IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第502話】
前書き
暫くオリ話っす
朝の六時、襲撃事件の影響で学園は臨時休校。
ベッドには寝息をたててるヒルトと、それをじぃーっと見つめる未来。
気持ち良さそうに寝息をたててるヒルトを見て時折笑顔を溢すも、夜に行った営みを思い出す度に未来は枕に顔を埋めていた。
いつまでもヒルトの寝顔を見ていたい――そう思うのだが、流石に見つからないように自室に戻らないといけないという思いにも駈られる。
「……ヒルト、部屋……戻るね?」
眠っているヒルトの額に唇を落とした未来、ヒルトはそれにも気付かず眠っていた。
そんなヒルトに僅かに頬を膨らませるも、未来はソッとベッドから抜け出し、ISの機能を使って静かに部屋を立ち去った。
それから一時間半後、未だに自室で寝息をたててるヒルト。
室内に響き渡るノックする音、だがそれでもヒルトは起きなかった――。
「……寝てる」
そう言葉を洩らしたのも未来だった、服装はカジュアルなシャツにプリーツスカートという出で立ちだった。
「お兄ちゃん、疲れてたのかな……?」
そう言ってヒルトの頬をつつくのは美冬だ、同じ様なカジュアルなシャツに、デザインジーンズという出で立ち。
「多分だけど、疲れが出ちゃったんじゃないかな? いつも早朝からトレーニングしてたし、ね?」
反対側から覗き込んだのは美春だった、彼女だけは少しラフな格好だ。
「……このまま寝かせておこうか」
未来自身、何で疲れているのかという事実を知っているため、二人にそう告げると――。
「そぅ、だね。 お腹空いたら、お兄ちゃん起きてきそうだし」
「うん。 ……じゃあ三人でご飯食べよう? 私、もうお腹ペコペコなんだぁ」
美春がそう言い、お腹を撫でると二人はクスッと笑みを溢す。
そして起こさないようにソッと部屋を後にした。
更にそこから十分後――。
「……不用心な。 我が嫁なのに鍵を閉めていないとは……」
そう言って侵入してきたのはラウラだった、普段は夜中に鍵をピッキングして侵入してきてる張本人がそれを言っても説得力が薄い。
ラウラは忍び足で近づく、いつもならベッドに入るだけで気付かれるのだが疲れからかヒルトが目覚める様子はなかった。
「む……起きない。 ……ヒルト?」
念のため、軽く頬に触れてみるラウラ、だが寝息をたてるだけで目覚める様子はなかった。
チャンス――そう思ったラウラは、周囲をキョロキョロと見渡し。
無論部屋にはヒルト以外誰も居ない――それを確認するや、ラウラは布団の中へ潜り込んだ。
そして、そのままヒルトに身を委ねる様に密着すると、瞳を僅かに潤ませる。
大会前という事である程度自重していたラウラ、本来なら昨日の内に潜り込んでヒルトにいっぱい可愛がってもらおうと企んでいたのだが、ドイツ本国から送られてきた補強物資類の書類に目を通してる内に眠気が襲ってきて諦めた。
ラウラは軽く頬に口付けを落とす――普段だとヒルトの喜ぶ事を優先するが、今は恋人気分でいちゃつくのを優先した。
額に、首筋に、と口付けを落とし、そして――そのまま眠っているヒルトの唇を奪う。
――と、流石にここでヒルトは意識が覚醒した。
「ん……んんっ!?」
唇に広がる柔らかな感触に、開いた目の前にはラウラの顔――。
だが、ヒルトはそもそもラウラが嫌ではないのでそのまま受け入れる――暫くキスを受け入れたヒルトだったが、流石に呼吸が苦しくなり、軽くポンポンと腰を叩くと驚いたラウラは飛び起きた。
「なっ!? ……お、起きていた……のか?」
「ん……いや、流石にキスされたら目が覚めるからな」
「ぅ……む……」
ぼしゅっと湯気が立ちそうなぐらい赤くなったラウラを他所に、ヒルトは未来が居ないことに気付いた。
……というか、居たら居たで不味いのだが、色んな意味で。
時計を見ると既に八時前――だが、今日は授業がないのでまだゆっくり出来ると思うとごろんっとそのまま横になる。
「む、ヒルト……朝食は食べないのか?」
「食べるよ? ……てか、朝食前にラウラの唇頂いてたが」
「……!? ば、ばか、もの……」
ヒルトがそう言うと、ラウラの白い肌が完全に真っ赤に染まった。
そんなラウラを見ながら可愛いなと思ったヒルトは――。
「もうキスは良いのか?」
「ぅ……? しても……い、いの……か?」
そう言いながらも、ラウラはヒルトに顔を近付ける、気持ちが先行した結果だろう。
「……やっぱりやめよっかな?」
「な……」
わざと意地悪するヒルトに、ラウラはしょんぼりしてると頭を撫でられた。
「はは、そんなにしょんぼりするなよ。 ……てか先ずは顔洗って歯を磨かないとな」
