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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第506話】

 
前書き
ここから八巻っす

とはいえ前半若干シリアス気味な予感? 

 
 鳴り止まぬ発砲音、破壊され、瓦礫の山となったかつての建物からは燻る様に小さく黒煙が立ち込めていた。


「野郎ども! せっかく見つけた賞金首だ!! 生き死には問わねぇんだからさっさと殺ってしまえ!!」

「イエッサー!!」


 周囲を捜索する男たち、手にはアサルトライフル、そして身に纏っているのはISだった。

 だが、ISではあるものの、模造コア――オリジナルとは違い、誰にでも扱えるという特長が有り、瞬く間にそれが世界に拡がると女尊男卑だった世界は一変――それどころか、世界を巻き込んでの戦争――俗に言う【第三次世界大戦】が始まったのだった。


「…………」


 ステルスモードで様子を見る一人の男――。

 ハイパーセンサーで追っ手の人数を確認し、武器を粒子展開させる。


「……ったく、人使いの荒い隊長だぜ」

「だよなぁ。 ……てかさ、あの賞金首の賞金、ちゃんと山分けされるのかよ……」


 ツーマンセルで現れた二人組、その場にステルスモードで隠れている男には気付かず、通り過ぎる直前――ザシュッ!!

 あっという間だった、粒子展開させた剣から放たれた一閃は、二人の男の頭部と胴体を切断、力なく崩れ落ちる身体を、二人は自分の身体だとは気付かず、そのまま暗い闇の底へと落ちていった。

 血糊で濡れた刃を拭う――そのままステルスモードを維持しつつ、場所を変え、確実に数を減らしていく男。


「た、隊長! な、仲間が殺られてます!!」

「な、何だとッ!? お、お前ら! 守りを固めろ!! 相手は所詮一人なんだ、数は此方が上――」


 一瞬だった、目の前に現れた賞金首の男は、隊長の周囲に居た兵士を一刀の元、切り伏せていく。


「た、隊長! 絶対防御が発動してま――ギャアアアアッ!?」


 絶命していく兵士たち、混乱の最中、発狂した兵士たちはところ構わず発砲――それが瀕死だった兵士たちの命を奪っていき、同士討ちに――。


「馬鹿野郎共! むやみやたらに撃つな! それじゃあアイツの思うつぼ――」


 隊長の言葉も届かず、既に士気も落ちていて正常な判断も出来ない残った兵士は、残弾が無くなるまで撃ち続ける。

 その間も、一人、また一人とその命を刈り取る――正に死神の様だった。

 いつしか、隊長と数名の兵士たちを残して周囲には無数の屍が転がっていた、身に纏うISすら両断され、あるものは四肢が欠け、あるものはまるで魚の開きの様に両断されていた。

 絶対防御が発動されていないこの状況下――。


「い、嫌だ……。 し、死にたくねぇよ!! ぅわあああああああっ!!」


 堪えきれなくなった一人の兵士が逃亡を始めた。


「ば、馬鹿野郎! 敵前逃亡は銃殺――」


 そう叫んだ矢先、隊長の足下に丸い物体が転がってくる。

 ついいましがた、敵前逃亡を図った兵士の頭部だった、その表情は涙でグショグショになっていて、半開きした口からはだらしなく舌をでろんっと出していた。

 それと同時に姿を現す男――手に持つ武器は、銃と剣が一体化した特異な武器だった。


「く、くそったれ!! よくもアンディを!!」


 勇猛果敢な兵士は、怒りを見せて現れた男に立ち向かう。

 振るった剣で何合か切り結ぶ――だが、一瞬の隙をつかれて周囲に発砲音が轟く。

 放たれた弾丸は、勇猛果敢な兵士の頭部を一瞬にしてミンチに変えた。

 返り血が流れ落ちる漆黒の装甲、隊長を除いた全員が戦死――既に戦意を失った隊長は――。


「や、止めてくれ! お、俺達が何をしたっていうんだよ!」

「…………」


 一歩近付く男に、後ずさる隊長、命乞いをするも男は歩みを止めない。


「俺達が何をした――か。 ……弱者を虐げ、女を犯し、気紛れで力を持たない人間をそのISを使って殺害してきた……だろ」


 壁際まで追い詰められた隊長、突き付けられた事実を否定し始める。


「お、俺達はそんな事しちゃいねぇッ! そ、そりゃ、占領した街の女を犯した事はあるが――。 そ、そもそもてめぇみたいなテロリストに、そんな事言われたくもねぇ!! 模造コア製造所の爆破、各国の将軍暗殺、オリジナルコアの奪取と破壊……!! 他にも――グゲェッ!?」

