IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第532話】
前書き
ワルパ箒編
モッピー知ってるよ。
今回はモッピーがヒロインって事。
_/⌒⌒ヽ_
/ヘ>―<ヘヽ
((/ ̄ ̄ ̄\))
/ ) \
/ | | //ヽ ヘ
| ハ | /イ | |
レ |/ レ| N\|||
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\_(ヽ  ̄ /⌒)ヽ
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/ /ヽノ \_ノ|
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何時ものように光が徐々に収束されていき、視界に広がるのは夏祭りに訪れた篠ノ之神社だった。
「わりと最近訪れたが、景色に差異はなさそうだな」
朝の柔らかな日差しが降り注ぐ中、少し歩くと神社に併設されるように目新しい道場があった。
中を覗き込むと手合わせをする二人の姿があった。
今回は最初から偽者が居るようだった――道場の入り口から入るや、それに気付いた人物が――。
「……ん? 生憎だが、今日は道場が休み――何だ、有坂じゃないか、久しぶりだな」
防具の面をとり、挨拶を交わしたのは篠ノ之だった、額は汗に濡れていて何処か艶っぽさを醸し出している。
「俺がわかるのか、篠ノ之?」
「何を言っている。 ……ふふっ、可笑しな奴だな。 せっかくだ、少し見ていくといい」
僅かに笑みを溢す篠ノ之――そして、面を着けたもう一人が俺を見るや。
「…………ヒルト、勝負だ!」
「…………」
いきなり竹刀を向けられる俺、面の向こうから聞こえてきた声は一夏だった――やはり偽者なのだろう、勝負自体は構わないのだが、剣道に疎い俺では話にならない気がする。
「一夏、有坂は剣道の素人だ。 おいそれと簡単に勝負だ等と――」
「いや、箒。 ……これは俺がヒルトと行う真剣勝負だ、勝った方が箒と付き合うって、以前から取り決めていたからな」
「え……?」
突然の言葉に戸惑う篠ノ之、そして俺も何でそんな事態になるのか意味がわからなかった。
やはり何かしらの精神攻撃なのだろう……バリエーションが少ない気がするが、偽者を倒さないことには話が進まない、だが剣道じゃ話にならない――。
「つ、付き合う云々はさておき、流石に剣道では熟練者対初心者では話にすらならない。 一夏、悪いが無差別格闘でどうだろうか?」
「……箒がそう言うなら、俺は構わないぜ」
一夏はそう言って頷くと俺を一瞥した。
「ふっ……勝負は見えているな。 ……箒は渡さないぜ、ヒルト」
「………………」
意味がわからないが、何にしても無差別格闘なら何でもありだし、まだ剣道よりは勝ち目が上がる。
そんな俺を他所に、篠ノ之は赤くなった顔を手で扇ぎつつ、一夏の様子が少しおかしい事に疑問を抱いてるように見えた。
それから暫くして、互いに準備が出来た俺と一夏は向かい合ったまま対峙していた。
お互い視線を外さず、睨み合う形の両者――。
試合開始の合図となる篠ノ之の言葉が道場に飛んだ。
「始めッ!!」
「ぜぁあああああっ!!」
先手と同時に一夏が攻める、襟首を掴んでの一本背負いによる速攻――早いと脳裏にそう過る――世界がぐるっと回る、だがそのまま投げられる俺ではなく、しなやかに体勢を整えると返しと謂わんばかりに豪快な一本背負いを叩き込む。
「が、はぁっ!?」
激しく背中から叩き付けられた偽者一夏は苦しそうに咳き込んだ――これまでの偽者一夏の方が圧倒的に強かったのだが、この一夏はそれほど驚異に感じなかった。
いや、寧ろ速さがあるだけで他は弱い方だった。
激しく咳き込む偽者、瞳は偽者を示す黒と金へと変わっていた――試合はまだ続き、足元がお留守になっていた俺の足を払う一夏。
体勢を崩す中、片手で全体重を支えて後方宙返りで間合いを取る――。
「うぉぉおおおっ!」
「……!」
原始的に殴りかかる一夏の一撃が僅かに頬を掠める――そのまま腕を取ると、またも俺は一本背負いで投げ飛ばした。
動きの単調さまで本物に似せなくてもと思うほど、行動の先読みが出来る偽者の一夏。
ギリッと歯を食い縛り、一夏は立ち上がるや――。
「もう一回だ!」
そう叫ぶや、直ぐ様襟首をとる一夏だが、俺は一夏の足を払い、体勢を崩させると首筋に手刀を当て、いつか楯無さんがした様に首筋に沿って切る仕草を見せた。
実力差は歴然だった、というより……この世界の一夏が弱すぎる。
だがそれでも負けじと立ち上がる一夏に、痺れを切らした篠ノ之が叫ぶ。
「両者そこまでだ! ……一夏には悪いが、明らかに有坂の勝ちだ。 これ以上の試合は私の判断で無意味だと感じた」
「……ッ!」
「……付き合う云々の話は今はいい。 ……わ、私自身も今は……わからないのだ、一夏は幼なじみ――だが、有坂は……私が露骨にあしらっても私を常に気にかけてくれていた……」
ぎゅっと握り拳を作り、目蓋を閉じる篠ノ之――。
「もう私は、意地をはりたくないのだ……本当は有坂とも、ずっと仲良くしたかった。 一夏も、私を気にかけてくれていたが、その優しさは全方位に向けられた表面上での優しさにも感じる時が――」
言葉の最中、脳裏に響き渡る少女の声。
『ワールド・パージ、介入開始』
「……ッ!?」