「ぁ……ぅむ。 では私はここで待つとしよう」
そう言って一旦ヒルトの上から降りるや、ちょこんとベッドの端に腰掛けるラウラ。
洗面所へと消えていくヒルト、室内に残ったラウラは足をぷらぷらさせているとノックする音が響く。
「……あれ? 鍵掛かってない……? ……お邪魔しまーす」
聞き覚えのある声だった、ヒルトの部屋に入ってきたのは――。
「あれ、ラウラ? 先に食堂に行ってたんじゃ……」
シャルロット・デュノアだった、ヒルトの部屋に居たラウラに驚いた表情を見せたのだが――。
「……もしかして、ラウラ……」
「ぅ……」
咄嗟に視線を逸らしたラウラに、シャルは腰に手を当てて軽く息を吐いた。
「もぅ……。 僕だって我慢してたんだよ?」
「そ、それは知ってる」
「……じゃあ、僕もしても良いよね?」
「ぅ……むぅ」
抜け駆けの代償か、ラウラは曖昧な返事をしてしまった。
そんなラウラに、困ったように眉根を下げて見ていると洗面所からヒルトが現れる。
「あれ、シャル?」
「あ、ヒルト。 お、おはよう」
くるっと振り返り、ひらりと舞うスカート――一瞬中が見えないのかヒヤヒヤしたが特に問題はなかった――と。
「ね、ねぇ……ヒルト」
もじもじと指を絡ませるシャル、その後ろに座っているラウラは僅かに頬を膨らませているように見えた。
不思議に思っていると、シャルはラウラが居るにもかかわらず、ヒルトに身を委ねるや――。
「……キス、しよう……?」
「いぃッ!?」
「…………っ」
シャルの言葉に驚くヒルト。
「ちょ、ちょっとシャル? ら、ラウラも居るのに何を――」
「……ラウラ居るのは知ってるよ? でも……ヒルト、さっきラウラとキスしてたでしょ?」
「いぃッ!?!?」
何でそれを――寝てる時とはいえ確かにキスはしたが……そう思ってラウラを見ると視線を逸らした。
ラウラ経由からバレたのが明白になった、とはいえ……昨日未来と最後までしたと知れば、凄まじい事態になるのは火を見るより明らかだろう。
「ラウラだけズルいよ……ちゃんと僕にも公平に……キスしてよ?」
「ぁ……ぅ……」
真っ赤に染まった頬、シャルは真っ直ぐとヒルトを見つめていた。
観念したようにヒルトは頷くと――。
「えへへ。 じ、じゃあヒルト……ベッドで、ね?」
「ぅ……」
促されてベッドに腰掛ける、隣のラウラから突き刺さる様な視線が痛かった。
シャルはそんなラウラを見ながらヒルトに跨がると――。
「ラウラが抜け駆けするからだよ?」
「ぅ……わ、わかっている。 は、早く済ませろ、シャルロット」
怒ってる訳ではなさそうだが、明らかに嫉妬しているラウラ――そして、シャルはヒルトの首に腕を回すと自分からヒルトの唇にキスをした。
一方のヒルトは、その唇に広がる柔らかな感触に酔いながらも、ラウラの視線が気になっていた。
何度か啄む様にシャルは口付けを繰り返し、キスを止めると――。
「……えへへ、やっぱり良いね。 キスって」
にこっと微笑むシャルだが、内心人前でのキスは初めてだったため、心臓の鼓動が激しく高鳴っていた。
ラウラも、次からはバレないように抜け駆けしようと内心心掛け、嫉妬している自分を今回だけ特別に抑え込んだ――ヒルトと身体を重ねる時に、全て発散すればいいと思って。
「そ、それじゃあさ、ご飯食べに行こ? ラウラも食べるでしょ?」
「む、無論だ。 ……ヒルト、今日は一日休みだが、何かする事でもあるのか?」
話題が変わる、今日一日何をするという事も無いのだが……とはいえ、楯無さんの見舞いに行かないといけないと思い。
「朝は楯無さんの面会に行こうと思ってる。 午後からは……予定は特に無いが、ちょっとニュースとか見てみたいから」
「ふむ。 私はシャルロットと二人で出かけるのだが、ヒルトもどうかと思ったのだが……」
「面会じゃ仕方ないよ、僕たちも楯無さんの容態気になるけど……どうしよう」
「ん、気にせずに二人は出かけてきなよ。 せっかくの休みだし、休みぐらいは羽を伸ばした方がいいしな、これが」
ヒルトがそう言うと、二人は小さく頷いた。
「んじゃ、ご飯食べに行こう」
そう言って立ち上がるヒルト、シャルもラウラも改めてヒルトを見ると心なしか大きくなったように感じた。
様々な経験が人を成長させる――それを改めてシャルは実感するとヒルトの腕を取る。
「じゃあ、早く食べよ? 僕もペコペコなんだぁ」
「うむ。 腹が減っては戦は出来ぬというからな。 では行こうか、ヒルト」
そう言って反対側の腕を取るラウラ、二人に連れられて三人は一路食堂へと向かった。
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