「…………」


 模造コアもろとも、男は隊長の心臓を突き刺す。

 口から大量の血を吐く隊長を、静かに眺めつつ口を開いた。


「……全てのコアの破壊が、俺の使命だ。 暗殺も、私腹を肥やし、弱者を虐げる者たちに成り代わってやってるだけ。 ……そのまま、お休み……」


 ゆっくりと刃を突き刺していくと、隊長の身体は摩擦するかのように震えだし、呪詛の言葉を呟きながら動かなくなった。

 周囲に立ち込める硝煙と血の匂い、刃を抜き取るとそれを粒子化すると虚空へと消えていく。


「……まだ戦争は続く……か」


 そんな男の呟きと共に、意識が一気に覚醒へと向かっていった。


――1025室――

 朝、ヒルトの部屋には窓から朝日が差し込んでいた。

 学園襲撃事件から数日、授業は再開されるも、アリーナの復興にはまだまだ時間が掛かっていた。

 テレビのニュースには一切取り上げられない襲撃事件、ヒルト自身何かあるとは思ってはいても現状、ただの学生という身分では何も出来ないのが事実だった。

 何も出来ない――なら、出来るようになるまで、ヒルト自身鋭気を養う事を優先し、朝のトレーニングもサボって深い眠りについている。

 カチャ――静かにヒルトの部屋のドアが開いた。


「………………」


 侵入してきたのはラウラだった、いつもの出で立ちではなく、普段自室で眠るときに着ている黒猫着ぐるみパジャマ姿だった、他生徒が見たら可愛いという事で離してもらえなくなるだろう。

 ここ数日、ラウラはシャルロットと互いに牽制しあい、夜中にヒルトの元へと夜這いに行けなかった。

 遅れを取り戻す――早い時間とはいえ、この時間帯ならば邪魔立てするものはいない、ラウラはそう思っていた。

 抜き足差し足と歩むラウラ、寝息をたててるヒルトを見ると寝汗をかいてるのか額がぐっしょりと濡れていた。

 時折魘されるヒルトに、ラウラ――。


「ひ、ヒルト! どうしたのだ――」


 身体を揺さぶるラウラ――と。


『侵入者ヲ発見。 侵入者ヲ発見』


 室内に響き渡る電子音声に、ラウラは慌てふためる。


「な、何事――だぁっ!?


 一方のヒルトも覚醒し始めてたのか――。


「あ、朝からうるさ――ぐぇっ!?」


 突如巨大な球体に膨れ上がった布団に、ラウラもヒルトも押し潰される。


「ぐ、ぐぐぐ……」

「つ、潰れる……」


 ラウラは押しやろうとするも、圧力が強すぎる上に両腕を押さえ付けられていた。

 ヒルトも、体勢が体勢故かただただこのまま押し潰されるだけだった。


「お、おのれ……」


 ラウラは呪詛の言葉を吐く、こんなトラップを仕掛ける人間――尚且つ、ヒルトの部屋に自由に出入りする人間は一人しか思い浮かばなかった。


「あーはっはっはっ! 引っ掛かったわね、ラウラちゃん!」


 シャワールームから聞こえてくる高笑い、だがヒルトにとってはそんな事よりも圧死しかねない状況をどうにか脱出しなければと何とか身体をじたばたさせていた。


「さ、更識楯無……」


 ラウラはそう呟くと、シャワールームから現れた楯無が高らかに名乗りを上げた。


「そう! 私の名前は更識楯無! このIS学園の生徒会長にして最強の――」


 そんな楯無の言葉を遮ったのは、今にも圧死されかねないヒルトだった。


「な、名乗りは良いから早くこれをどうにかしてくれ! つ、潰れ……る……」

「「あっ」」


 二人同時に声を上げたその瞬間、膨張した球体が弾け飛ぶ。

 早朝からの破裂音に、一年生寮が騒ぎになったのは言うまでもなかった。

 騒ぎは何とか収まり、特に咎めなどもなかったのは幸いと言えるだろう。


「……何か夢見てた気がするんだが、今朝の衝撃が凄すぎて忘れた……」


 学生服へと着替えたヒルト、危うく潰されかけたが、ラウラも楯無も謝ってくれたため、ヒルト自身も気にしないことにした。

 今日も一日が始まる――のだが、今日は確か二学期の身体測定の日、一学期も行ったので無いものと思ったのだがもしかすると各学期毎にやるのかもしれない。

 ……何故かあまりいい予感がしないものの、俺はまず、朝食を摂るため食堂へと向かった。 
 

 
後書き
八巻はわりかし内容飛ばしていくかもなので 
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