頭を抱え始めた篠ノ之――それと同時に、項垂れていた偽者一夏は立ち上がるや、篠ノ之に近づこうとしていた。
「……何をする気だ、偽者」
「……ホウキ、オカス。 オレイガイノオトコ、カンガエラレナクスル」
「……それを聞いてハイそうですかって見逃すわけにはいかないな」
その言葉を合図に、また試合が再開される――先ほどとは違い、更にスペックアップを果たした偽者の一撃は非常に重たかった。
ミシミシと軋む骨の音――気合いを入れ直すと、激しい攻防を繰り広げる。
だが、いくらスペックアップしたとしても鈴音から続く五連戦によって動きが見え始めた俺には苦なく一撃を確実に叩き込む。
そして――クロスカウンターで顔面に互いの拳がめり込む――偽者の一夏のダメージが大きく、他と同様にその身体は粒子となって四散した。
未だに頭を抱えて苦しむ篠ノ之、俺はそんな篠ノ之に堪らず抱き締めた。
「っ……ぅぅ……!」
「篠ノ之、この程度の攻撃に負けるなよ。 皆だって乗り越えたんだ、お前に出来ない筈はない」
「ぅ……く……! ぁぁあっ……!」
「大丈夫だ、一人じゃない……一夏は側に居ないが、少なくとも俺が居る!」
「……!」
抱き締める力の強さを上げると、篠ノ之はそのまま身を預ける様に力を抜いた――そして。
『ワールド・パージ失敗……』
ただそれだけ、少女は呟いて何も聞こえなくなった。
静寂が訪れる中、困ったように見上げる篠ノ之。
「あ、有坂……その……だな。 ……そ、そろそろ離してもらえると……助かる」
「ん? ……せっかくだし、もうしばらく良いだろ?」
「な……!?」
俺の言葉に耳まで赤く染め上げた篠ノ之、身を捩らせ、解放されようと小さな抵抗するものの観念したのか大人しくなった。
「……今見てるのは夢なんだし、な?」
「だ、だが……わ、わたし……は……い、いちかが……」
「ん……夢って言っただろ? 一夏は居ないし……な?」
「……ぅん」
自分でも都合よく言ってる気がするが、正直夢の中でもこうしていれば篠ノ之ももっと打ち解けやすくなるかもしれない。
腕の中で大人しくしている篠ノ之の髪に触れる――僅かにくすぐったそうに身を捩ると上目遣いで睨んできた。
「ば、馬鹿者……い、一夏にさえさせたことないのに……」
「そうなんだ? ……名残惜しいが、そろそろ離そうかな」
「ぅ……も、もう少しだけなら……構わない……」
胸に顔を渦ませながらそう告げる篠ノ之、それを聞いてクスッと笑いつつ、俺は。
「何なら、キスもするか?」
「ば、馬鹿者! お、おいそれとするものではない!! ……ま、全く……一夏の様にストイックに――いや、アイツも昔から他の女子にモテていたからな……」
「はは、容姿は悪くないもんな、容姿は」
「…………あれでも、良いところはあるのだぞ。 唐変木だが……」
俺にはわからないが、篠ノ之にはわかるということだろう。
もうしばらく抱き締めたかったが、流石にこれ以上は不味いと思い、篠ノ之を解放すると顔を赤くしながらパッと離れる。
いやという感じではなく、気恥ずかしさが勝ってるのだろう――と、空間の揺らぎを感じた、またあそこに戻る――、後は美冬と未来の二人。
空間に亀裂が入り、世界が崩壊――俺と篠ノ之の二人は視界を覆うほどの目映い閃光に包まれた。
「あ、戻ってきたよ」
「今回は約三分……戻ってくる間隔が長くなってますわね」
「ねぇ簪、何か理由はわかんないの?」
「……そこまでは。 ……ただ、意図して時間を稼いでる様にも……」
「時間稼ぎ……敵の目的は一体何なのだ……」
簪が到着していて、意識のなかったラウラも既に目覚めていてこの場に美冬と美春、未来を覗いた専用機持ち女子全員の救出に成功した。
「ヒルト、後は美冬と未来の――」
簪の言葉の途中に、美春からの割り込み通信が入り込む。
『大変だよヒルト! 敵の攻撃が急に強まってきてる! 美冬と未来、二人同時に攻撃受けてる!!』
「……!?」
その美春からの連絡に、俺は自然と二つの扉の前に立った。
二人同時攻撃――精神攻撃事態負荷が強いのに片方ずつしか救助できない――。
そう思っていると、徐に鈴音は未来の扉のドアノブを回すのだが。
「な、何よこれ! あ、開かない……!!」
それを聞いてシャルは美冬のドアノブを回すのだが――。
「こ、此方も開かないよ!?」
美冬のドアも開かず、シャルは困ったように俺を見た、慌てて俺も美冬と未来の扉のドアノブを回す――と、俺だけはスムーズにドアノブが回った。
この事態に篠ノ之は呟く――。
「もしかして……この場所で最初に救助に来た有坂しか認識出来ないのではないのだろうか?」
俺自身深くは考えていなかったが、もしかするとこれも敵の仕掛けた罠だろうか――。
まごまごしている内に、時間は無情にも過ぎ去っていく。
「っ……嫁が苦しんでいるのに、私は……無力だ……」
ラウラのそんな言葉が耳に届く――無論無力だ何て俺は思っていない。
未来の扉を見ながら俺は呟く。
「……未来、後で必ず迎えにいくからな。 ……今は、美冬から……だ!」
ドアノブを回し、俺は飛び込んだ。
目映い閃光に包まれるその瞬間、また声が聞こえてくる。
『本当にその選択で良かったの?』
その少女の囁き声が、俺の心に深く刻み込まれた。
後書き
次回は美冬編、てか悩むねぇ
原作はエロイベントなのに俺はあんまり突っ込まない
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