は120cmと言ったところだろうか。

帽子を被り、潤んだ瞳で俺を見上げている。

必ず首を痛めるな。

「は、初めまして。シュ、シュネーと申します…」
「シュトラーセだ」

しかし、何とも保護欲を刺激する生き物だな。

シュネーはトコトコと歩いて行くと、水晶玉のような物に歩いて行く。

「そ、それでは今から、シュトラーセさんの潜在能力値を調べます。この水晶玉に、手を置いてください」

手を置く。

すると、水晶玉が強く発光する。

「お、終わりました…」

結構簡単だな。

そして、一瞬だ。

まだ目がチカチカするが。

「そ、それでは、シュトラーセさんの潜在能力値を空間に表示します」

シュネーがそう言うと、水晶玉が再び光り出し空間に文字が浮かび上がった。


シュトラーセ
Lv.2
筋力:B-(S)
体力:C(S-)
瞬発力:B+(S+)
知能:C+(A+)
魔力:??(??)
器用さ:??(??)
魅力:??(??)
職業:処刑人
加護:神

ということらしい。

Lvは2か。

あの男たちを殺ったからか?

そして前半はとにかく、後半は?ばっかだな。

魔力については、底無しって言ってたからいいとして。

器用さが?って、どういうことだ。

俺がめんどくさがりだから、やってないから分からなってことか?

魅力については、人それぞれだからな。

そういうことだろう。

「す、すごいです……」

自分のステータスに付いて考察していると、シュネーが小さく呟いた。

「Sが3つもあります!それに、未知数というのも初めて見ました!」

先程まで顔を赤くしていたシュネーが、饒舌に喋りはじめた。

そんなにすごかったと言うことか。

比較対象が無いから分からんな。

「職業はよく分かりませんけど、加護もすごいです!神の加護を持っている人は、滅多にいないのに」

職業、処刑人か。

あれか。

あいつらの首を刎ねたからか。

それに神って。

あのじいさんじゃねぇだろうな。

…複雑だ。

「本当にすごいです!私、感動しました!」
「…そろそろ落ち着こうか」
「ひょえ!?…し、失礼しました。で、では、ギルドに登録したことを示す印を付けます。どこがいいですか?」

印か。

どこでもいいんだが、手の甲にするか。

特に意味は無い。

「決まりましたか?では、決めた場所を水晶に向けてください」

俺は手袋を外し、水晶に向ける。

すると、一瞬だけ痛みが走った。

「お、お疲れさまでした…。お、終わりです…」

手の甲を見てみると、外の看板に描かれていた物と同じ物があった。

「ありがとう」
「は、はい…」

俺はシュネーに礼を言うと、手袋をつけ直しながら階段を下りていく。

すると、階段の下に居る人物を見て溜め息を吐く。

フラグ女が立っていた。

「シュトラーセ、少しいいだろうか」

何でいるんだ、こいつ。

まぁいいや。

俺はフラグ女の横を通り過ぎていく。

仕事を受けようとも思ったが、さすがに疲れた。

今日はもう休みたいな。

だが、金が無いな。

適当に何か創って、それを売るか。

あんまりやりたくないが、背に腹は代えられん。

「シュトラーセ。私と組まないか?」
「間に合ってる」

何故、追いかけてくる。

すでにギルドは出て、街の通りを歩いている。

どこかで言ったと思うが、俺は女性には基本的には優しくを心掛けている。

だが、例外もある。

その例外が、こういう奴だ。

「組まなくても良いから、礼ぐらいはさせてくれ。あのままでは、私は数で負けていた」

しつこいのに、真面目と来たか。

頭が堅そうだな。

それはさておき、確かにそうだろうな。

圧倒的な実力を持っていれば、ある程度の数の差は押し返せるだろう。

だが、それでも数の暴力と言うのは恐ろしいものだ。

戦争は数という言葉もあるくらいだしな。

「頼む。この通りだ」

……。

このまま無視し続けたら、ずっとついてきそうだな。

最終的には土下座とかしそうだ。

さすがに、女性に土下座をさせるわけにはいかない。

いや、土下座の習慣があるのか分からんが。

潮時か。

俺が足を止めると、俺の背中にフラグ女がぶつかった。

「うっ!ど、どうした?」
「わかった。なら、飯でも奢ってくれ」
「…そんなことでいいのか?」

どんなことを言われると思っていたんだろうか。

「私はてっきり、か、身体を要求されるものと……」

俺はそんなに外道に見えるのだろうか…。

衝撃の事実に、ちょっとヘコむ。

「飯でいい。場所も決めてくれ」
「わかった。こっちだ。私の行きつけの店がある」

俺はフラグ女の後ろ姿を見ながら考える。

あの男たちを斬った時の、底から湧き上がる不思議な高揚感。

驚いたが、気分が悪いものではなかった。

まあ、これからだな。

俺の心を埋める旅は、始まったばかりだ。

…しかし、腹減ったな。
 
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