IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第526話】
前書き
モッピー知ってるよ。
ヒルトが皆を救出するって事。
_/⌒⌒ヽ_
/ヘ>―<ヘヽ
((/ ̄ ̄ ̄\))
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レ |/ レ| N\|||
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捕らえた女性を一旦織斑先生の元へと連れていく道中。
「……君は、私を縛らないのか?」
「縛る必要はないと思う」
「……まだ私のISは動くのだぞ?」
「そうだな。 ……でも、君はそんなことをしないさ。 俺はそれを信じる」
「………………」
無論確信がある訳じゃなかった。
だけど……彼女の瞳には力が宿っていて、約束を破るような子には見えなかった。
……それに逃げるならとっくにオーバーブースト機能を使って逃げてる筈。
そう思っていると――。
――ヒルト、くん。
「……え?」
「……どうしたの?」
「声が、聞こえた」
そう、確かに俺の名を呼ぶ声が。
それもヒルトくんって――。
「……楯無さん」
悪い予感がする、居てもたってもいられず、俺は駆け出す。
「き、君!?」
捕らえた女性をその場に置いて、俺は駆け出した。
嫌な予感がする、誰かが――いや、楯無さんに何かが起きた、虫の報せみたいなものを感じた。
コア・ネットワークを介して位置情報を把握、俺はその現場まで行くと、通路に倒れた楯無さんとその周囲を囲む六人の男。
「班長、どうしますか?」
一人の男の声が聞こえてきた、そして、班長と呼ばれた男が喋る。
「こいつはロシア代表登録の操縦者だな。 日本人の癖にISを手にする為に自由国籍権で国籍を変えた尻軽だ」
「では……?」
「無論、ISごと持ち帰る」
「班長、じゃあ操縦者は――」
「ああ」
頷く班長に、ニヤニヤと下品な笑顔を見せる五人。
「それじゃあ班長、いつものアレ、やってくださいよ!」
「フッ。 ――よぉし、この女はお前たちにくれてやる。 好きにしろッ!」
その言葉に、一斉に兵士達から歓声が巻き上がる。
「さっすが~、班長は話がわかるッ!!」
周囲に群がる兵士達は、舌舐めずりしながら楯無さんの髪を乱暴に掴み、顔を上げさせた。
「……や、やめ……て」
「ヘヘッ! 楽しむ前に自殺されたら敵わねぇ! おい!」
猿轡を楯無に噛ませた兵士、抵抗しようと身を捩る楯無だが完全に力任せで他の四人が抑え込んでいた。
耳を疑う言葉と楯無さんに対する暴行――それらを目撃した俺の怒りは直ぐ様頂点に達し、イザナギを身に纏ったその時、背後から声が聞こえた。
「……ゲスな奴等だ」
「……!?」
走って追い掛けてきたのか、捕まえた捕虜の女性が傍にいて事の全てを聞いていた様だ。
「……どうするのだ。 助けるのか」
「……当たり前だ」
「そうか。 ……ならば手を貸そう」
その言葉を聞き、俺は驚きの表情を浮かべると共に聞き返した。
「え? 良いのか……仲間じゃ……」
そう俺が聞くと、女性はISを身に纏う――。
「私は君に負けた。 ……それ以前に、同じ部隊だが仲間意識は無い。 ……ああいう輩が私は嫌いだ」
「……信じてもいいのか?」
「……君が私を信じると言ったのだぞ?」
確かにそう言った――だがそうこうして楯無さんが連れ去られても、仮に一人で戦っても楯無さんを人質にされる可能性があった。
「……わかった、協力……してほしい」
「あぁ」
静かに頷き、粒子展開させた閃光手榴弾を用意する女性。
対閃光防御をすると同時に、通路に手榴弾を投げ、ガランッガランッ!と音を立てて跳ね、転がった。
その音に気が付いた部隊の一人が――。
「閃光手榴――」
その言葉を遮るように、目映い閃光と爆発音が通路全体を包み、轟くと同時に飛び出す俺と女性。
耳鳴りと目眩が襲い、六人はフラフラになる中――。
「グォッ!?」
「ガハッ!?」
「ぎゃあああっ!?!?」
強烈な一撃を三人に叩き込む俺、一人は身体が九の字に折れ、膝から倒れ、一人は通路の天井に叩き付けられる一撃を食らい、地面へと落下。
もう一人はISの拳がめり込む程の一撃を叩き込み、通路の壁へと叩き付けられる。
残った三人も、協力するといった女性――ファング・クエイクの拳による強烈な一撃を受けて沈んだ。
「楯無さんっ!!」
閃光手榴弾の強烈な爆発音と閃光によって意識が朦朧としてるのか、返事がなかった。
更に悪いことに腹部を撃たれたのか着ていた制服を真っ赤に染めていた。
「君、私に任せてくれないか」
「な、何を……」
聞く間もなく、粒子展開された簡易救急キットを取り出すと直ぐ様止血剤と応急処置を施す女性。
その手慣れた手付きに、俺はただただ見ている事しか出来なかった。
「……出血に関してはこれで大丈夫。 弾の貫通した後があった。 もし体内に弾丸が残っていたら危なかっただろう」
「…………」
「それと、モルヒネはあるのだが出来れば使いたくない。 後遺症が残らないとも限らない。 ……それに、まだ若い、人の生命力というのは意外とあるものだ。 ……痛みはあるが、痛みがあるからこそ、人は生きてると実感出来る」
そう説明し、ISを解除した女性――。
「……あ、ありがとうございます」
「……いや。 私は君に負け――ううん、君の人柄が私にそうさせた。 ……此方こそ、お礼が言いたい。 ……それよりも……」
倒れていた楯無さんに視線を向けた彼女につられて見ると意識が戻ったのかゆっくりと瞼が開いた。
「ん……ひる、と……くん……。 ……っぅ……」
腹部を抑える楯無さん、だが応急処置がされているのに気付くと……。
「君が……して、くれたの……?」
「……違います。 ……彼女が……」
正直、気が動転していた俺は何の役にも立たなかった、彼女が居なければ、適切な処置が出来ず、下手をしたら大量の血が流れて出血死していたかもしれない。
いくら戦う力があっても、こんなときに何も出来ないなんて……無力だ。
そう思っていたのだが、楯無さんは力なく俺の頬に手を添えた。
「……君が来てくれなかったら……お姉さん、今頃……連れ去られてたわ。 ……ヒルトくん……ありがと……ね?」
「…………ッ」
その言葉に、心が軽くなる思いだった――そして、また意識を失う楯無さん。
生体反応がある為、大丈夫だとは思うのだが――。
楯無さんを抱き抱えると――。
「……ありがとうございます。 ……今なら、見逃す事も出来ますよ……」
俺がそう告げると、小さく首を振る女性。
「いや、逃げない。 ……それに、作戦失敗した私には、もう国へ戻ることも出来ないだろう。 ……ならば、然るべき処置を、この学園の責任者にお願いしたい」
「……わかりました」
本当なら、見逃すというのは重罪だろう――だけど、彼女が居なければ俺は後悔していたかもしれない。
「……じゃあ、着いてきてください」
「うむ、君に従おう」
そう言うと、通路を駆け、一旦オペレーションルームへと向かった――その道中、またも俺を呼ぶ声が聞こえた。
――ヒルト……。
――お兄、ちゃん……。
聞き間違いじゃない、美冬を含めた七人の声が届く。
チャネル通信ではない――虫の報せというよりも、コア・ネットワークを通じて呼ぶような感じだった。
オペレーションルームへと続く階段を降り、パネル操作してドアを開くとそこには既に親父が戻っていて、織斑先生と山田先生、そして拘束された女性が居た。
「……隊長」
後ろに居た女性がそう呟く、もう一機居た方だろう。
よく見ると、織斑先生の唇の端に血を流した後が見えた。
「有坂、すまないが今すぐにお前の妹や飯山たちの救出に向かえ。 更識と後ろの女は私たちが請け負う」
「……!? 美冬や皆に何かあったのですか!?」
「説明は向こうに居る更識に聞け。 急げ!」
「わ、わかりました!!」
楯無さんや捕虜にした女性を残して行くのは気掛かりだったが、俺は二人を託して廊下を駆ける。
反響する足音、僅かに明かりが漏れた部屋があり、そこに入る。
その部屋は真っ白な部屋で、左右にベッドチェアが八台、そして真ん中に一台あり、その左右のベッドには篠ノ之、鈴音、セシリア、シャル、ラウラ、美冬、未来、美春と眠っていた。
そして、部屋の端に狼狽える簪が居て俺が入ってくると――。
「あ……。 ヒルト、くん」
「簪、何があった?」
「ええと……ま、待って……」
そう言った簪は携帯を取り出すと凄まじい速さで文字を打つ。
そして携帯の着信が鳴り、見てみると簪からメールが届いた。
『有坂君へ。 コントロールを奪還すべく電脳世界に侵入した皆さんは学園同様の攻撃を受けて連絡が着きません。 美春さんも後を追うように電脳世界へと侵入したのですが、彼女も同様に眠りについています。 このままでは皆が目覚める事はなく、それは生命活動に支障を来すという事でもあります。 そこで有坂君も皆さんと同じ様にコア・ネットワーク経由で電脳世界へと赴き、皆を救出してください。 よろしくお願いします。 更識簪より』
携帯を閉じ、俺は簪の方へと視線を向けると頷いた。
「わかった。 ……ベッドチェア、使わせてもらうぞ」
真ん中にあるベッドチェアへと寝そべる。
……コア・ネットワーク間の行き来はあれど、そこから電脳世界へ向かうのは初めてだった。
残して来た楯無さんの容態と捕虜にした女性が気になるも、今は皆の救出に意識を向ける。
イザナギをベッドチェアの端末に接続し、瞼を閉じ、意識を深く集中させる――刹那、意識が光の奔流へと落ちていく――そう、銀の福音の時に美春が俺を現実へと戻す――あれに近い感覚だった。
後書き
モッピー知ってるよ。
ヒルトって、フラグ立てまくりって事。
_/⌒⌒ヽ_
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